「足の付け根が痛い」と感じた時は、股関節周辺の筋肉のストレッチが有効です。腸腰筋、大臀筋、内転筋群、ハムストリングをストレッチしてあげることで股関節の痛みは緩和されます。
そこでこの記事では、股関節の痛みに悩む人にオススメの各筋肉のストレッチをご紹介します。股関節痛の原因や悪化することで生じる症状についても解説していますので、合わせてご覧ください。
ストレッチトレーナー福原 壮顕
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ストレッチ・トレーニング専門店で店長としてダイエット顧客を数多く担当した後、フリーランスに転向。現役モデルやダイエットインストラクターとして、美容専門学校や企業顧客向けセミナーの講師など幅広く活躍中。資格:日本ダイエット健康協会認定インストラクター/JSA-CSTP (日本ストレッチング協会認定ストレッチングトレーナーパートナー) |
目次
「股関節が痛い!」と感じたら、まずは休むのが手です。4〜5日間なるべく安静に過ごしてみて、痛みが引くのであれば、筋肉痛など一時的なものと考えることができます。
ただし、1週間以上痛みが続く様でしたら要注意。そこまで痛みが続いているということは、体からアラートが出ている証拠です。また、休むことで一時的に痛みが引いたものの、元の生活に戻った途端に何度も繰り返すようであれば、これも手を打つ必要があります。
股関節の痛みの原因として考えられることの1つが変形性関節症です。
股関節は、大腿骨(ももの付け根)が骨盤にはまるようにして成り立っています。大腿骨(ももの付け根)と骨盤の間には軟骨があり、この軟骨のおかげで、歩いたり、曲げ伸ばしをしたりする事ができます。
股関節を覆う筋肉によって軟骨がサポートされているのですが、年齢を重ねて筋肉が衰えてくると、軟骨への負担が大きくなります。軟骨がすり減ってきて骨同士がぶつかるようになってしまう状態を「変形性関節症」と言います。
股関節の筋肉は普段意識することはあまりないですが、衰えてしまうことでこうした病気につながる可能性のある部位なのです。衰えを防ぐためにも股関節周辺を定期的にエクササイズしておくことが大切です。また、変形性関節症の疑いがある際は、専門機関を診療しましょう。
「股関節周辺の筋肉の硬さ」も股関節の痛みの原因の1つです。 股関節の周囲筋肉が硬くなると「階段が上がりづらい。」「平らな道でも歩きづらい。」といった健康面でのトラブルを抱える可能性があります。
「股関節が硬い」という状態は、股関節の周辺の筋肉が硬くなって動けなくなることによって引き起こされます。いま股関節が硬いという方は、股関節の周りの筋肉を柔らかくするストレッチを行うことで、股関節の柔軟性を取り戻すことができます。
股関節の痛みを放置すると、体への様々な弊害が生じます。股関節の痛みに悩んでいる方、つまり股関節の周辺筋肉が硬い方は、これからご紹介する5つの悩みを合わせて抱えている方も多いです。
股関節のストレッチを行う前に、ご自身に当てはまる症状がないか確認しましょう。
腰痛の症状は複数ありますが、よく耳にする“ギックリ腰”や“腰椎椎間板ヘルニア”は、日常的な姿勢や動作、筋力のバランスと深い関係があります。
例えば、椅子に座った状態では、股関節が硬い方は骨盤がたった状態にはなりません。そうすると、常に腰椎が丸くなった状態になり、椎間板が一定方向(後ろ側)に持続的に圧力がかかってしまいます。
この状態が続くことで、椎間板が傷み、その中身が漏れ出して神経を圧迫してしまいます。これが腰椎椎間板ヘルニアです。腰椎椎間板ヘルニアにならないためには、骨盤を立てるだけの股関節の柔軟性が必要になるのです。
ギックリ腰は、お腹側の筋肉(腹筋群)と背中側の筋肉(背筋群)の筋活動のバランスが崩れることによって起こります。
お腹側の筋肉(インナーマッスルと呼ばれる腹横筋)の動きには骨盤周囲の細かい筋肉(骨盤底筋群)の働きが重要で、股関節が硬いとこの骨盤底筋群の働きが悪くなるのです。そのような状態で何かの動作をした時に、ギックリ腰になることがあります。
このように、股関節の柔らかく保つことは、腰の問題を将来起こさないためにもとても大切です。
体には、ひとつの関節が硬いと、その周辺の関節がその動作を補おうとする性質があります。
例えば、しゃがみ込むという動作をする際に、股関節をうまく曲げることができないと、その分、膝を深く曲げる必要がでてきます。
この膝を深く曲げる動作による膝への負担がひざ痛の原因となります。股関節の柔軟性の不足を補おうと膝が頑張ってくれた結果が、膝の痛みとして現れるのです。
高齢者の最も多い骨折が股関節の骨折だと言われています。股関節が硬い人は、ちょっとした動きで、関節の最大可動域(関節が動ける範囲の限界域)に達してしまいます。
股関節が柔らかい人が少し無理な動きをしたとしても、その範囲を関節が動いてくれれば姿勢を崩すこともありません。しかし、股関節が硬い人が動きをしようと思っても、関節の可動範囲を超えた場合は、姿勢を崩すか転ぶことしかできません。
このように将来の骨折予防においても、股関節を柔らかくしておくことは本当に大切です。
頻尿の理由のひとつが、膀胱が過剰に伸ばされることです。膀胱は本来、尿がたまることで膨らみ、その膨らみを脳が察知して、おしっこに行きたい状態になります。
しかし、股関節の前側の筋肉(腸腰筋)が硬くなっていると骨盤が反ってしまい、骨盤が反ることにより膀胱が過剰に引き伸ばされてしまいます
そのため、腸腰筋をストレッチすることは、膀胱を過剰に引っ張るような姿勢を回避して、無駄な頻尿を防ぐことにつながります。
股関節周辺ストレッチを行うべき筋肉は、股関節の前側の腸腰筋、股関節の後ろ側のハムストリング。
そして、股関節を後方に振る動きや、外側にひねる動作などにかかわる大殿筋や中臀筋(お尻の筋肉)、股関節を内側に動かす内転筋群などです。
そこで、ここからはそれぞれの筋肉に対するストレッチをご紹介します。股関節に痛みを抱えている方向けに、強度の低いものを厳選しておりますが、ストレッチをしている際に痛みを感じる場合は無理に行わないように注意して取り組んでください。
内転筋群のストレッチです。内転筋群の柔軟性の向上は、骨盤の傾きの改善にアプローチができ、腰痛や頻尿など様々な不定愁訴の改善につながります。
反動をつけて行うことで筋肉の神経が興奮し、柔軟性とは違った効果になるので、ゆっくりと下に下げて、内腿(うちもも)が伸びているのを感じます。また、ストレッチの際は体がまっすぐに伸びていることに注意してください。
ハムストリング(股関節の後ろ側)のストレッチです。まずは片足の開脚から取り組み、柔軟性が向上してきたら両足を開脚したバージョンへ負荷を上げていきましょう。
しっかりと背筋を伸ばし猫背にならないように注意しながら行ってください。また、なるべく膝を伸ばし、つま先をタッチできるように意識して行いましょう。
腸腰筋(股関節の前を伸ばす)ストレッチです。腸腰筋が硬いと 骨盤を前傾位に引っ張ってしまい、骨盤前傾による姿勢不良の原因となります。姿勢不良だけでなく、骨盤を前傾に引っ張ることは腰痛の要因のひとつともいわれているため柔軟性を高めましょう。
ストレッチを行う際は、背筋を伸ばしながら行いましょう。椅子を使って簡単に行うことができるストレッチなのでぜひトライしてみください!
股関節を後方に振る動きや、外側にひねる動作などにかかわる大殿筋(お尻の筋肉)のストレッチです。大殿筋のストレッチは、腸腰筋(股関節の前側)の動作も加わるので、お尻と股関節の深層部の柔軟性も高めてくれます。
しっかりとお尻の伸びを感じながら行いましょう。また、腰が反ってしまうと、お尻以外の体の部位に力が入ってしまい、大臀筋のストレッチ効果が弱まってしまいます。腰を反らないように気をつけてください。
股関節の柔軟性向上に加え、お尻の血行を良くしてお尻の痛みの軽減にも効果があります。座りながらできるのでオフィスや食卓などで簡単に取り組むことができます。
デスクワークなどで長時間座っていると、お尻の血行が悪くなってしまいます。オフィスでも簡単にできるストレッチなので、仕事の休憩中などにも取り組んでみてください。
ストレッチを習慣にすることのメリットは、股関節の痛みの予防・解消だけではありません。上記で紹介したストレッチを行うことによるメリットを深掘りしてご紹介します。
現在社会では、学校でも仕事でもテレビを見ている時もご飯を食べている時も、座っています。その座った姿勢の土台となっている骨盤の位置(角度)は良い姿勢を続ける最も重要な要素と言っても過言ではありません。
股関節の柔軟性を保ち、骨盤を適切に立てることができれば、それだけで良い姿勢でいる可能性が広がるのです。
骨盤を立てるには、特に股関節の屈曲方向(膝を胸に近づける方向)の柔らかさがとても大切です。ご紹介した腸腰筋のストレッチなどに積極的に取り組みましょう。
股関節周囲の筋肉が硬いと、特定の範囲でしか体を動かせないため、筋力を発揮しにくいですが、柔軟性を保っていると、筋力を発揮できる範囲が広がります。
また、筋力以外の要素(バネのような要素)で考えても、その範囲がある程度広いほうがパフォーマンスは高まります。
転倒しそうになる時や、スポーツの時をはじめ、無理な動きをしてしまう時に、関節が柔らかいことで姿勢を保てる、対応できる範囲が広くなります。
そのため股関節の柔軟性の向上は、転倒しそうになっても転倒しなくて済んだり、脱臼(関節が外れる)しそうになっても脱臼せずに済んだりと、怪我のリスクを大きく減らすことができます。
病気として認定されなくても、便秘、失禁、頻尿などは日常生活に大きく影響を与えるほどの悩みとして、多くの人が抱えています。
それらの症状は症状別に原因は存在していますが、骨盤周囲の筋肉との関係は深いです。便秘も直腸に巻きついた筋活動のバランスと関係があったり、失禁も骨盤底筋群の不活動に関係があったり、頻尿も前述の通り骨盤の位置による影響であったりします。
それらは股関節の柔軟性が高まることで解消することがあるほど、直接的に関係しています。専門的な知識はここでは割愛しますが、股関節を柔らかく保つことで、それらの症状を改善・予防することも可能です。
股関節の痛みが今回ご紹介したストレッチなどのセルフケアでもどうしても改善しないときは、ストレッチ専門店や整体、病院で見てもらいましょう。
各専門機関で同じトレーナーの方や、医師に担当し続けてもらうと、だんだんと体への理解が深まっていきます。自分自身の他に、自分の体のことを把握している人がいるというのは心強いことです。
特に股関節のこわばりは、気づかないうちに歩幅が狭くなっていくなど、意識しにくい面があります。いま現在、どのくらい固まってしまっているのかを知るのに、プロの意見は役立ちます。どんな対処をするといいのか、いまの生活習慣の中でどんな手が打てるのかを相談することもできます。
また、股関節の痛みは今回ご紹介した以外にも、思わぬ要因で起きている場合もあります。自分自身で気づくことができない部分にアプローチするためにも、プロのアドバイスは有効です。一人で対処しようと思わず、専門家に頼ることも念頭に置いておきましょう。