筋トレでたっぷり汗をかいたあとは、お風呂に入りたくなりますよね。
ところが、「筋トレ 風呂」などとインターネットで検索をしてみると、色々な情報があふれています。
筋トレ後にお風呂は厳禁、シャワーのみにすべき!という意見もあれば、お風呂には筋肥大の効果が期待できるといった意見もあります。
いったい何が正しい情報かわからない!という方に、筋トレ後のお風呂がもたらす効果とおすすめの入浴法をご紹介します!
この記事を書いた人 パーソナルトレーナー 松浦 晴輝
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早稲田大学在学中にジムトレーナーのアルバイトを始め、トレーニングや食事に関する知識を習得。パーソナルジムで月約130本のパーソナルセッションをこなす。現在はフリーのパーソナルトレーナーとして活動中。 |
目次
筋トレ後はお風呂に入っても、問題はありません!
厳密には、お風呂に入ることによって筋肥大が起きるなどの説はあまり確かでないため、「どちらでもOK」というのが結論となります。
臺北市立大學らの研究(※1)では、十代のアーチェリー選手を2グループに分け、片方のグループが1週間に2回、トレーニング終了の1時間後に40℃のお湯に30分間つかることを2週間続けました。
その結果、競技のパフォーマンスや姿勢維持の力がお湯につからなかったグループよりも低下していたと報告されています。これは、筋トレ後に温かいお風呂に入ることに対するネガティブな報告です。
一方で、筋トレ後に温かいお風呂に入ることに対するポジティブな報告もあります。
その中の1つに、「ヒートショックプロテイン」といって、筋肉をつけるために少し高温の環境下に体を置く方法を提唱している方もいます。この方法では、高い温度に身を置いた方がタンパク質の生成が促されるとされています。
しかし、この方法の前提が、マウスを使っての実験であることは留意する必要があります。
また、人で行った研究では、複数の研究(※2)においてお湯に浸かることが筋肉機能の回復に寄与すると示されたというレビューもあります。
つまり、筋トレ後にお湯に浸かるべきかどうかは、研究者たちの間でも意見が別れているのです。
同様に、筋トレ後に冷水につかることの効果への見解も多様です。
冷水に浸かることで筋トレ後24〜48時間にわたり筋肉痛を抑えられ回復が早まったというデータ(※3)があります。
しかし別の研究(※4)では、トレーニング後に14分間冷水に浸かったところ、トレーニング後4時間以内で筋肉の回復は特に早まらなかったようです。
短時間では効果が現れないのかもしれません。
このように筋トレ後のお風呂については、研究によって結果にばらつきがあります。
どの方法に関しても、効果の有無を断言することはできません。
またこれは経験上のお話になりますが、私たちパーソナルトレーナーも、特に気にすることなく筋トレ後にお風呂には入ります。
今のところは、筋トレ後にお風呂に入ることが筋肥大の妨げになると考える必要はないのではないでしょうか。
「入浴によって乳酸が流れて疲労の回復が早まるのでは?」という質問を頂いたことがあります。
確かに、血行がよくなることで血液中の疲労物質の循環が良くなり疲労回復にプラスの効果をもたらすことは期待できるでしょう。
しかし、「乳酸が溜まる=疲労」という説には疑問の声があがっています。
筋トレによって疲労した筋肉は、乳酸の濃度が高くなること自体は間違い無いのですが、その乳酸はむしろ回復に貢献してくれているという説があります。
筋トレをしていると、筋肉が焼け付くような感覚があり、「もうこれ以上、重りがあげられない!」と感じることがあると思います。
これは筋内環境が酸性に傾いているために起きる感覚で、この状態を「アシドーシス」と呼びます。
「酸性」に傾いている状態ではありますが、この原因は乳「酸」ではありません。
筋肉をアシドーシス環境に置くことを「化学的ストレス」と言い、筋肉に化学的ストレスをかけることで、筋肉を肥大させるホルモンが分泌されるとされています。
この状態は乳酸とは直接関係があるとは言い難く、お風呂に入ることも疲労回復の促進と直接の因果関係があると断言するのは難しいのが現状です。
ではなぜ、筋トレ後のお風呂=よくないこと、という説が生まれたのでしょうか。
これは筋肉の炎症が原因であると考えられています。
筋トレは筋肉の繊維を破壊する行為です。
筋トレによって筋繊維が破壊されると筋肉に炎症が起きます。
この状態でお風呂に入ることで、炎症が助長されてしまうのではないか…と考えられたのが、筋トレ後のお風呂NG説が生まれた背景です。
炎症から早期に回復するために、冷たいシャワーを浴び炎症を抑えるのが良いと考えられるようになりました。確かに、アスリートの方でも回復を早めるためにアイスバスに入る方もいます。
しかし近年、この体を冷やすという方法は、筋肉の回復を早めるために有効であるとは言い難い、という研究が挙がっています。これは先ほどご紹介した通りです。
そのため、お風呂が好きな方は筋トレ後にお風呂に入ってもOKですし、シャワーのみで済ませるのも問題ありません。
実際、私も筋トレ後にはお風呂に入りますし、きちんとトレーニングをして、栄養をとり、休養することができていれば、お風呂の影響は大きくないと思います。
おすすめは、サウナと水風呂の交代浴です。
私はサウナ8〜12分、水風呂1〜3分で行なっています。
この時間についてはそれぞれの体に合うやり方があると思いますので、各々で調整してみてください。
サウナと水風呂に交互に入ることで、交感神経と副交感神経が交互に働き、自律神経が整うと言われています。
自律神経は内臓をはじめ、生理的な機能全てに関わっていますので、自律神経を整えることは疲労からの回復を助けてくれます。
また、サウナと水風呂に交互に入ることによって、血管の拡張と収縮を交互に繰り返すことができます。
拡張と収縮が繰り返されることによって血流が促されます。
血液は酸素や、身体中に栄養を運ぶ役割を持っていますから、血液の流れをよりよくすることは、トレーニングの疲労からの回復を早めることにつながると考えています。
私自身、筋トレの調子が悪かった日や、疲労が溜まっている時などは、サウナと水風呂に入ることが多いです。
「サウナに入って自律神経を整えたらから大丈夫!」という、気持ちの面でのお守りとしても役に立ちますし、私自身効果を実感しているのでぜひ試してみてくださいね。
筋肉痛の軽減のためにお風呂に入るという方もいらっしゃると思います。
翌日の仕事や学業に響かないように疲労感を抑えたい、という方におすすめしたいのがマッサージです。
誰かにマッサージしてもらうのも有効ですが、ストレッチポールやボールを使ってのマッサージも効果的です。
体を圧迫することによって筋肉痛を軽減する効果が期待できます。
お風呂上がりのストレッチがおすすめ!というのは聞いたことがあるかもしれませんが、筋トレ後のお風呂で湯船に浸かりながら行うストレッチもおすすめです。
温かい状態がキープされている中で行うことで、体が柔らかさを取り戻しやすくなります。体が柔らかくなり体の可動域が広がれば、より多くの筋肉にトレーニングの負荷をかけることができるようになります。
また、お風呂の中は体が浮いているため、ストレッチによっては体を無理なく伸ばせるというメリットもあります。
ふくらはぎから、太ももの裏側まで伸ばすことで、血流を促します。
特に上半身の筋トレがメインの日は、下半身は使わずに凝り固まりやすい部位なので、意識的にほぐしておきましょう。
※もっと伸びている感じが欲しい、という方は上半身を少し後ろにたおしてみてください。
太ももの前側の筋肉を伸ばすストレッチです。
太ももは体の中でも大きな筋肉なので、ここの血流を促すことで疲労回復の促進を期待できます。
床だと痛くて行えない方もいらっしゃいますが、お風呂の中で行うことで負荷が下がって行いやすくなります。
※20〜30秒繰り返す。
※手を拡げる時は、足の指が外側に伸びるように行う。
一見簡単そうに見えて、足の指を開くこと自体が難しいと感じる方も多いはずです。
現代の暮らしですと、足の指を動かす機会が少なく、動かし方を忘れてしまっている方が多いです。
この方法によって足の指の筋肉に刺激を入れ、足の指を動かすことができるようになります。
足の指のストレッチを行ったら、足首を回していきます。
※足指のストレッチと合わせて、反対側も行う。
足の指は、足の裏の筋肉とつながっており、足の裏は足首やふくらはぎとつながっています。指からふくらはぎにかけてほぐすことで、末端にまで血流を促し、疲労回復の促進に貢献します。
筋トレ後のお風呂の効果は様々な説が飛び交っていますが、お風呂に入っても、シャワーだけで済ませても問題ありません。疲労感の軽減や、筋肉痛を和らげる目的で入浴をされているのならば、サウナと水風呂の交代浴がおすすめです。
また、トレーニング後のマッサージでも筋肉痛の和らげる効果が期待できますので、ぜひ行なってみてくださいね。以上、筋トレ後のお風呂についてお届けしました!
・※1:Hot Water Bathing Impairs Training Adaptation in Elite Teen Archers.
Chin J Physiol. 2018 Apr 30;61(2):118-123. doi: 10.4077/CJP.2018.BAG560.
Sports Med. 2018 Jun;48(6):1311-1328. doi: 10.1007/s40279-018-0876-6.
・※3:Recovery From Exercise-Induced Muscle Damage: Cold-Water Immersion Versus Whole-Body Cryotherapy.
Int J Sports Physiol Perform. 2017 Mar;12(3):402-409. doi: 10.1123/ijspp.2016-0186. Epub 2016 Aug 24.
Int J Sports Physiol Perform. 2017 Aug;12(7):886-892. doi: 10.1123/ijspp.2016-0127. Epub 2016 Dec 5.