前回は、私がフルマラソンを3時間20分以内で完走するために、5ヶ月間でやったことをレポートしました。
本記事では、マラソン大会1週間前から当日までの過ごし方についてレポートしていきます。
折角頑張ってきつい練習を乗り越えたとしても、本番で力を発揮できるわけではありません。
その時のコンディション、天候、アクシデントの有無など様々な要素がマラソンのタイムに影響します。
天候やアクシデントはどうにもしようがないですが、コンディションを整えることは誰にでも出来ます。
ここでは、私がベストコンディションで本番を迎えるために、心掛けたことをご紹介します。
目次
マラソン本番は練習よりも長時間運動をし、膨大なエネルギーを消費します。
単純計算で60kgの私が42.195km走った場合、60×42.195≒2,500kcalのエネルギーを消費します。
これは日本人の一日の平均摂取カロリー(1,800~2,200kcal)よりも多いのです。
つまり、いつも通りの食事をしてもガス欠時の自動車のようにレース中で動かなくなります。ここでは、エネルギーを効率良く体内に蓄える方法についてお伝えします。
カーボローディングとは、1.5~2時間以上続く競技(試合)で必要なエネルギー(糖質)を体内に蓄えるための食事法です。
フルマラソン現世界記録保持者でさえフルマラソンを完走するには2時間以上かかります。
私の周りでフルマラソンやハーフマラソンに出場する方は、皆漏れなくカーボローディングを実践しています。
カーボローディングのポイントは、大会3日前から食事全体のエネルギー比率の7~8割を糖質にすることです。これは通常の食事の糖質摂取量の3倍弱。
つまり、普段お米をお茶碗1杯食べている人は3杯食べれば良いのです。
しかし、普通はいきなり同じものを3倍も食べられないので、食事内容を工夫するわけです。
なお、糖質制限がある方は、糖質の過剰摂取にくれぐれもご注意下さい。
下表に高糖質の食べ物をまとめました。
この表から、我々が普段おやつで食べるカステラ、朝食で食べる食パン、お正月で食べるお餅が多くの糖質を含んでいるのがお分かり頂けると思います。
ようはお米の代わりにお餅、食パン、カステラを沢山食べれば良いのです。(ただし糖質が多くても、消化の悪い食べ物は控えましょう。)
特にお餅は腹持ちが良く、糖質の貯蓄に向いていることからオリンピックに出るようなエリートランナーにも重宝されています。私も大会直前の3日間は毎朝お餅を4切れ以上食べていました。
表1.主要な炭水化物に含まれる糖質量
大会中に尿意に悩まされ、たまらずトイレに駆け込むことはタイムを目指すランナーにとっては、何としても避けたい事態です。
混雑状況にもよりますが、感覚的にトイレに並んでから用を足すまでのタイムロスは5分~10分程度です。
フルマラソンでは普通の人が完走するまでに3~5時間かかるため、多くの人は我慢し切れずトイレに行きます。
私も12km地点でトイレに行く羽目になりました。大会直前にトイレを済ませるのは勿論、少なくとも大会3日前からは利尿作用のあるアルコール、コーヒー、お茶は避け、水やスポーツドリンクを飲むように心がけましょう。
特にアルコールは脱水作用もあるので、大会直前の飲み会での飲酒は厳禁です。
マラソンランナーはレースを走り切るのに必要なエネルギー(糖質)の殆どを当日の朝食で摂取します。
参考までに、私は切り餅6切れ、お赤飯1パック、バナナ1本を食べました。
個人差があるので、皆さんが普段食べているものをベースに、高糖質なものを取り入れましょう。
なお、消化しにくい(胃にかかる負担が大きい)食物繊維が多い野菜や利尿作用がある眠気覚ましのコーヒーは控えましょう。
朝食の内容もそうですが、朝食をとるタイミングも非常に重要です。
糖質を摂取して消化・吸収を経てエネルギーに変換するまでに3時間はかかると言われています。一般的にマラソン大会のスタート時間は朝の8時半~9時が多いです。(横浜マラソンも8時半スタートでした。)
逆算すると、5時半には朝食を食べ終わる必要があるので、5時には起床しないといけません。
5時起きというと、会社がある時よりも早起きです。ましてや普段寝坊することが多い土日に5時に起きるのですから、朝が弱い人にとっては一苦労です。
言わずもがな前日の夜更かしは控えましょう。因みに私は普段から土日でも6時に起きているので、難なく起きられました。
マラソン上級者は皆、口をそろえて大会30分前にカステラを1切れ食べると良いと言います。
これは言わば最後の糖質の追い込みです。カステラは前述の通り非常に高糖質の上、消化されやく(胃にかかる負担が小さい)、携帯性が良いです。
携帯性と聞いて意外かと思われると思いますが、重要なのです。
有名なシティマラソンは出場者だけで数万人、応援者も含めると数十万人規模です。極端な話、電車に乗ってからスタートラインに立つまでずっと満員電車の状態が続くわけです。
そんな人ごみの中で食事を済ませたいなら、なるべく持ち運びがいいものがいいですよね。カステラ1切れならサランラップに包んで簡単にどこにでも持っていけるのです。
当たり前のことですが、大会1週間前に無理して練習してもいいことはありません。
大してタイムは伸びず、故障のリスクだけ増えます。テスト前や大事なプレゼン前にほぼ徹夜で勉強/仕事して、翌朝寝坊するのと同じです。
練習を頑張ってきた人は自分を信じて、焦らずコンディション調整に集中しましょう。
思い通り練習が出来なかった人は、無理してあがこうとせず、タイムは二の次でレースを楽しみましょう。レースは沢山あります。(東京マラソンのような高倍率の抽選がある特別な大会は除きます。)足を壊して数ヶ月間ひもじい思いをするよりは、タイムを気にせず休憩エリアに設けられたご当地グルメを食べながらレースを楽しんだ方がいいですよね。
では、大会1週間前はどういった練習をすれば良いかについてご紹介します。
大会本番は緊張と周りの声援によって気分が高揚しアドレナリンが分泌されるため、練習時よりもペースが上がると言われています。
私の場合も直前に行った30km練習時よりも平均で10秒/km(1km当たり10秒)ペースを上げることが出来、目標を達成することが出来ました。
練習ではレースペースで走れなかったからと言って、焦る必要はないということです。
ジョギングペース(6分/km~6分30秒/km)で30分程度走れば十分です。1時間を超える練習は翌日に疲労を残すので避けましょう。
大会前日はコンディションを確認する意味で、5km程度ジョギングしましょう。
5kmでなく、例え2kmでも全く問題ないです。ここで重要なのは、距離やペースよりも当日と同じスケジュールで走ることです。
つまり、当日と同じ朝5時に起き5時半までに朝食を済ませ、8時半から走り始めるということです。
当日のスケジュールを体に覚えさせることで、心に余裕が生まれるのです。余裕がある人は走りながらフォームの確認や給水を行う動作のイメトレを行うと良いでしょう。
マラソンでは3~5時間ほぼ同じ体勢で走り続けるため、関節痛や筋肉痛に見舞われることが多々あります。
少々痛くなる位なら我慢すればよいのですが、足が攣って身動きが取れなくなってしまうと、タイムを狙うのは絶望的です。
そういった事態を未然に防ぐためにも直前のストレッチ、特に大会前日の就寝前30分と当日起床後30分のストレッチは効果的です。
私もストレッチで股関節周りと膝回りの関節をじっくりほぐしたことで、当日の関節痛や筋肉痛を抑えることが出来ました。
具体的なストレッチのやり方は、理学療法士・統合医療カウンセラーでいらっしゃる松木さんが執筆なさった「専門家が語る股関節ストレッチの極意とその効果とは。」をご参照下さい。
当日は朝が早いため前日は遅くまで予定を入れず早めに寝ましょう。6時間は寝た方がいいので、遅くとも11時には寝床に就きたい所です。
本気でタイムを目指すのであれば、マラソン会場近傍のホテルもしくは友達の家に前泊することをお勧めします。
※横浜マラソンの前日は横浜の友人宅に宿泊しました。
大会の開催場所が自宅から近ければ問題ないのですが、電車で2時間以上かかる場合は前泊するのがいいでしょう。
長く眠れるのと電車に乗る時間が短縮されるだけで体力的にも精神的にも楽になります。
ここでは横浜マラソン当日を振り返りながら、レース中に取り組んだことと反省点をお伝えします。
特に初心者に言えることですが、当日に気合が入り過ぎてスタートの1時間以上前に整列する人がいます。私からすれば全くの無駄です。
ほぼ半袖半ズボンで気温10℃以下の極寒で1時間待つことになるのです。完全に風邪を引きます。(笑)
スタートして30分以内に出走すれば失格にならないので(※ただし、大会ごとのルールを要確認)、ゆっくり集合してもいいのです。
実際、多くのAブロックの人(一番先頭に並ぶ速い集団)はスタート時間30分位前に私と一緒に駅から整列地点に向かっていました。
おまけ情報ですが、防寒具として100均のレインコートがお勧めです。軽くてかさばらないため、レース中に走りながらごみ箱に捨てることもできます。
大きな大会ほどそうですが、序盤5kmは渋滞するためレースペースで走れません。
ストレスと焦りを感じますが、人道的な観点から考えて、前の人をなぎ倒すわけにもいかないので仕方ないです。心を落ち着かせ、体力を温存するスタンスで冷静に走りましょう。
とは言えせっかちな私は人混みを極力避けるため、比較的空いている給水地点の反対側の脇道や縁石の上を走ったりしました。
縁石は足場が悪く転倒のリスクがあるため、お勧めはしませんが。(笑)
水分補給のタイミングには個人差があると思いますが、喉が渇いたと感じる前に水分を補給することをお勧めします。
私は序盤の10kmでは全く喉が渇いていなかったので、一度も給水を行いませんでした。その後は基本的に5km毎に給水を取りました。
後半10kmは気温が上がって来たので給水ポイント全て(2~3km毎)で取りました。
因みに、給水ポイントでは大体ミネラルウォーターとスポーツドリンクが紙コップで用意されています。走りながら片手でつかみ、頭を後ろにぐっと傾けて一気に飲むと立ち止まらずに済みます。紙コップを捨てる時は放物線を描くイメージでごみ箱を狙うとうまく入ります。
余談ですが、横浜マラソン当日は例年よりも暑く最高気温が21.5℃でした。
気温はタイムにダイレクトに影響します。横浜マラソンの優勝タイムも例年より3分弱遅かったと思います。
因みに、過去に気温とマラソン完走者のタイムの関係を調べたデータ1)では、普通のランナーは気温7℃の時にベストタイムが出るそうです。
トップ1%だけだと3.8℃が最適みたいです。これはペースが速いランナー程多くの酸素を摂取し発熱量が高くなるためらしいです。興味深いですね。
アミノ酸は、体内でブドウ糖に変換されることから、運動時のエネルギー源として重宝されます。
ランナーの多くは粒状もしくはジェル状のサプリメントをポッケに忍ばせて走っています。
私はかさばらず、一気飲みが出来るという理由から、味の素さんの「アミノバイタル®」GOLDを愛用しています。
スティック状のパッケージに粒状で入っており、給水地点直前で口に含み、水で流し込むのが一番効率的です。アミノバイタルを取るタイミングとしては、下記を推奨します。
・スタート30分前に1本(カステラと同じタイミングで)
・15km地点で1本(ペースで前後します)
・30km地点で1本(ペースで前後します)
理由としては、アミノ酸は吸収されるまでに30分かかるここと、摂取から2時間後に完全に消費されるからです。自分のペースを考慮し1~2時間毎に摂取しましょう。
個人差はありますが、多くの人はレース中に何かと体に違和感を覚えます。
特に30kmを超えてから急に足が重くなったり、脇腹が痛くなったりする人が非常に多いです。これが俗にいう30kmの壁です。
私も30kmを超えてから太腿が攣りそうになり、35kmを超えてからは更に脇腹が痛くなりました。何度も足が止まりそうなピンチが訪れましたが、私は下記の方法で自己暗示をかけることで乗り越えました。
①きつい時ほど前を向きに笑顔で走る
②道行く応援者とハイタッチし、元気をもらう
③自分の足を叱咤激励する
順追って説明します。
①は無理やり口角を上げ、カメラマンに笑顔で応えることで自分はまだ元気だと自分に言い聞かせました。また、疲れると足元を見がちになりますが、あえて前を向くことでフォームが正されペースが維持されます。
②は文字通り、できる限り多くの応援してくれる方とハイタッチすることで元気をもらいました。応援してくれる人に応えることは、マラソンの醍醐味だと思います。
③は40kmを過ぎて足が痙攣する瀬戸際に取った応急策です。具体的には、足を指さし大声で「足よ、止まったら終わりだ!」「意地を見せろ!!」「後1(1km)!!!」といった具合に叫び続けるのです。ゴールするまで絶えず叫んでいました。はたから見たらただの変人ですよね。(笑)しかし、これをやらなかったら間違いなく目標は達成出来ていなかったと思います。
結局なんだかんだ言って最後は根性勝負だなって思いました。嘘だと思った方、是非人目を憚らずにやってみましょう。(笑)
反省点としては12km地点で溜まらずトイレに駆け込んだことと、30km超えてからの足の痙攣です。
トイレ問題の原因は恐らく前日夜に飲んだレッドブルだと思うので、次回は水分補給のタイミングも含め、飲み物の管理を徹底したいと思います。
足の痙攣問題の原因は筋肉不足と塩分不足だと思うので、筋トレメニューの見直しと塩飴の準備を行いたいと思います。
ここまでマラソン大会1週間前の過ごし方から当日のレースの運び方までレポートさせて頂きました。
次回は今回の反省点を踏まえて、私が2019年3月に開催される東京マラソンでサブ3を達成するために、今行っている練習をレポートします。
因みに、横浜マラソンから一ヶ月後の非公式の大会で参考タイムながら3時間10分53秒で自己ベストを更新したので、今やっていることの効果を実感しています。
−そのほかのフルマラソン1週間前の過ごし方についての記事−
*2017年大阪マラソン優勝の木下選手が大会1週間前の過ごし方を解説!
パフォーマンスUP!マラソン大会1週間前~当日まで気をつけるべきポイント
*練習5カ月で3時間10分台を達成した市民ランナーが実践した大会1週間前の過ごし方!(本記事)
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