からだを動かすとよく眠れると言いますが、 「筋トレを行うことで睡眠の質が上がる」「睡眠は筋トレのパフォーマンスに影響する」など、睡眠と筋トレには相互関係があると言われています!
そこでこの記事は、筋トレと睡眠にどういった関係があるのかを見ていきたいと思います。
目次
睡眠と筋トレの関係(筋トレ⇄睡眠)を考えるときは、「筋トレが睡眠に及ぼす関係(筋トレ→睡眠)」と、「睡眠が筋トレに及ぼす関係(睡眠→筋トレ)」の両方を見ていく必要があります。
この章では、まずは睡眠が筋トレにどのような影響を及ぼすのか?から見ていきます。
日中に筋トレを行うことで夜眠れるのは、実は“疲れるから”という理由ではないんです。
なぜ筋トレを行うとよく眠れるのかというと、心拍数の増加が神経を刺激することで、睡眠時の心拍が下がり睡眠の質が改善するためだと言われています。(*1)
また、人の体はリラックス状態になるには、副交感神経が優位になっている必要があります。
しかし、筋トレを行うと体を興奮状態に導く交感神経が優位になります。そのため寝る前の筋トレには注意が必要です。
筋トレで良質な睡眠を導くには、筋トレは就寝3時間前までに終わらせておきましょう。(※この話は、『寝る「直前」にしないほうがいいこと』の項目で詳しくご紹介していきます。)
また、2011年のオレゴン州立大学の実験では、1週間に150分越え(1日20分程度)の高重量な運動を行う実験を実施したところ、次のような結果が出たそうです。
このように、高重量の運動(≒筋トレ)は、睡眠や日中の活動に大きく影響があるとも言えるでしょう。(*2)
睡眠不足は疲れやすくなったり、ケガをする可能性が高くなるだけでなく、筋肉への悪影響も深刻です。
せっかく筋肉をつけるために筋トレを頑張っても、寝不足の状態では思うように筋肉をつけることができません。
海外の医師たちによる研究によると、8時間睡眠の人に比べ、4時間睡眠の人はテストステロンの値が60%も少なかったという研究報告があります。(*3)
テストステロンの分泌は、筋肉の発達に重要なホルモンです。
睡眠時間を確保するようにしましょう!
睡眠過多と筋トレに大きな関係はあるのでしょうか。
直接的な研究データは見つけられませんでしたが、睡眠と健康に関する興味深いデータがあったのでご紹介します。
8時間以上の睡眠は、健康に危険を及ぼすリスクがあるという研究結果が、アメリカの国立生物工業情報センターから発表されています。(*4)
また、7時間の睡眠が最も死亡リスクが低いというデータもあるようです。(*5)
眠りすぎも身体へのリスクがあるのかもしれません。
もちろん個人差もあると思いますので、筋トレをする人は、自分の体の調子を見極めながら最適な睡眠時間を探していきましょう。
筋トレ以外にも睡眠の質を上げる方法があります。運動ができない日や、筋トレのプラスαとして取り入れてみてください。
私たちの身体は、筋トレや入浴などで高まった体温が、下がっていくことで眠気を生じます。
そのため、寝る直前に入浴すると、目が覚めて寝付けないことがあります。寝る直前の入浴は控えましょう。効果的なのは、“寝る1時間前までに38~40℃のお湯に20~30分程度入浴”することです。
特に、首・足首・手首をしっかりと温めて、血液の循環をよくしてください。シャワーの場合は、とにかく全身を温めることが肝心です。
温まった深部体温は1時間程度で下がり、スムーズに眠りへと導いてくれます。また、それでも眠れないという人は、深部体温の下がるスピードがずれている可能性があります!
その場合は、入浴時間をずらしながら、スムーズに眠れる時間を見つけてみてください。
日中にセロトニンというホルモンをしっかりと分泌させることが、眠くなるために必要なメラトニンというホルモンを増やすポイントです。
セロトニンは筋トレ時にも分泌されますが、太陽の光を浴びることでも、セロトニンの合成が活発に行われます。1日20~30分程度光を浴びることで、効果的にセロトニンの分泌量を増やすことができます。
曇りの日でもちゃんと太陽の光は届いているので、カーテンを開けて光を取り込むようにしてくださいね。
また、朝日には体内時計をリセットする効果があります。寝る時間に向けて、朝日を浴びてから15時間後にメラトニンが増加していく仕組みになっていると言われています。(*6)
朝日を浴びて、日中の太陽光を浴びて、睡眠のホルモンを活発にしてくださいね。
寝つきが悪い人や、すぐに目が覚めてしまう人。
また、寝ても疲れが取れないという人は、寝る前のその行動が睡眠に影響しているかもしれません。そこで、良い睡眠をとるために、寝る前のNG行動を確認しておきましょう。
筋トレや運動をすると、夜眠くなりやすいとご紹介しました。
しかし、寝る直前に筋トレや運動を行うと体温が上がったままで、逆に目が覚めて寝つきが悪くなってしまいます。
入浴の項目でもご説明したように、体温が下がることでスムーズな眠りに入ることができます。
そのため、息が上がるような運動は『寝る3時間前』までに終わらせるようにしてください。
「どうしても運動できる時間が寝る前にしかない!」という場合は、ゆったりとした動きのストレッチがおすすめです。
気持ちが良いと感じるストレッチにはリラックス効果があり、自然と眠気を誘ってくれます。
眠くなるためのホルモンであるメラトニンは、暗い環境でより多く分泌されますが、目から入ってきた光によって分泌量が減少してしまいます。
パソコンやスマホだけでなく、DVDプレイヤーや空気清浄機などの電子機器からの強い光にも要注意です。
意識してスマホやタブレットを見なくても、周りから入ってくる電子機器の光で睡眠の質は下がってしまいます。
スマホなどの使用は『寝る3時間前』までに終わらせて、電子機器の光は布などをかぶせて真っ暗な状態を作ってください。
目をつぶってから、手を目の前でひらひらさせても影が見えなければ大丈夫です。
食べ物を消化するのには3時間程度の時間がかかります。その状態では、眠っていても脳や身体は休まっていないので、睡眠が浅く、質の低下に繋がってしまいます。
できるだけ『寝る3時間前』までに食事をすませることがベストですが、難しい場合もありますよね。
そんな時におすすめなのが、消化に良い食材を煮込んだスープです。
食事が遅くなりそうなときは間食をとるなどして、寝る前は消化に良い物を腹8分目に抑えるようにしてくださいね。
また、アルコールを飲むとよく眠れると思っていませんか?実は、脳を麻痺させているだけで、身体や脳は休まっていないのです。アルコールは『寝る2時間前』までにして、コップ1杯の水で〆れば二日酔い防止にも効果的ですよ。
ここまで睡眠の質を上げるための方法をご紹介してきました。
次は、筋トレの効果をアップさせるための睡眠についてご説明していきます。
個人差はありますが、健康的にも筋肉を育てるためにも、睡眠時間は7時間程度欲しいところです。
特に、22時~2時の間は筋肉を育てる成長ホルモンの分泌量が増えるので、この時間までには眠っていたいところです。
しかし、22時に寝ているというのは結構ハードルが高いですよね。
そこで朗報なのが、眠り始めてから3~4時間後のノンレム睡眠時(深い眠り)にも、22時~2時同様成長ホルモンの分泌量が増えと言われていること。(*7)
就寝時間よりも、筋トレなどを取り入れながらノンレム睡眠を確保できるように、睡眠の質の改善の方がおすすめです。
中途覚醒とは、睡眠中に何度も目が覚めてその後なかなか寝付けない症状で、『不眠症』の可能性があります。
このような状態が続くと、途中で起きずに熟睡している人に比べてさまざまな不調が表れます。
これは、何度も起きてしまうことで睡眠時間が削られ、脳や身体の休息が不十分であることが原因です。
中途覚醒の原因は<加齢・身体の傷み・睡眠時無呼吸症候群・食事時間が遅い・習慣的な寝酒>など人によってさまざまです。
中途覚醒が1ヵ月以上続く場合は、専門機関に相談することをおすすめします。
スムーズな眠りは、体温が下がることと、リラックス状態の副交感神経が優位になっている必要があります。
筋トレは体温を上げて、興奮状態の交感神経が優位になります。眠る環境とは真逆の状態になってしまうので、筋トレのように血管を収縮させる運動は『寝る3時間前』までに終わらせておきましょう。
眠りの質が良いと、ノンレム睡眠の時間を確保することができるので、筋肉を成長させるホルモンの分泌も活発になります。成長ホルモンは引き締まった筋肉を作るために必要なので、成長ホルモンを意識した時間配分を心がけてください。
朝の筋トレは、脳や身体を目覚めさせるためにとても効果的です。
1つ注意しておきたいのが、日中や夜のように体温が上がっていないため、激しい筋トレからスタートすると、<心臓への負担・血圧の上昇・ケガ>に繋がります。
まずは、筋肉をほぐす程度の軽い運動から始めてくださいね。また、起床時はエネルギー不足状態なので、軽食や水分補給をしてからウォーミングアップを始めてください。
「眠れないことに不安を感じてさらに眠れなくなる」
「寝ても疲れが取れない」
「何も考えずに眠りたい」
など、睡眠薬に頼ってでも眠りにつきたいと思う人は少なくありません。
しかし、睡眠薬は身体への負担があるということを知っておいてほしいのです。
睡眠薬に頼ることは簡単ですが、身体へのリスクを考えるとできるだけ睡眠の習慣を改善することをおすすめします。
しかし、「この日はどうしても眠りたい…」という場合もあるかと思います。その時は必ず、専門医に正しい睡眠薬の使い方を聞いて、依存しないように上手く利用してくださいね。
睡眠時を自分で把握するために、睡眠計測アプリがおすすめです。
無料のアプリやアップルウォッチを使用したアプリをご紹介していきますので、ご自身の睡眠状態を把握するために活用してみてください。
アプリがレム睡眠(浅い眠り)を感知して、快適に起きられるタイミングでアラームが鳴るので、すっきりと起きることができます。
睡眠時間・中途覚醒などをデータ化して、さらに寝言やイビキも自動で録音してくれます。自分ではわからない睡眠時の問題を早期に発見でき、録音データを医師に確認してもらうのにも役立ちます。
無料でこのクオリティーということで、長年愛用しているユーザーが多い優秀アプリです。
Apple Watchを装着したまま睡眠計測をしてくれるので、正確なデータを収集することが可能です。
睡眠の質や深さなどをグラフ化して、今までの記録を履歴で確認することができます。自分の睡眠の変化を知ることができるので、筋トレなどを取り入れて、どのように睡眠の質が改善されたのかということも可視化することができるので、楽しみながら取り組むことができるアプリです。
良質な睡眠と効率的な筋トレを行うには、
これらのことを意識して、心身ともに健康な身体づくりに取り組んでみてくださいね。
参考資料
*1https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscn/40/6/40_547/_pdf
*3https://anabolicmen.com/sleep-testosterone/
*4https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2864873/
*5https://www.asahi.com/relife/event/record/11208039
*6 https://www.asahi.com/relife/event/record/11209963
*7http://www.kenkounippon21.gr.jp/kyogikai/4_info/pdf/suiminshishin_kyozai.pdf
*8https://toyokeizai.net/articles/-/128167