夢のフルマラソン2時間切りへ。マラソン高速化の未来

「マラソン 世界新」

 去る9/16に、このキーワードでGoogle検索した人、Twitterのハッシュタグを付けた人がどれだけ多かったことか。

 

先日開催されたベルリンマラソンでエリウド・キプチョゲ(ケニア)は他の選手を圧倒する走りを見せた。

2014年の同大会でデニス・キメット(ケニア)が出した従来の世界記録(2時間257)

1分以上更新し、2時間0139秒という好記録でフィニッシュしたのだ。

 

私はマラソンマニアを自称しながらその日はどうしても都合がつかずエリウド・キプチョゲ視聴が叶わず、

合間にテキスト速報を観ながらその瞬間が訪れるのを固唾をのんで見守っていた。

 

ますます高速化するフルマラソンの世界がどのように変わってきているか。

強豪国、シューズ革命、ドリンクの進化、2時間切り、というキーワードで紹介したいと思う。

マラソン強豪国 ケニア・エチオピアの強さの秘密

世界の長距離界(マラソン/トラック)をリードするのはケニアとエチオピアである。

世界の歴代TOP10は両国の選手が占めている。

国旗

※特にケニアが強すぎる。

 

なぜ強いのか。なぜ速いのか。人種によるフィジカル(体躯)の違いなのだろうか。それであれば、2国の周囲にあるソマリア、ウガンダ、タンザニアも同じように活躍しているはずだ。何故この2国だけ突出して強いのか。

 

強さの要因としては従来は

・高地民族であること

・黒人はそもそも身体能力が高い  

・幼少時の通学環境

 ・貧困から脱出しようとするハングリー精神

上記が主な理由とされてきた。

 

極論を言うとこれはどの説も正解である。この条件が複合的に組み合わさることで強力なランナーが輩出されているのだろう。

しかし、これはアフリカの他の国でも当てはまる可能性がある。他の要因はあるのだろうか?

 

マラソンは文化

マラソン大会

各国にはお家芸と呼ばれるスポーツがある。

たとえ身体能力で劣っていたとしても、脈々と受け継がれたノウハウ、環境、必勝法、トレーニング方法が確立されている。日本でいえば柔道やレスリング、体操、野球だろうか。 また、先代の選手が勝利を重ねた実績/成功体験が特に強烈であるため選手のメンタル意識は高く、国民の期待も大きい。

 こうして、お家芸とされたものは文化として根付くため常に強いのだ。

 

ケニアとエチオピアにおけるマラソンの強さは正にこれが当てはまる。

エチオピアにはローマオリンピックと東京オリンピックで金メダルを獲得したレジェンド、アベベがいる。

そう、裸足のアベベだ。

前世界記録保持者のゲブレシラシエもまたエチオピア人で、彼は貧困層からマラソン一本で成り上がり、富を築き、人気を得た。

 

ケニアには先述した現世界記録保持者のエリウド・キプチョゲや、前世界記録保持者のデニス・キメット、ウィルソン・キプサングなど、現役バリバリの強いランナーを多く抱える。ケニア人の強いランナーは日本にも活躍の場を求め、大学や実業団の駅伝部には「助っ人」として来日する。

ここ数年の活躍は目覚ましく、世界の6大マラソン、世界選手権、オリンピックでは表彰台にケニア人がいないケースはごく稀だ。

 

そもそも、ケニアから代表派遣される前の国内予選のレベルの高さは凄まじく高い。 

オリンピックは各国3枠しかない狭き門に、自己ベスト2時間3分台の選手がしのぎを削るのだ。

 他の地域や国でも強い選手は出てきているが、今後もこの2強体制が崩れることは無いだろう。

 日本を取り巻く、マラソン環境について次回、レポートさせて頂く。 

シューズの革命 常識を覆したヴェイパーフライ

  マラソンシューズといえばどのメーカーが思い浮かぶだろうか。

 アディダス、ニューバランス、最近だとブルックスなどの外資系メーカー。

 日本人であればアシックス、ミズノだろう。

 

 しかし、現在世界中の大会の表彰台を席巻しているのはナイキである。

 

ナイキはアメリカオレゴン州に本社を置き、15年前から世界各国の有名選手を集めた最強のトラック集団「オレゴンプロジェクト」を組閣。

非アフリカ系選手の精鋭を集め、速さを磨いた選手たちに、最新シューズをトライアルさせることで膨大なデータを収集。

 そのデータをシューズ開発に落とし込むシステムを構築することで、最強のマラソンシューズ「ズームヴェイパーフライ4%」の開発に成功した。

 

従来はトップランナーのシューズは薄ければ薄いほど、良いとされてきた。

それもわずか2年くらい前までの話だ。

 

ヴェイパーフライは従来の常識を覆す、底の厚い超軽量のクッションを採用。

厚いクッションがあることで足全体の負担を軽減し35km以降の勝負所でもスパートが可能になった。

また、ソールとクッションの間にカーボンプレートを入れることで接地の瞬間に驚異的な反発を地面から発生させることで、グングンと前に進む。

軽量化と厚底化がもたらす、驚異的なスピード。

これはまさにイノベーションである。

 

 2017年に発表されたヴェイパーフライは世界中の大会を席巻。

6大マラソンの上位入賞者のほとんどはこのシューズを履いた。

 

日本でもナイキのサポートを受ける東洋大駅伝部がこのシューズを履いて箱根駅伝(往路)を制したことで人気が爆発。

 

ヴェイパーフライは日本円で¥28,800-もする高額シューズだが

現在も日本のナイキショップでは品切れが続き、ヤフオクやメルカリでは日々、定価よりも高額で取引されている。

 実業団選手も採用を始めており、 10/8に開催される出雲駅伝では、他の大学も多く取り入れることになるだろう。

ドリンクの革命 糖濃度16%が起こす奇跡

フルマラソンとは文字通り、42kmを自らの足で走るスポーツである。

喉も渇くが、空腹にもなる。

大会では給水所も5kmごとにあるが、後半は給食所を用意してくれる大会がほとんどだ。 

バナナや梅干しなどを食べて、枯渇したエネルギーや塩分をチャージする。

 

私は一度、試しに無補給で走ろうと思った事があるが、案の定30km過ぎに足が止まり、

次の給食所でその時食べたサツマイモは極上の美味しさだった。

 

これらは全て市民ランナーレベルの話だ。

市民ランナーはフルマラソンを3時間~6時間かけて走るのでエネルギーを補給しなければ体が動かなくなってしまう。

 

トップランナーたちはフルマラソンを2時間30分以内で走り抜ける。

食所でいちいち立ち止まっていては勝負にならない。 5km置きに予め預けておいたスペシャルドリンクを飲んで給水するのが通常だ。

 

 この給水にも新たなイノベーションが起きつつある。

 

通常、人間が体内に貯蓄出来るエネルギー(グリコーゲン)の量には限りがある。

前日+レース直前に摂取したとしても、20km過ぎには半減、30kmまでにはほとんど枯渇してしまう。

高い心拍数で走るトップランナーたちは、固形食をもぐもぐ咀嚼している余裕は無いため、ほとんどの選手は超高カロリーのジェルを摂取することになる。

しかしながら喉越しは悪いし、息も詰まるので敬遠している選手も多い。

 

 給水と一緒にエネルギーも摂取出来れば良いのに。。

 

 多くのランナーが思い描いていた理想が、最新の科学技術でもって実現したのである。

スウェーデンが開発したMAURTEN(モルテン)だ。世界6大マラソンの上位入賞者も愛飲しており、日本でも徐々に知名度が上がってきている。

何がすごいのか。

 

通常、口から摂取された水分はそのまま胃腸を通って体内にエネルギーに変換される。

主にエネルギーとして使われるのは炭水化物(糖質)だ。

 

MAURTEN(モルテン)の画期的なところは、摂取時は水分だが、胃酸と交わることで胃の中で

ジェル化し、効率よく体内にエネルギーを取り込むことが出来る点である。

 

数字的な話をしよう。

 

一般的なスポーツドリンクの場合、糖質の濃度は5%前後である。

 糖質の濃度が10%以上になると、胃から腸にドリンクが送り出される速度が極端に遅くなり、水分と糖質の吸収が悪くなる。

そのため、単にドリンクに含まれる糖質の濃度を高くしても、結果的にトレーニングやレース中に、胃腸のトラブルを起こしてしまうわけだ。 

 

MAURTEN(モルテン)の糖濃度はというと、何と16%もある。

日本スポーツ協会が推奨する濃度が48%なので、糖質の濃度は2倍〜4倍。

 今までの常識では、糖質の濃度が高すぎるため、スポーツドリンクとしては飲むことが不可能とされてきたが、スポーツドリンクを「ハイドロゲル化」させることで、糖濃度の問題をクリアしたのだ。

 

ジェル状に変化することで、胃から腸へスムーズに運ばれ、素早く吸収できるという仕組みなのである。

MAURTEN(モルテン)を活用することで、今までは難しかった量の糖質を水分補給として摂取することが可能になったのだ。

 

秋以降の大会では、ますます利用者が増えることだろう。

2時間切りの世界はすぐそこだ

サインを書くマラソン選手

「サブ4」

これは、市民ランナー憧れの数字である。

フルマラソン(42キロ)を4時間以内で走れるランナーを指す。

4時間内に走り切れるランナーは全体の20%しかおらず、市民ランナーの勲章とされている。

※ゴルフでいう100切、ボウリングでいう200オーバーらしいが眉唾である。。

※ちなみに私はサブ3を目指している。

 

先日樹立されたフルマラソンの世界記録は2時間1分39秒。

「サブ2」という世界がもう手の届く範囲内までやってきた。

 

昨年、ナイキが破天荒な企画を行った。

世界のトップランナー3名をセレクトし、2時間の壁を破るためのイベントだ。

 

通常のマラソン大会は30kmまでのペースランナーがつくが、あとは己の精神と体力の限界に挑むのが通常だが

ナイキが企画した「BREAKING 2」は、

  • スタートからゴールまでペースメーカー集団(途中交代あり)が風よけとして、常に帯同
  • 給水自由
  • コースは超フラット(F1のサーキットを周回)

この至れり尽くせり状態でエリウド・キプチョゲ(ケニア)2時間切まで後一歩の2時間35秒で走りきり、2時間切りがいよいよ現実味を帯びてきた。

※後日、キプチョゲは世界新を樹立することになる。

 

人の意識とは変わりやすいものである。

誰かがブレイクスルーすれば、僕も私も出来るかもしれない、というマインドに自ずとなる。

20年前は絶対に不可能とされてきた2時間切りの世界にもう手が届く。

 

 識者によると、人類は生理学的には1時間57分で走れるらしい。

それこそ眉唾な話だが、夢があるじゃないか。

 

昨年、男子100mの桐生祥秀選手は、日本人で初めて10秒を切り、998の日本新を樹立した。

その後、国内男子100m選手のマインドは一気に変わり、それに肉薄する選手が多数出ることになった。

 

マラソンもとい、陸上競技には採点種目のような結果の曖昧さなど微塵もない。

全てタイムが結果となって現れる。

その日まで積み上げた努力が数字となって現れる。

 

それこそが陸上競技の魅力だと、私は思う。

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