毎日のようにジムに通って筋トレをしている人の中には、運動の後のアルコールが楽しみな方も多いのではないでしょうか。
お酒が大好きだから毎日のアルコールは辞められないという人もいるでしょう。
しかし、せっかく行なっている筋トレが、お酒を飲むことで台無しになっている可能性が高いということを知っていますか?
そこでこの記事では、筋トレとアルコールの関係について解説していきたいと思います。
筋トレも頑張りたいけれど、お酒は辞められないという人必見です。
佐藤樹里(管理栄養士)
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管理栄養士。アスドリファクトリー代表。フィットネスジムでの運動・栄養指導経験後、約1年海外移住をし、現地のレストランでシェフと共に働く。現在はスポーツイベント開催、アスリートへの栄養講座、栄養個別サポートを通算1000人以上に行う。 |
目次
飲酒はいったい筋肉にどのような悪影響を与えてしまうのでしょうか。
まずは、飲酒が与える筋トレへの悪影響について解説していきます。
お酒を飲むことで摂取カロリーが増えると、体脂肪がつきやすくなります。
アルコール自体は、飲酒するとすぐに分解されエネルギーとして使われるため、糖質の少ないアルコールだけを飲む場合は、それほど心配はいりません。
しかし、ビールやカクテル、酎ハイなど糖質の多い種類のアルコールを飲んだり、糖質や脂質、塩分の多いお酒に合う食事やおつまみを一緒に食べると、どうしても摂取カロリーが多くなってしまいます。
すると、知らない間にカロリーオーバーとなり体脂肪がつきやすくなってしまうのです。
お酒を飲まないと寝付けないという人や、ぐっすり眠れないという人は多いかもしれません。
しかし、それはそう思い込んでいるだけで、実はお酒を飲むことで眠りが浅くなってしまいます。
ではなぜお酒を飲むと眠りが浅くなってしまうのでしょうか。
それは、二日酔いの原因となるアセトアルデヒドという物質が正しい睡眠のサイクルを乱してしまうからです。
筋トレ後に良質な睡眠をとり、成長ホルモンの分泌を促すことは、筋肥大のためには欠かせません。
しかし、飲酒によって慢性的に眠りが浅くなってしまうと、体はもちろん脳の疲労も溜まりやすくなってしまい、筋肉をつけるために重要となる質の高い睡眠がとれなくなってしまいます。
筋トレで効率的に筋肉を鍛えていくためには、次の3つを正しく行なうことが大切です。
傷のついた筋肉は、回復してさらに成長することができるようになります。この筋肉が成長していく過程は「超回復」と呼ばれています。
お酒を飲むと傷のついた筋肉の繊維を修復させるタンパク質やビタミンが、アルコールを分解するために肝臓で使われてしまいます。つまり、筋肉の修復に必要な栄養素が少なくなってしまうのです。
さらに飲酒によって眠りが浅くなると、筋肉が成長していくための質の高い睡眠を得られなくもなり、筋肉は回復と成長の機会を逃してしまうのです。
お酒が筋トレにどのような悪影響を与えてしまうのかという部分について解説してきましたが、いかがだったでしょうか?
想像していたものとは違っていたかもしれません。
ここからは、より飲酒が筋肉に及ぼす影響を理解したい方へ向けて、筋トレ後の飲酒が体内にどんな反応を起こすのかを詳しく解説します。
※筋トレ後にどうしてもお酒を飲みたい場合の対処法などが知りたい方はこの章を読み飛ばして先に進んでください。
筋トレを行ったり、タンパク質を摂ると「タンパク質キナーゼ(mTOR)」という筋肉の合成を促すためのシグナル伝達経路が活発になると言われています。
筋トレ後は、タンパク質をしっかり摂ることが良い筋肉をつけるために必須と言われているのは、筋肉の合成を促すことのできるシグナル伝達経路を活発にすることもひとつの理由です。
しかし、飲酒をすることで本来筋肉のために使われるタンパク質は、肝臓でアルコールを分解するために多く使われてしまいます。
そのため、タンパク質キナーゼ(mTOR)の活動が低下または、活動することができなくなり、せっかく筋トレを行っても筋肉がつきにくくなってしまうのです。
摂取したタンパク質は、テストステロンというホルモンが分泌されることで、筋肉の合成に活用されます。
筋肉を作るうでとても重要となるテストステロンというホルモンは、アルコールを摂取することによって本来分泌するはずの量よりも分泌量が少なくなってしまうと言われています。
そのため、同じ筋トレをしてタンパク質を摂取しても、アルコールを摂取している人としていない人とでは筋肉のつき方に大きな違いが生まれてしまうのです。
アルコールを摂取すると、私たちの体の中では、コルチゾールというホルモンが多く分泌します。
このコルチゾールは、血糖値をコントロールする働きを持っています。
アルコールを摂取することで必要となる糖を生み出す必要が出てくると、コルチゾールの分泌量が増え、筋肉を分解させてしまうこともあるのです。
コルチゾールの分泌量が飲酒によって増えてしまうと、それだけせっかく筋トレをしてつけた筋肉が使われ、体全体の筋肉量を低下させてしまうのです。
お酒を飲んだ次の日になぜか筋肉痛になっていたという経験はありませんか?
特別運動をしている訳でも、筋トレをしている訳でもないのに飲酒後に筋肉が痛いというのには、お酒と深い関係があるんです。
どんな関係があるのかを見ていきましょう。
二日酔いで筋肉痛になる人の中には、「急性アルコール筋症」という、大量にアルコールを摂取することで筋肉が破壊されてしまう症状を起こしてしまう人がいます。
筋肉痛のような痛みといっても、筋トレなどで起こる筋肉痛とはまったく違い、アルコールが体の中に入ることで筋繊維が萎縮したり、破壊されることで痛みを発症してしまうのです。
この痛みを筋肉痛と勘違いしてしまう人が多いです。
筋トレからくる筋肉痛の場合は、痛みが治まり回復してくると筋肉が増えるのですが、急性アルコール筋症の場合は、筋肉は増えることはありません。
飲酒の度に筋肉痛のような痛みを感じるという場合は、慢性アルコール筋症を発症している可能性が高いです。
最悪の場合、筋肉が壊死することもあるので、お酒を控えるまたは飲まないようにしましょう。
自分が急性アルコール筋症かどうかは、
をチェックしてみましょう。
中には、お酒を飲んだあとに筋肉痛のような痛みではなく、体のどこかに寝違えたような痛みを感じることもあります。
このような痛みの場合は、お酒を飲んでいる時の姿勢が悪かった可能性が高いです。
例えば、
など、どこかに重心をおいたまま長く同じ姿勢でいた可能性が高い場合は、それほど深刻に考える必要はありません。
ここまで、お酒と筋肉の関係をお伝えしてきました。
ここでは、お酒を飲んだあとの体はどうなっていくのか、お酒に強い人と弱い人がいるけれど何が違うのかなど、お酒と体の反応についてお伝えしていきます。
私たちの体は、お酒を飲むとアルコール成分が胃と腸から血液に吸収されて肝臓へと運ばれていきます。
その際に、約9割がADHという酵素でアセトアルデヒドと呼ばれる成分へと代謝されてしまいます。
アセトアルデヒドは、頭痛や吐き気、酔うなどの飲酒独特の体の症状を起こす原因となるものです。
アセトアルデヒドは肝臓の中の酵素によって酢酸に変えられ、再び血液の中へと流出し、尿となって体外へと排出されていくこととなります。
アルコールの一部は、胃と腸に吸収されず、汗や呼吸によって排出されることもありますが、基本的には、体の中で異物として扱われ肝臓の中で分解・代謝されていくのです。
そのため、肝臓がフル稼働することとなり、本来体に必要となる栄養素もアルコールの分解のために使われてしまうのです。
同じ量のお酒を飲んでも、すぐに酔ってしまう人、大丈夫な人など様々ですよね。
お酒の強さは、その人の体質が大きく影響しますので、お酒をたくさん飲んで慣れている人の方が強いということは決してありません。
お酒の強い人は、
など、体の中にアルコール成分が入ってもすぐに分解できる人で、年齢や性別、体格によっても違いがあるとも言われています。
そして、アルコールの強さによって筋トレの効果にも違いが生まれます。
アルコールをすぐに分解することができる体質の人は、筋トレ後にお酒を飲んでもそれほど筋肉の増加量に違いは生まれないと言われています。
しかし、もともとアルコールに弱い人は、筋トレ後の飲酒は筋肉がつきづらい以上に、体に大きな負担がかかってしまう可能性もあるので注意が必要です。
これまでご紹介したように筋トレとアルコールは相性が悪いです。
体質もあるので必ずしも筋トレ後の飲酒が良くないということはありませんが、できれば筋トレ後の飲酒は控える方が良いでしょう。
また、闇雲に筋トレのために飲酒を控えるというのではなく、自分の体がアルコールにどのくらい耐えられるのかも一度冷静に様子をみてみましょう。
飲んでいる時は楽しいけれど、次の日はいつも二日酔いで辛くて仕方がないという場合は、そもそもアルコールが体に合っていない可能性が高いです。
健康のためにもアルコールを控えることをしっかり考えてみてはどうでしょう。
筋トレをして筋肉をつけたい、痩せたい!という場合は、お酒は控えるべきですが、どうしても仕事上、お酒を飲まなくてはいけないという場合もありますよね。
また、お酒が好きだからたまには飲みたいという人もいると思います。
どうしてもお酒を飲みたいというときのために、どうすれば筋トレと両立することができるのか、その方法について紹介していきます。
筋トレに悪影響が出ない程度の量(約500ml)を飲むようにすれば、基本的には問題がないと言われています。
ただし、アルコールの量自体が少なくても、アルコール度数が高いものは注意が必要です。
また、この悪影響の出ない量というのはあくまでも平均的なものなので、お酒への耐性はひとりひとり違います。
お酒を飲む場合は、自分の適量を知ることが一番大切です。
お酒の種類も選んで飲むようにしましょう。
お酒には、ビールや日本酒、ワイン、ウイスキーに焼酎、カクテル、サワーなど種類が色々ありますよね。
お酒の種類を選ぶときには、糖質の少ないものを選ぶようにしましょう。
そうすることで、体脂肪を増やすことを防ぐ効果があります。
糖質の少ないお酒は、焼酎、ウイスキー、ハイボールなどで、ウイスキーやジン、ラムなどの蒸留酒は糖分が含まれていないのでおすすめです。
ただし、これらのお酒はアルコール度数がとても高いので、量を加減することも重要となります。
お酒は量や種類に関係なく、できれば飲まないにこしたことはありません。
しかし、お酒が好きだったり、お付き合いがあれば完全にお酒を断つのは難しいですよね。
そんなときは、お酒を飲むタイミングをしっかり自分の中で決めるようにしましょう。
筋トレを行なう前日、そして筋トレ後の当日は控えることが大切です。
例えば、週に2日ジムで筋トレをするという人の場合、火曜日と木曜日に筋トレするとします。
その場合は、
という風に、1週間のうち月曜日から木曜日まではお酒を飲まないと決めるとわかりやすいですよね。
週末は飲み会などが入る可能性もあるので、金曜日、土曜日は筋トレをあえて行わないというのもひとつの方法です。
筋トレを頑張りたいから大好きなアルコールは我慢すると決意した人は、「チートデイ」を設けてみることをおすすめします。
チートデイとは、週に1日だけ大好きなアルコールを飲んでも良いという「ご褒美の日」を設定するという意味です。
お酒が飲めないということが精神的ストレスにならないようにしたり、途中で挫折してしまわないようにするために、あえて飲んでも良い日を設定するのです。
チートデイは、週に1度、曜日という風にきっちり決めることが大切です。
飲み会があると事前にわかっていれば、その日をチートデイにするとお付き合いも上手にこなしながら筋トレに取り組むことが可能となるのでおすすめです。
お酒を飲むときには、ついついおつまみも食べてしまいますよね。
お酒と一緒に食べるものは、低カロリーなものを意識して選ぶようにしましょう。
例えば、肉類なら鶏のむね肉やささみ、サラダ類、豆腐や枝豆などを選ぶようにすると、タンパク質やビタミンを多く摂ることができるようになります。
また、水やお茶などの水分を多めに摂るようにすると体への負担も最小限に留めることができます。
サプリメントを利用して肝臓の働きを助けたり、ビタミン類など不足しがちな栄養素を補給するという方法もあります。
しかし、サプリメントを摂っているからいつも以上にアルコールを分解してくれるだろうし、そんなに気にせずにお酒を飲んでも大丈夫、と過信してはいけません。
サプリメントは、あくまでも補助的に必要な栄養素を補うというもので、サプリメントをメインに摂れば良いというものではありません。
また、アルコールを摂取することで体や肝臓にかかる負担を軽減してくれるものでもありませんので注意してください。
筋トレとアルコールの関係について解説してきました。
お酒は筋肉に良い影響を与えないこと、体質によってはせっかく筋トレでついた筋肉が少なくなったり、筋肉を壊す可能性も否定できません。
お付き合い程度にたまに楽しむ程度にお酒は留めるようにすることが、筋トレにはもちろん健康にもベストだということを認識して上手にお酒と付き合っていくようにしましょう。
<参考文献>