「1度はフルマラソンを完走してみたい。」
知り合いが抱負として宣言しているのを耳にした。
新年の目標として書き込まれているのを目にした。
経路はさまざまだとは思いますが、誰しも1度は触れたことのあるフレーズではないでしょうか。
私がフルマラソンに初めて挑戦をしたのは23歳のときです。大学時代の後輩にホノルルマラソンに誘われたことがキッカケでした。
あれから6年が経ちました。
23歳のときに参加したホノルルマラソンでマラソンの世界観に触れ、これまで10回以上のフルマラソンの大会に参加をしました。
この記事では私がマラソンを続けてきた経験をもとに、「マラソンランナーの世界観」を読み解いていきたいと思います。
そういった方への、刺激やヒントとなる記事にできたらと思います。
目次
先日、スマートフォンの写真を整理しようとカメラロールを見返していると、気になる写真が入っておりました。
大手スポーツ用品メーカーのASICS(アシックス)社の広告を撮った写真です。
私は前職の(株)ベネッセコーポレーションで商品の広告の仕事をしていたことがあります。その時期、気になった広告を写真に集めていたことがありました。
この写真も、おそらくその時期に撮影したのでしょう。ASICS(アシックス)社の広告には海辺を走るランナーたちの写真を背景に、下記のコピーが記されていました。
WE ARE MARATHONERS.
この地球上に、国籍も言語も越えて共通の価値観を持つ人種が存在する。その数は、全人類の1%に達したと言われている。生態は他の人類と本質的に異なる。自ら進んで苦しみの中に身を置く。溶けるような暑さ、凍るような寒さ、叩きつける雨、向かい風。乱れる呼吸、悲鳴をあげる肉体、折れそうな精神、情けなさと憤りを感じながら、失われつつある意識の中で、痛みをこらえ、足をひきずりながら、それでも前に向かう。そして、仲間と、支えあい、励ましあい、讃えあう。本能的に知っているのだ。道の先には、苦しみをはるかに超える無上の喜びがあることを。効率やベンリさに支配され、楽な道ばかりが求められる時代にもかかわらず、自分の限界を超えて挑みつづける強い生命力を持った人たち。私たちは同じ人類として誇りに思う。汗に涙がまじった顔で、ゴールを切るあなたたちを。 Better Your Best ASICS
どういった調査から算出されたのかはわかりませんが、驚くことにフルマラソンを完走したことのある人は全人類の1%にものぼるそうです。
世界人口は70億人を超えたと言われています。
ここからフルマラソン完走者は7000万人以上にも達することがわかります。
フルマラソンでは42.195kmの距離を、平均して5時間前後の時間をかけて走ります。
横浜駅と東京駅の間が約30km、新大阪駅と新神戸駅の間が約37kmであることを見ても、非常に長い距離を走っていることがわかります。
これだけの距離を走り抜くためには当然練習が必要です。
マラソンは個人競技です。街中でランニングをしている人を見かけても、一人で走っていることがほとんどでしょう。
そのためマラソンが孤独なスポーツだと思っている方も多いかもしれません。
しかし、スマートフォンのアプリケーションが発達した昨今、急速にアプリ内でランナー同士の繋がりが生まれています。
各スポーツメーカーはランニング専用のアプリを運営しています。
ランニングアプリは走った距離やタイムの計測・蓄積だけでなく、ランナーのSNSの機能も果たしています。
ASICS(アシックス)社はRunkeeper、ナイキ社はNike+、アディダス社はRuntasticというランニングアプリをそれぞれ運営しています。
Nike+は最新の登録者数の情報は見つけられなかったのですが、2016年時点でRunkeeperは登録者数3300万人、Runtasticは登録者数7000万人にのぼります。
2018年の6月の報告では、Instagramの月間のアクティブユーザー数は10億人を超えたと発表されています。
これはフルマラソンを走ったことがなくとも、ランニングを通じて世界と繋がっている人は7000万人以上いるのではないかと期待ができる数字です。
Instagramを利用している方はハッシュタグ「#marathon」や「#running」で検索をして見てください。
世界中のランナーがランニング後に投稿をし、互いを称えあっている様子を見ることができます。
(実際にInstagramで検索した画面のスクリーンショット)
実際に私もInstagramを通じて、アメリカやブラジル、ロシアやスペインなどの市民ランナーと「いいね!」や「コメント」のやり取りをしています。
マラソンを通じて、世界のさまざまな文化に触れることができるのはマラソンランナーの1つの楽しみとなっています。
もちろん全てのランナーがアプリを活用してマラソンに取り組んでいるわけではありませんが、デジタルネイティブの世代が増えてくるこれからはアプリを通じたマラソンの楽しみ方が加速していくでしょう。
数年前のある日、1通のLINEが送られてきました。通知の相手は私を初めてのマラソン大会に誘ってくれた大学時代の後輩でした。
当時ニューヨークで生活をしていた彼は、セントラルパークでハーフマラソンの大会に出場したとのことでした。
(実際に後輩から送られてきた写真)
このハーフマラソン大会のコンセプトは「Run For Cancer」、つまりガンで闘病をしている人たちを励ますために催されたものでした。
ガンで知人や親族を失った人、ガンで闘病中の知人や親族を持つ人。身近な人にガンになった人がいる、いないに関わらず「Run For Cancer」を願うたくさんの人たちが参加していたそうです。
こういった「Run For」を掲げる大会はニューヨークのセントラルパークだけでなく世界の各地で開催されています。
イギリスのロンドンで毎年4月に開催されるロンドンマラソンには、世界中から約4万人もの人が参加します。
この大会からもマラソンランナーの「Run For」の精神を感じることができます。
2017年には1回のロンドンマラソンによって集まった寄付金は約90億円にのぼりました。
企業からの寄付金も含まれているとは思いますが、単純にこの数字を参加者数で割るとランナー1人当たり約25万円の寄付金が集まっている計算になります。
「チャリティマラソン」と聞くと日本ではまだテレビの企画の印象が強いかもしれませんが、ロンドンマラソンに代表されるように、世界では「Run For」の精神が市民ランナーにまで広がってきています。
個人のランナーが「家族の笑顔のために走る」「病気の友人を励ますために走る」など「誰かのために走る」を目標に掲げ、フルマラソンに挑戦することも珍しくはありません。
東京マラソンにも10万円のチャリティ参加枠が用意されています。
チャリティ枠で参加する場合、ランナーが約20を超える団体の中から参加費を寄付する先を選ぶことができます。
私はマラソンチームの代表と前職でマーケティングの業務をしていたことからお話をいただき、2018年の東京マラソンの寄付先の1つである認定NPO法人の「かものはしプロジェクト」に広報のコンサルとして関わりました。
このとき、東京マラソンで5000枠用意されたチャリティ参加枠は全て埋まる結果でした。チャリティ枠で参加をすれば抽選なく東京マラソンに出られるため、そういった魅力も大きいかもしれませんが、日本でも「Run For」の精神が少しずつ広がっているように感じます。
スポーツの世界大会というとオリンピックやサッカーのワールドカップなどが身近だと思います。
こういった世界大会に出場するには、国内の大会で好成績を収め国の代表に選出されなければなりません。
しかし、マラソンは例外です。
マラソンは「誰もが世界大会に出られる唯一のスポーツ」と言っても過言ではないでしょう。
2018年の9月、ドイツのベルリンでベルリンマラソンが行われました。
この大会でケニアのキプチョゲ選手が2時間1分台のフルマラソンの世界新記録を樹立しました。
実はこの大会には多くの市民ランナーも参加をしています。
私の知人も多くがドイツへ渡りベルリンマラソンに参加をしていました。
マラソンは世界新記録を出すようなトップアスリートが走る大会に一般のランナーも参加することができるのです。
私も海外の大会には何度か参加をしました。
その中でもホノルルマラソンは日本人に親しみのある海外の大会だと思います。
ホノルルマラソンには日本のメディアも多くきており、私が参加した際もシドニーオリンピックの金メダリストの高橋尚子さんやモデルの田中美保さん、俳優の相武紗季さんや谷原章介さんなどをホノルルの町中で見かけました。
谷原章介さんはマラソンのゴールラインで「お疲れ様!」と声をかけてくださり、有名人と一般人の垣根も越えてしまうようなマラソン大会独特の一体感がホノルルの町全体で作られています。
(実際の写真)
事実、ホノルルマラソンは約3万人の参加者のうち1/3にあたる約1万人が日本人の参加者となっていますが、1/3が日本人とは言え雰囲気は十分海外の大会です。
大会へ向けた体調管理の中には日本とホノルルの19時間の時差のことも考えなければいけません。
海外のトップ選手も招待選手として出場していますので、ほとんどの人が折り返しのコースで彼らとすれ違うため、世界レベルの走りを肌で感じることができます。
また、参加者の2/3は日本以外の国の方ですので、さまざまな人種の方と一緒に走ることになります。
こう言った「世界大会」に出場している高揚感を味わえるのも、マラソンランナー独特の世界観と言えるでしょう。
フルマラソンを長年続けていると当然ケガをしてしまうこともあります。
マラソンランナーの多くがケガと付き合いながら練習に励んでいます。
このことから、ケガによりマラソン以外のフィットネスに興味を持つランナーも少なくありません。
定量的な数字は把握できていませんが、「筋トレ」と「ヨガ」に興味を持つランナーは多いように感じます。
マラソンでケガをすると、ケガの再発を防ぐために体幹や股関節やハムストリングの柔軟性の強化の重要性に気づきます。
体幹強化のために「筋トレ」を始める、柔軟性の強化のために「ヨガ」を始める、こういったランナーは多いです。
このようなつながりに注目をしている企業も増えてきています。
大手スポーツメーカーのミズノはランニングとヨガを掛け合わせた「RUN &YOGA」のイベントを開催しています。また大手フィットネスジムのゴールドジムの原宿店では、登録をすればジムに荷物を預けて都内に走りに出ることができるサービスがあります。
マラソンやランニングに取り組まれている方は、さまざまなフィットネスに目を向けて見ることで、さらなる楽しみに出会えるかもしれません。
この記事では、私の経験から「マラソンランナーの世界観」をご紹介しました。
アプリケーションやフィットネス業界の盛り上がりは、これからさらに加速するでしょう。ランナーの世界観もそれに伴ってどんどん変わっていくのだと思います。
この記事をお読みいただいた方の中に、「ランニングを最近マンネリに感じてきた人、マラソンランナーの世界に興味がある人」がいらっしゃいましたら、今回ご紹介した世界観の中のどれか1つにでも触れてみていただけたらと思います。