フルマラソンを走るとき、どのようなペース配分、走り方を意識していますか?
前半に飛ばす、後半に力を温存するなどそれぞれのやり方で試行錯誤していらっしゃると思います。
今回はプロランニングコーチの目線から、序盤、中盤、終盤の走り方をお伝えします!
次の大会で結果を出すことを目指しているランナーの方はもちろん、これから初めてのフルマラソンを控えているという方はぜひ参考にしてみてくださいね。
目次
レース序盤は、筋力を使わない、頑張って走ろうとしないということが大切です。
「目標タイムに合わせるにはこのペースでいかなきゃ!」といった思いもあるかと思うのですが、気持ちが前のめりになりすぎていると、普段のトレーニングよりも焦ってしまいます。
ペース自体は変わらなくても、いつもよりも筋力を使いすぎてしまったりすることも。
そうすると、レース後半の筋肉疲労によるペースダウンにつながってしまいます。
前半こそ一番冷静に、いつも通りの走りをするよう意識しましょう。前半にこそ、力をセーブする勇気が必要です。
多少はじめの1km、2km、5km、10kmくらいまでの間で、1kmあたり5秒〜10秒くらい遅くなったというのは、あまり考えすぎなくてもいいと思います。
それよりも筋肉のダメージをためて、後半のペースダウンにつながらないように意識しましょう。混雑も想定範囲内のものとして、冷静に対処すること。
前半は、わかってはいてもついつい力んでしまうものなので、いつも以上にセーブするよう意識するのがコツです。
<レース序盤にオススメのフォーム>
・いつもよりコンパクトな腕振り。
・いつもよりさらに足は前に出さず、真下に下ろすようなイメージ。
こうしたフォームを意識するくらいでちょうどいいでしょう。
こうすることで、筋肉疲労、足へのダメージが少なく済むので、後半に体力を残すことができます。
また、目標のペースに合わせようとダッシュすることはおすすめしません。
確かに、理想のペース通りに走れた方がいいですし、レベルが高くなればなるほど1秒あたりの比率があがるので気がはやるお気持ちもわかります。
しかし、前に出たい気持ちからジグザグに走ったり、端の方をダッシュしてまた別の集団に詰まったりといったことを繰り返していると、これは足にとってとてもダメージが大きいのです。
もちろん「1kmあたり1分遅くなってしまった」というのならば方法を考えた方がいいかもしれません。
ただ、1kmあたり1〜20秒くらいであれば、さほど考える必要はないでしょう。
仮に最終的に「目標タイムに20秒届かなかった…!」ということになったとしても、おそらくその方は、前半飛ばせたとしても後半にペースダウンしてしまっていたはずです。
前半遅くなったとしても、実力があれば絶対に後半取り返すことができます。
前半でジグザグに走ったから後半走れなかったという風に考えるのではなく、大会トータルでみて自分が何時間で走れるのかをみましょう。
ちなみにトップ集団になると、そういった混雑状況も含めて練習をする場合もあります。
集団で進んだ方が前の人が風除けになったり、リズムを刻みやすかったりと、前に誰かいた方が走るのが楽な場合もあります。
前の人が想定よりも早かったとしても、多少無理してついていくことも。
自分の許容範囲は把握してあるので、後半の落ち込みは仕方ないものとした上で、トータルで見れば走りきれる許容範囲でついていきます。
ライバルの持ちタイムはおおよそ把握しているので、その中での駆け引きをしつつになりますが、プロになるとそんな事を判断しながら走っています。
私の指導経験上ですが、大会中盤の25kmや30km地点で「今日はいけそう!」と思えていたら、それだけ余裕があるので最後までいけます。
20kmあたりで「今日はどうかな…?いけるかな…?」という疑問があるようだと、だいたい30kmあたりで失速しますね。
前半までと同様、中盤もあまり力んで走ろうとするのではなく
・体幹部を安定させて(良い姿勢を意識して)
・肩関節と股関節を同時にスムーズに動かす(腕と足をリラックスして動かす)
というランニングの基本を守るようにしましょう。
体が動かないけど「頑張って走ろう!」とすると力んでしまって余計に疲れてしまうことも。
「姿勢を意識して、股関節と肩関節を同時に動かしていると、結果前に体が進んでいる」という風に考えられると、力まずに体を動かせます。
このように一つ一つの要素を分解してみると、考えてみましょう。
ふくらはぎを思い切り使って地面を蹴ろうとしたり、腕振りを意識しすぎたりしない方が、後半にまで体力を残すことができます。
もちろん腕を振るようにはした方がいいのですが、手首に力が入ってしまっているような走り方はNG。
体のできるだけ中心に近い部分を動かして、末端はリラックスさせるのがコツです。
中心部分を動かしてあげれば、テコの原理で末端部分は自然と動いてくれます。
末端を動かそうと意識してしまうと、結果全ての筋肉を使おうとしてしまうので、筋肉の疲労が重なっていきます。
フォームに関することとして、着地の方法についてもご質問をいただくことがあるのですが、
着地の仕方ばかりを意識しようとすると、膝から下や足首周りなどを意識しすぎてがんばってしまい、それが疲労につながってしまいます。
フォアフットなども注目されてますが、フォアフットのランナーは「フォアフットにしよう」と意識して走っているのではなく、体幹部など全身を動かした結果、そうなっているのです。
大会終盤というと、30kmを超えたところ。
「あと12km…これならペースを上げられるんじゃないかな?」と思っていたら、おそらくイーブンペースで走ってちょうどいいくらいになります。
この辺りになると、どれだけ余裕をもっていったとしても筋肉的な疲労が出て、体の重さが出てきます。
そうなると、肩が上がってきたり、腰がそってきたりと、体が上に立ってしまう人が多いです。
体幹の筋力が足りなくなって体が後ろに反った状態となり、前に進む推進力が失われてしまいます。
そういった方は、上半身や肩周りの力を抜いてリラックスしましょう。
肩の力を抜くことができれば、肩が上がりにくくなり、体がそりにくくなります。
リラックスするには、下記のような方法が有効です。
・肩を耳に近づけては下げる
・腕を回す
肩の力を抜くことができたら、再び前傾することを意識しましょう。
重力というのは真下にはたらくので、体を前に傾けることによって、自然と推進力が出てきます。
体の軸を前に倒して、倒れてしまわように足が前に出続けるようなイメージで走るのがコツですね。
体がまっすぐだったり、後ろに沿ってしまっているとこうした力を利用できなくなってしまいます。
水分不足は足がつりやすくなり、脱水症状や熱中症につながります。
水分は補給してから、体内に吸収、循環して機能として使われるようになるまでにおおよそ30〜40分かかると言われています。
そのため、最低でも5kmに1回は取っておいた方がいいでしょう。
7分/kmペースであれば、35分に1回の給水になるので、そのタイミングでとり続ければ、不足することなく走ることができます。
人間が体内に貯められるエネルギーは約2000kcalだと言われています。
運動によって消費されるカロリーは、体重1kgあたり、1kmで1kcal。
60kgの人がフルマラソンを走る場合は、約2500kcal必要です。
体内に貯められるエネルギーでは途中で足りなくなってしまいます。地点としては30kmくらいでなくなってしまう計算になりますね。
レベルによりますが、カロリー補給用のジェルをできれば2〜4本くらい、100kcal〜200kcalくらいのものを取れれば、ギリギリ足りるという計算になります。
10km、20km、30kmと区切りのつくあたりで、早め早めに摂ってあげましょう。
40kmあたりで摂っても、吸収されて使われるのがゴールした後になってしまいます。
ちなみに、トップの選手の場合。
ドリンクといっしょにエネルギー補給する人もいますが、競技選手の場合は脂肪燃焼しながら体の能力を高めていくような、最後までエネルギー切れになりづらいトレーニングをしています。
・体を前傾させて、前に倒れないように自然と足が出るイメージ
・体幹部を安定させて、肩関節と股関節を同時にスムーズに動かす
序盤〜終盤にかけて、どの場合であってもこのランニングの基本は変わりありません。
後半に温存したり、前半にタイムを稼いだりといった各自のやり方はあるかと思いますが、私のおすすめはイーブンペース。
30km地点でスピードアップできそうな余力があったら、それでちょうどイーブンペースが狙えるくらいです。
筋肉に負担をかけすぎないように、力まず、フォームを意識してペースを維持してみてください。
ぜひ参考に、タイム向上や完走を目指してくださいね!
以上、「マラソンの走り方は大会序盤〜終盤で変えるべきか」でした!