バランスのとれた大胸筋を作るには大胸筋全体の筋肉をしっかりと鍛える必要があります。
特に大胸筋を鍛える上で意識しておきたいのが大胸筋の内側です。実は大胸筋の内側は他の部位の筋肉と比較しても鍛えづらいという声が多いのです。
そこでこの記事では、大胸筋の内側が鍛えにくい理由や、効率的に鍛える方法を解説します。
フィジーカー 栗原強太
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湘南オープンメンズフィジーク172cm以下の部で5位入賞したフィジーカー。体脂肪率は1桁。複数のジムを掛け持ちして日々トレーニングに励む。 |
目次
大胸筋は、一般的に胸付近に位置する筋肉のことをさします。
大胸筋はさらに「大胸筋内側」「大胸筋上部」「大胸筋下部」と細分化することができます。
そこでまずは大胸筋の各部位の役割、特徴などをまとめましたので解説します。
大胸筋の内側は専門用語で内水平屈曲と呼ばれる動作のときに使われる筋肉です。
内水平屈曲とは腕を内側に寄せる、入れる動作などを表す用語です。
腕を内側に寄せる動作とは、具体的に説明すると手を合わせる(いただきますのあいさつや合掌など)といった動きが該当します。
大胸筋の内側は胸の中心周りの筋肉を構成しており、左右に位置する大胸筋とのメリハリをつける役割も担っています。
そのため、大胸筋の内側が鍛えられていない方は、谷間ができずなだらかな丘のような形になりやすいのが特徴です。
大胸筋の上部は上腕部から鎖骨部分にかけて接続している筋肉であり、筋繊維は斜め上に伸びているという特徴があります。
よって大胸筋上部は腕を斜め上に上げたり、真上に上げたりする動作のときに必要な筋肉です。
日常生活の中ではバンザイや背伸びを行うときに用いられます。
ちなみに首周りとのメリハリをつけたい方などは、大胸筋上部を鍛えることが推奨されています。
前述のように大胸筋上部は筋繊維が斜め上に伸びているため、効率的に鍛えるには体に角度をつけるトレーニング法を実践する必要があります。
胸の中心付近一帯から二の腕のやや肩側寄りの筋肉を構成するのが大胸筋の下部です。
大胸筋下部は腕を内側に入れたり、上昇した腕を下におろしたりする際に必要な筋肉です。
キレイな大胸筋を手に入れたい方などは、大胸筋下部のトレーニングを推奨されることが多いです。
これは大胸筋下部を鍛えることで腹筋と胸筋の間に美しいメリハリがつくためです。
ちなみに大胸筋下部を効率的に鍛えるには、肩を固定し、腕を前方に押し出す動きが取り入れられたメニューを取り入れるのがおすすめです。
最近はキレイなバストを維持する目的などで、女性も大胸筋の内側を鍛えたいという方が増加傾向にあります。
しかし、実際に大胸筋を鍛えている方ならわかると思いますが、大胸筋の内側を発達させるのは他の部位よりも難しいとされています。
ではなぜ大胸筋の内側の筋肉は成長させづらいのか?ここではこのような疑問を抱える方向けのお役立ち情報を解説します。
大胸筋のトレーニングを始めると、大胸筋外側(腕を外側に広げる動作のときに使われる筋肉)は短期間で成長を実感しやすく、反対に内側には何ら変化が見られないと悩む方が多いです。
大胸筋外側というのはひとつの場所に筋肉が集中しており、筋肉の密度が高くなっています。一方の大胸筋内側は筋肉が上部、中部、下部に分散しており筋密度が低い状態です。
一般的に筋肉の密度が高い部位を鍛えると見た目的にも成長を実感しやすいですが、密度が低い箇所は筋肉が成長していても視覚的な変化を感じるのは難しいです。
そのため、多くの人が「あれ?何か内側ってまったく成長していないように感じる…」などの疑問や不安を抱えることになります。
また前述のように大胸筋内側は腕を内側に寄せる動作のときに必要な筋肉です。
腕は日常生活においてどちらかといえば外に広げたり、前に伸ばしたりすることのほうが多いため、大胸筋内側の筋肉の使用頻度は低いです。
このようなことも大胸筋内側の筋肉が成長しづらい一因になっているといえるでしょう。
前述のように大胸筋の内側は見た目的に確かな効果を実感しづらいため、内側のみに効率的な負荷をかけられるトレーニングを希望する方は多いです。
しかし、残念ですが大胸筋の内側のみを鍛えるのは基本的に不可能です。
筋肉はひとつの部位を動かすと、その周辺にある筋肉も連動して動きます。たとえばですが、大胸筋内側の場合は前鋸筋(ぜんきょきん)と呼ばれる、肩甲骨を前に押し出すときに使われる筋肉などと連動しています。
つまり大胸筋内側の筋肉を使うと自然と周囲の筋肉も動くことになるため、大胸筋内側のみに負荷をかけるのは不可能ということになります。
しかし、筋トレなどには「特定の部位を効率的に鍛える」といった概念は存在しますので、大胸筋内側に高負荷をかけられるメニューを実践し、より短期間での成長を促すことは可能です。
大胸筋の内側を鍛えるトレーニング法は数多くありますので、現在内側の筋肉に関する悩みを抱えている方は、このあとご紹介する筋トレメニューを参考にしてください。
大胸筋内側の筋肉は外側よりも鍛えづらく、筋トレ初心者の方などの場合は鍛え方で悩むことも少なくありません。
ここではこのような悩みを抱えている方に向けて、大胸筋内側を鍛えるときに意識しておきたいポイントなどを解説します。
すでに大胸筋内側の筋トレやトレーニングを実践しているにもかかわらず、思ったような効果が得られない方は一度トレーニング内容を見直したほうがよいかもしれません。
前述のように大胸筋は上部、内側(中部)、下部に分かれており、どこを鍛えたいのかによっても適切なトレーニングメニューが異なります。
そのため、大胸筋内側を鍛えたいのに成果が出ない場合は、他の部位を鍛えるときに用いられるメニューを実践している可能性があります。
これでは成果がまったく出ない、もしくは効果を得るまでに相当な時間を要することになります。
よって現在大胸筋内側を鍛えたいという方は、大胸筋内側に効率的な負荷をかけられるメニューを取り入れるようにしましょう。
以下に大胸筋の代表的なトレーニング種目、主に鍛えられる部位を記載した表を作成しましたので参考にしてください。
部位 | 効率的に鍛えられるトレーニングメニュー |
内側(中部) |
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上部 |
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下部 |
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全体 |
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ご覧のように大胸筋を鍛えるトレーニングの種類は非常に豊富です。
各メニューは強い負荷をかけられる部位がそれぞれ異なりますので、内側を徹底的に鍛えたいという方は「内側(中部)」「全体」の枠に記載されているメニューを優先的に行うとよいでしょう。
適切なトレーニングを行っても一向に効果が現れない方は、次の対策にネガティブワークを行うことを推奨します。
ネガティブワークとは簡単に説明すると、筋肉を伸ばしながら微細損傷を誘発させる動作のことを指します。
たとえばですが、筋トレの代表的な動作のひとつにベンチプレスを上に持ち上げ、下におろすというものがあります。この上に持ち上げる動作のことをポジティブワーク、そして下におろすときの動作をネガティブワークといいます。
ネガティブワークは持ち上げられた状態のウエイトに対抗しながらおろす動作のことを指し、筋肉の繊維に小さな損傷を発生させます。
効率的な筋肥大を促すにはこの筋肉への小さな損傷が重要な要素となるため、トレーニングによる効果が得られない方には、しばしばネガティブワークの実践が推奨されています。
特に筋トレ初心者の方などの場合は、ウエイトを上に上げる動作に気を取られがちであり、おろすときの動作がおろそかになる傾向があります。
そのため、大胸筋内側が思ったように鍛えられない場合は、ネガティブワークの導入も検討しておきましょう。
ネガティブワークの基本的なやり方ですが、ウエイトを上げる時間よりもおろす時間を長くすることです。
具体的にはベンチプレスであれば「2秒で上げて、3秒かけておろす」といったやり方です。
またトレーニングをサポートしてくれる方がいる場合は、ウエイトを上げるのを補助してもらい、下におろすときは自分の力のみで行うといったやり方もあります(ウエイトを自力で上げて、おろすときに補助するやり方もOK)。
いずれにせよ普段の筋トレではおろそかになりがちなポイントに力を入れるため、慣れるまではゆっくりと進めていくことをおすすめします。
短時間で効率的に狙った部位に負荷をかけたい場合は、ジャイアントセット法と呼ばれるトレーニングを取り入れてもよいでしょう。
ジャイアントセット法とは筋トレのセット方法のひとつであり、ひとつの部位に対し、異なるトレーニングを4種目以上インターバルなしで行うものです。
たとえばですが、大胸筋内側であれば「ノーマルプッシュアップ→デクラインプッシュアップ→ナロ―プッシュアップ→膝つき腕立て伏せ」のメニューを連続で行うようにします。
ジャイアントセット法のメリットはインターバルの時間がないため、トレーニングの時短が可能ということ、そして1種目ずつ行う通常トレーニングよりも強い負荷をかけられることです。
メカニカルストレス、ケミカルストレスの2つの刺激が筋肥大を効率的に起こしますので、筋肉の成長が実感できない方などには適した方法といえるでしょう。
ただし、ジャイアントセット法は通常よりも強い負荷がかかりますので、筋肉がまったくついていない筋トレ初心者の方が行うには不向きです。この方法を実践する場合は、ある程度筋肉がついてから行うようにしましょう。
大胸筋内側の基本や特徴を把握できたら、実際にトレーニングに取り組んでいきましょう。
まずは筋トレ初心者の方にもおすすめできる大胸筋内側を鍛えられる自重トレーニングを3つまとめましたのでご覧ください。
手の形から別名「ダイヤモンドプッシュアップ」とも呼ばれているナロープッシュアップ。
この筋トレは本来三角筋(肩くびれなどを作りたいときに鍛える筋肉)をアップさせる場合に取り入れるメニューですが、実は大胸筋内側にも効率的な負荷がかかるようになっています。
そのため、大胸筋内側と同時に腕の筋肉を成長させたいという方にもおすすめのメニューです。
<参考動画>
ナロープッシュアップは手幅を短くすることで、大胸筋内側に負荷をかけていきます。
手幅が短くなればなるほど強い負荷がかかるため、効率的に鍛えたい方は手の幅を狭めて行うのがポイントです。
逆に筋トレ初心者の方などは、慣れるまでは若干広い手幅で行うようにしましょう。
女性や筋トレ初心者の方がまず取り組んでほしいのはノーマルプッシュアップです。
これは一般的な腕立て伏せのことであり、主に大胸筋外側や内側の筋肉を鍛えることができます。
厳密にいえばノーマルプッシュアップで負荷をかけられるのは外側が中心ですが、内側にも多少の負荷がかかります。
そして大胸筋を鍛える上では最も基本的な自重トレーニングとなるため、筋肉を鍛えるのが初めてという方にはぜひ実践してもらいたいメニューでもあります。
<参考動画>
ノーマルプッシュアップを行うときは体を沈めるときはゆっくり、起こすときは素早くの流れを意識しておきましょう。
前述のようにノーマルプッシュアップは通常の腕立て伏せです。
そのため、やり方を覚えてしまえば他のメニュー(応用メニュー)にも活かすことができますので、初心者の方は回数よりも正しいフォームで行えているかといった点を重視してください。
通常の腕立て伏せ(ノーマルプッシュアップ)では負荷が強すぎるという方は、膝をついたバージョンの腕立て伏せを実践してみましょう。
膝つき腕立て伏せは他のプッシュアップよりもかかる負荷が少ないですが、正しいフォームを意識して取り組むことで、間違ったフォームの筋トレよりも効率的に大胸筋内側を鍛えることができます。
<参考動画>
膝つき腕立て伏せを行うときは、胸を床に沈めていくイメージで行うようにしましょう。
ときどき胸と一緒にお腹も落ちていく方がいますが、このようなやり方は狙った部位に負荷をかけられなくなるだけではなく、ケガの原因にもなりますので注意が必要です。
自重トレーニングの負荷に慣れてきたらダンベルを使ったメニューも取り入れていきましょう。
ここでは大胸筋内側を効率的に鍛えられるダンベルトレーニングを3つご紹介します。
大胸筋に対して縦方向への刺激を加えられる数少ないメニューのひとつがダンベルプルオーバーです。
ダンベルプルオーバーは大胸筋内側だけではなく、背筋や上腕三頭筋にも負荷をかけることができるため、一度に複数の筋肉を鍛えたいといった方にはおすすめです。
<参考動画>
ダンベルプルオーバーを行うときは、ムリなく支えることができる重さのダンベルを使うようにしましょう。
また、最初は両手で1つのダンベルを持つ形から始めていき、慣れてきたら片手のみのメニューに切り替えていく方法もおすすめです。
大胸筋の仕上げトレーニングにも用いられるダンベルフライ。
ダンベルの重さを利用して、大胸筋の内側や外側に刺激を与えていくトレーニング法となります。
<参考動画>
ダンベルフライで効率的に負荷をかけるには、ダンベルを持ち上げたときに大胸筋内側に寄せるように意識しておくことです。
ちなみにこのトレーニングはダンベルを持ち上げる動作を伴いますので、落下によるケガをする恐れもあります。
そのため、ダンベルの重量はムリのない範囲で徐々に上げていくようにしましょう。
低い負荷で立ったまま取り組めるトレーニングでもあるダンベルアダクション。
正しいフォームで実践すれば大胸筋内側はもちろんのこと、下部の筋肉も鍛えることができます。
ダンベルメニューの中では手軽に取り入れられるため、女性や初心者向けです。
<参考動画>
ダンベルアダクションは左右10回ずつ、計3セットが目安となります。
このトレーニングはダンベルを内側に振る動作がありますが、このときに肘を曲げすぎないように注意してください。
最後にジムなど本格的な施設で取り組むことができるマシンを使ったトレーニングメニューをご紹介します。
マシンを使ったトレーニングは自宅ではかけることができない強度な負荷をかけられるのが魅力的ですが、ケガなどをする恐れもありますので、安全性を重視して正しいフォームで取り組むようにしてください。
大胸筋の仕上げトレーニングに最適な単関節種目でもあるマシンチェストフライ。
大胸筋内側の他にも上部にも効率的な負荷をかけることができます。
マシンチェストフライは基本的に大胸筋の内側のみに負荷をかけることを目的としたトレーニングです。
そのため、セットポジションを整えたら大胸筋の収縮を意識しながらグリップを閉じていくようにしてください。
ジムなどの施設でできるトレーニングの中では最もポピュラーな種目ともいわれているマシンチェストプレス。
動作が比較的簡単ですので、ある程度の筋トレ実績などがある方であれば取り組みやすいメニューのひとつでもあります。
チェストプレスは自身に最適な負荷を調節することができますので、15回ギリギリできそうな負荷に設定して行うようにしましょう。
疲れなどで肩が上がってくると、大胸筋内側に負荷がかかりにくくなるため、肩の位置は常に意識しておくことが大切です。
重りのついたケーブルを引っ張ることで、大胸筋内側に刺激を与えていくケーブルクロスオーバー。
ケーブルを引っ張るときに腕が中に入るため、大胸筋内側を効率的に鍛えることができます。
ケーブルクロスオーバーは大胸筋の内側だけではなく、外側など広範囲に渡って刺激を与えることができるトレーニングメニューです。
そのため、腕の位置や引っ張り方によっては大胸筋内側以外の箇所に負荷をかけてしまう恐れがあります。
ケーブルクロスオーバーで大胸筋内側に負荷をかけるには、胸の前に腕がくるように引っ張ることですので、常に意識しておきましょう。
ジムでマシンを使ったトレーニングも魅力的ですが、一般の方は毎日ジムに通う時間や資金を確保するのは難しいです。
このような方におすすめしたいのがプッシュアップバーの活用です。
プッシュアップバーとは腕立て伏せなど、複数の筋トレメニューの効率性アップが期待できるグッズのことを指します。
使い方も非常に簡単なのがプッシュアップバーの大きな魅力です。
たとえばですが腕立て伏せで大胸筋を鍛えるときは、両手でプッシュアップバーのグリップを握るだけです。
プッシュアップバーを利用することで得られる主なメリットは、次の3点です。
プッシュアップバーを使うと通常よりも可動域が広がるため、大胸筋の内側はもちろんのこと、胸の筋肉全般に効率的な負荷をかけやすくなります。
またプッシュアップバーはグリップが地面よりも少し高い位置にありますので、通常よりも深い腕立て伏せが可能です。
数ある筋トレ器具の中でも非常にシンプルな構造となっているため、初心者の方でも問題なく取り扱うことができます。
大胸筋内側はただでさえ鍛えづらい部位といわれていますので、心配な方はひとつ持っておくとよいでしょう。
今回は大胸筋の内側の基本情報や鍛え方などを解説しました。
大胸筋内側は外側など他の部位と違って、見た目的な変化が現れにくかったり、鍛えるのが難しかったりなどの一面があります。
そのため、多くの方が大胸筋内側のトレーニング方法などで悩んでいます。
この悩みを解消するには大胸筋内側に高い負荷をかけられるメニュー、ネガティブワークやジャイアントセット法などを実践するのがおすすめです。
現在、大胸筋内側に関する悩みや疑問を抱えている方はぜひ参考にしてください。