マラソンとは個人競技です。
一人で走るんだから当然ですね。
というか陸上競技でもリレーを除く全てが個人競技です。
チームスポーツではありません。
しかし陸上競技において、男子100m並の注目を集めるコンテンツが「駅伝」です。
国際的にも「EKIDEN」もしくは「Marathon relay」は徐々に浸透しつつあります。
一本の襷(タスキ)を1秒でも早く次走者に繋ぐ。ここにドラマが起きない訳がありません。
日本の独自文化、「駅伝」がいかに日本の長距離界を発展させ、世界の舞台で戦うランナーを生んできたことか。
今回は日本の駅伝のレキシと、魅力、注目選手を細かい視点も交えて紹介したいと思います。
「駅伝競走」の略。道路をコースとする長距離のリレー競走。
だそうです。
大事なのは「道路を」というところ。
(同じ長距離種目でも10000mや5000mがイマイチ注目されないのはここじゃないだろうかと思います。400mトラックを何周も走ってるの見て楽しめるのは一部のマニアのみだけだし。。)
マラソンや駅伝は道路を贅沢に1車線封鎖して、街を駆け抜けます。
坂があり、橋があり、風が吹き、山があり。。
ロードを掛ける事で生まれる「舞台装置」が、ただ走ってるだけのランナーの映像に「演出」を与えるのです。
競技としての最初の駅伝は、1917年4月27日に行われた「東海道駅伝徒歩競走」とされています。
関西組と関東組に分かれ京都の三条大橋を出発し、東京の上野不忍池(しのばずのいけ)までの23区間、約508kmを昼夜問わず走り抜けるというとんでもない企画でした。
この時の関東組のアンカーはあの金栗四三(かなくりしそう)そのです。
この「金栗四三」という人物、覚えておきましょう。
日本のレジェンドランナーにして、なんと来年のNHK大河ドラマ「いだてん」の主人公です。
日本マラソン界の父がこのタイミングで大河ドラマの主人公に抜擢されることに嬉しさを感じています。
閑話休題。
駅伝という言葉自体は、日本書紀にも記載されているほど古いものとの事。
首都と地方の間の道路網に30里(約16km)毎に置かれた中継所のことを「駅」といい、ここに宿泊施設や人、馬を配置していた。
駅に朝廷の使者が到着すると、次の駅まで乗り継ぎの馬を用意する仕組みが整っており、この制度を「駅制と伝馬制」あるいは「駅伝貢進」といったそうです。
へーって感じですね。
これからの駅伝シーズン、家族でテレビを見るときにこれを披露すれドヤれますね。
日本の主要な全国規模の駅伝大会(エリート)向けは以下の通りです。
全日本実業団対抗駅伝大会(ニューイヤー駅伝) 1/1
出雲駅伝 10/8
全日本大学駅伝 11/4
東京箱根間往復大学駅伝 ※通称「箱根駅伝」 1/2-3
全国高校駅伝 12/23
全国中学駅伝 12/15
都道府県対抗男子駅伝(中学生~社会人) 1/20
全日本実業団対抗女子駅伝予選会(プリンセス駅伝)10/21
全日本実業団対抗女子駅伝(クイーンズ駅伝)11/25
全日本大学女子駅伝(杜の都駅伝)10/28
全国女子高校駅伝 12/23
全国女子中学駅伝 12/15
都道府県対抗女子駅伝(中学生~社会人) 1/13
※ちなみにこれは主なエリート向けの大会で地方予選を含めると30以上、一般の市民ランナーが出場する大会を含めると400以上ありあります。
え!?こんなにあんの?と思いますよね。
そうなんです。日本人は駅伝が大好きなんです。
「他人がただ走っているだけのところを見ていて、何が面白いの?」
この質問は箱根駅伝に限らず、駅伝やマラソンの中継を見ることが好きな人は、聞かれた方もいるかもしれません。
自分は過去に何度もか聞かれました。
他のスポーツでは、聞かれたことがありません。
皮肉でも何でもなく、純粋に不思議だ、という感じの聞かれ方です。
面白いんですよ。駅伝は面白いんです。
筋書きのないドラマがあるんです。
若者が必死こいて1秒を削り出す様に感動するんです。
それではメジャーな大会と、注目選手を紹介します。
※日本テレビHPよりスクリーンショットの画像
言わずもがなの駅伝界の超メジャー大会。
全ての学生ランナーの憧れであり、頂点に君臨する大会です。
毎年正月の1月2日が往路、1月3日が復路となっており、
往復路合計11時間近い放送時間という番組でありながら、
テレビ離れが進む現代においてもなお、30%近い視聴率を稼ぎ出すビッグコンテンツです。
毎年読売新聞グループ(読売新聞、日本テレビ、スポーツ報知)中継し、数々のドラマを世の中に伝えてきました。
正式には「関東学生陸上競技連盟東京箱根間往復大学駅伝競走」といいます。
ここで疑問に思ったアナタは鋭い。
そう、箱根駅伝は「関東学連」が主催するイチ地方大会、もっと言えば関東ローカル大会に過ぎないのです。
実質的な全国大会は11月に愛知~三重で開催される「全日本大学駅伝」となりますが、
箱根駅伝が最も有名な駅伝大会である理由は以下のことが考えられます。
来年でなんと95回目。第1回は1920年です。
第1回の参加はわずか4校(明治、早稲田、慶応、東京師範大学(現:筑波)でした。
学生ですから賞金なんて出ません。母校の名誉をかけて走るのです。
数多ある駅伝大会の中で東京大手町を発着とする大会は箱根駅伝だけです。
普段見慣れた東京駅、銀座、品川などを大学生が一瞬で駆けていく様は圧巻。
沿道の数も他の大会に比べて桁違いです。「十重(とえ)二十重(はたえ)の観客」とはよく言ったものです。
※日本テレビが公開している往路のコースはこちら
https://www.youtube.com/watch?time_continue=2&v=CGa08pf19VE
こちらも他の駅伝大会と大きく異なる存在です。
往路のハイライトである5区は、小田原から箱根芦ノ湖のゴールまで20km(高低差864m)を駆け上がる非常に特殊な区間です。
そのタフさから各大学から山登り適正があるメンバーが選ばれ、尋常ならざるスピードで登っていきます。
また、特殊区間であるがゆえに各選手の差が付きやすく、今まで多くの大逆転が生まれました。
近年歴代のMVPも多くが5区で排出されており、区間記録を更新した者には「山の神」という称号が与えられるのです。
まさに山という舞台装置が演出する箱根駅伝一番のポイントと言って良いでしょう。
※日本テレビが公開している復路のコースはこちら
日本でも海外でも大学対抗戦というのは大いに盛り上がります。
OB/OGは母校を応援したくなるものです。
特に正月は親戚の集まる時期。家族で別々の大学を応援、なんて家庭も多いですよね(うちもですが)
ちなみに元甲子園球児、という言葉よく聞きますよね。
どれくらいいるかというと、1年間で1300名近い「甲子園出場球児」が誕生します。
※夏の甲子園では47都道府県が参加、ベンチ入りは18名が上限なので約850人(概算)。
春の選抜は32チーム×18名=576名。
強豪校は春夏出ることもあるので、一部重複するとしても約1300人
箱根駅伝を走れるのは21校×10名=210名であることから、如何に少なかがわかります。
もちろん競技人口は野球サッカーよりも少ないのですが、アナタがもし箱根駅伝経験者に今後会うことがあれば、とても貴重な体験です。
その栄誉をたたえてあげて下さい。
(撮影:遠藤晃)
史上初の5連覇に向けて視界良好な青学はタレント揃い。
全10区に全て力のあるランナーを配置可能です。控えの層も厚く他大学なら十分エース級を有しています。
そんな中、注目は5区にエントリー濃厚な3年の竹石尚人選手。
昨年も5区を担当しながら途中に足がつるなどの不運も重なり区間5位とまずまずな成績でした。潜在能力はあの神野大地をも凌ぐクライマーとされており、山の5区では区間賞の大本命です。
(撮影:遠藤晃)
10年連続3位以内。
ここ3大会は全て2位というシルバーコレクターっぷりを見せる抜群の安定感を誇るのが東洋大学。
※NIKEのHPよりスクリーンショット画像
今年こそはと燃える東洋大学が誇るのが大学長距離界TOP3に入る相澤晃選手。
酒井監督の秘蔵っ子(同じ福島県の学法石川高校)としてメキメキと力をつけ、今年の出雲駅伝では区間2位、全日本駅伝は区間賞を獲得しており調子は上向き。
今年も華の2区へのエントリーが濃厚で区間上位は間違いないと踏んでいます。
駒大名物大八木監督率いる平成の駅伝王者といえば駒沢大学。
前回はまさかの13位に沈んだが、秋の予選会では他大学を寄せ付けずぶっちぎりの1位。
小粒ながら力のある10名のランナーを揃え、虎視眈々と上位を狙っています。
そんな中で注目は4年の片西景選手。
ユニバーシアード(学生のオリンピック)では過去に優勝経験もあり、
20キロ以上の長い距離に対応出来るスタミナが持ち味です。
超厳しいけど超優しい、大八木監督の監督車からの激にも注目です。
第1回から参加している早稲田大学は日本長距離界のエースを生んできました。
瀬古利彦、渡辺康幸、竹澤健介、そして大迫傑(すぐる)など。
その系譜を受け継ぐ超大物ルーキーが鳴り物入りで入部。
その名は中谷雄飛。
長距離の名門、長野県佐久長聖高校では全国制覇を経験。
伝統のエンジのタスキを胸に上級生を食って掛かることでしょう。
今年の順大は上位入賞こそ厳しいながらも、面白い存在になりそうです。
特に現役大学生の10000m最速タイムを持つ塩尻和也のスピードは強烈で、
2年時にはリオオリンピックに3000m障害で出場した実績もあります。
不動の二区日本人最速記録更新を狙っていることでしょう。
かつて高校駅伝上位入賞者を乱獲した世代ももう3年。
今年こそは3位以内を狙うべく東海大学は鼻息荒くしてることでしょう。
特に注目は館澤(たてざわ)亨次選手。
日本選手権1500mでは力のある社会人ランナーをねじ伏せ2連覇。
彼が長い距離に対応できた時、東海大学の上位入賞は確実なものとなるでしょう。
かつて亜細亜大学で総合優勝を成し遂げた岡田正裕監督率いる拓殖大学は今期好調。
外国人留学生のワークナー・デレセをキャプテンに据え、上位入賞を狙います。
オリジナル4に名を連ねる伝統の紫紺のタスキが2年ぶりに箱根路に帰ってきます。
スーパーエース阿部弘輝擁するメンバーたちの奮起に期待です。
※慶應箱根駅伝プロジェクトHPよりスクリーンショットの画像
立教、慶應という学生にも人気な大学が遂に箱根駅伝へ本格的に取り組むことになりました。
立教は元世界陸上代表の上野裕一郎選手を監督として迎え、来シーズンからのリクルートを開始するそうです。
慶應は元々短距離にはパワーのある人材育成に実績があり(山縣亮太、小池祐貴)何よりネームバリューは抜群です。
ただ、あの青学ですら原監督招聘後から本線出場まで5年以上の時間を要しました。
恐らくすぐに結果は出ないでしょうが、今後のこの2校には大いに注目したい所です。
上記大学名の隣にスポーツメーカーを記載しました。
各大学はそれぞれ、そのメーカーからウエアや最新のシューズの提供を受けています。
往復路合計11時間以上中継される箱根駅伝の宣伝効果は絶大。
駅伝は各スポーツメーカーの代理戦争と言っても良いでしょう。
※TBSのHPよりスクリーンショットの画像
箱根駅伝で活躍するスターたちは学生です。
4年で卒業した彼らは社会人となり、次のステップに移ります。
わずか一握り、いや一つまみのの優秀なランナーは「実業団」に所属することになります。
多くの選手は駅伝よりも距離が長い、フルマラソンに移行しますが、また彼らも駅伝を継続します。
その晴れ舞台が元日のニューイヤー駅伝なのです。
激寒の上州路を7区間100km駆け抜けます。
箱根駅伝は関東の大会ですが、ニューイヤー駅伝はその名の通り全国大会で
全国の強豪実業団に所属する選手がしのぎを削ります。
元日に雑煮食べながら観てるアレは箱根駅伝では無いのです。
「ニューイヤー駅伝」です。
・設楽悠太(HONDA) 前日本記録保持者。ひょうひょうとした表情で前のランナーを全員抜いていく様は圧巻
・井上大仁(MHPS) アジア大会金メダリスト。自己ベストは2時間6分代。速さと強さを兼ね備えたMHPSのエース
・服部勇馬(トヨタ) 先日の福岡国際マラソンのチャンピオン。力強いフォームで前を追う。
・中村匠吾(富士通) 駒大のエースが順調に育成成功。ベルリンマラソンでも4位に入る実力を見せた。
・旭化成
昨年のチャンピオンチーム。
伝統的に強いランナーが集まり、駅伝では無類の強さを誇るが現時点でMGC獲得者ゼロなのが気になる。
・ひらまつ病院
佐賀県を拠点にする医療法人。来年で2回目。
駅伝シーズンの最終戦といえば都道府県対抗駅伝です。
選手は中学生~社会人まで編成となり、その縦割りは各都道府県となります。
大学や企業のユニフォームを脱ぎ、郷里の誇りを掛けて走るのです。
男子では強いのはやはり長野県。長距離界の名門佐久長聖高等学校からは優秀なランナーが生まれ、そのOB達との連合チームは強烈です。
女子は伝統的に京都が強いです。毎年女子の開催地は京都であり地の利を活かしたノウハウと、地元の立命館大学、ワコールなどの強豪から選手が送り込まれます。
男女とも、アツくなる瞬間といえば、中学生→社会人へのタスキ渡しです。
先輩のお兄さん/お姉さんランナーに1秒でも早くタスキを渡そうと、
ほぼ半泣き状態でゴールに駆け込んできます。
その中学生の肩や頭をポンポンと叩いてタスキを受け取り、颯爽と走り出す様にグっときます。
今年は男子は1/20、女子は1/13です。
要チェックですね。
駅伝はエリートだけのもの?
いえいえ、今は数多くの市民ランナーが参加できる駅伝大会が開催されています。
個人競技のマラソンをチームスポーツへ鮮やかに昇華させた近年のプロモーションは見事でした。
辛く苦しい駅伝というイメージを「リレーマラソン」という爽やかなものに変えた功績は素晴らしいと思います。
その本質は1秒でも早く次走者に繋げるという意味ではエリートの駅伝と変わらないのですが、最近はみんなで楽しく走ることが出来るイベントとして定着しつつあります。
味の素スタジアムや神宮球場など、普段は入ることが出来ないピッチに入ることができるし、フードエリアの設置やタレントを呼んだりして一日中楽しめるイベントです。
一人ででなければエントリー代は基本は割り勘。3000円ほどです。
リレーマラソンの魅力はこちらの記事にまとめられていますのでぜひご覧ください!
主に10~4月まで多くの大会が実施されています。
ぜひ、参加をご検討下さい!
大会はこちらのサイトから探すことができますよ。
以上、今回は「駅伝」にフォーカスして魅力をお伝えさせて頂きました。
テレビ鑑賞時になにか一つでもお役に立てれば幸いです。
次回は今注目の男女の短距離界の最新事情についてレポートします。