ハムストリングは上手く鍛えると脚力アップやスピーディーな動き出しなどの効果を得られるため、是非鍛えたい部位です。
しかし、鍛え方が分からずに、放置されている方も少なくないでしょう。そこで今回は、上手にハムストリングを鍛える筋トレやストレッチ方法をご紹介します。
フィジーカー 栗原強太
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湘南オープンメンズフィジーク172cm以下の部で5位入賞したフィジーカー。体脂肪率は1桁。複数のジムを掛け持ちして日々トレーニングに励む。 |
最初にハムストリングの役割について解説します。ハムストリングは太ももの後ろ(裏面)にある筋肉のことです。
太ももの後ろの筋肉は、一つの大きな筋肉ではなく複数(大別して3つ)の筋肉に分かれています。どのような特徴や役割・作用があるのかを説明しましょう。
太ももの後ろの筋肉を構成する(1)「半膜様筋」(2)「半腱様筋」(3)「大腿二頭筋」の3つをまとめてハムストリングと呼びます。
順に説明していきましょう。
左足を後ろから見た場合に、断面図で右奥と中央奥に見える筋肉です。坐骨結節(坐骨下部にある少し尖った部分のこと)から3分割されてそれぞれ、①脛骨内②筋膜③靭帯に繋がっています。主な働きとして、膝の曲げ伸ばしの特に「曲げる動作(屈伸)」をするのに必要な筋肉です。
左足を後ろから見た場合に、若干右よりの中央に位置する筋肉です。坐骨結節から伸びていて、膝裏の頚骨(内側顆)に接続されます。股関節を伸ばす(伸展)、膝の曲げ伸ばし(屈伸)・内側にひねる動き(内旋の動作)などの役割がある筋肉です。
後ろから左足を見た場合、左側(外側)にある筋肉です。大腿二頭筋は筋肉が始まる頭の部分で2種類に分かれています。それが、大腿骨から始まる大腿二頭筋の「短頭」と坐骨結節から始まる大腿二頭筋の「長頭」です。「二頭筋」と呼ばれる理由はここにあります。
大腿二頭筋の役割としては、陸上競技や球技などで不可欠な「走る」・「跳ぶ」・「切り返す」などの動作において最も重要です。細かく言えば、股関節を伸ばすのに「長頭」のみが作用し、大腿二頭筋の両方としても関節を曲げる(屈曲)時などに使います。
太ももの後ろ面にあるハムストリングに対して、太ももの前面にある筋肉は「大腿四頭筋」と呼ばれます。大腿四頭筋は簡単にトレーニングで鍛えられるのに対し、ハムストリングはトレーニングが難しく、普段意識しない動作では意図的にハムストリングを鍛えることはできないとされているほどです。そこでここからはハムストリングのトレーニング方法をお伝えしていきます。
ハムストリングは鍛えるべきインナーマッスルの対象です。そのため、トレーニングは通常の筋トレではなく、専用のトレーニング方法を導入しなければ鍛えられません。ここでは、ハムストリングを鍛えるトレーニング方法について紹介します。
自重トレーニングの中でハムストリングを鍛える方法として有名なのがスクワットです。
注意点は、伸ばした時に膝は完全に伸ばしきらないことです。わずかに落とした上体から再びスタートします。
バランスボールはトレーニングやダイエットなど多目的で使用されるトレーニング道具です。
<参考動画 バランスボールブリッジのやり方>
MYREVOフィジーカーの栗原強太が、ハムストリングスの筋トレ種目であるバランスボールブリッジのやり方を解説します。
レッグランジはその場で足を開いたり腰を落とすトレーニングです。
<参考動画 レッグランジ のやり方>
MYREVOフィジーカーの栗原強太が、ハムストリングスの筋トレ種目であるレッグランジ のやり方を解説します。
バックエクステンションは、いわゆる背筋のトレーニング方法として有名なものです。
<やり方と注意点>
次に、ジムのトレーニングマシンなどを使ってハムストリングを鍛える方法を紹介します。
有名なのが「レッグカール」のマシンを使用したトレーニング方法です。中でも正面から上に曲げ伸ばしするカールマシンではなく、背面で曲げ伸ばしする「ライイングレッグカールマシン」を使用することで効率的に鍛えることができます。
バーベルを用いたトレーニングで、初心者でもやり方さえ間違えなければ簡単にできます。
グルートハムレイズは、背筋を鍛える時などに使うローマンチェアを使ってハムストリングをトレーニングします。下手なやり方は腰を痛めるので、ある程度トレーニングに慣れた方がやるのに良い方法でしょう。
ケトルベルスイングは上下への独特な動きをするトレーニングです。急激な動きであるため、これまでハムストリングを鍛えたことがない方は避けましょう。
上記のようにハムストリングを鍛えることで能力は向上します。しかし、それだけでは、すべてオパフォーマンスに対して能力を引き上げることはできません。そこで必要なのが筋肉の柔軟性です。次にハムストリングの柔軟性について取り上げます。
ハムストリングは普段意識しない筋肉である分、自らの意思で筋肉をほぐす行為をしないと柔軟性を維持することはできません。そして、使わない筋肉として固まってしまいます。そこで、ハムストリングをほぐすことの意味や方法についてご紹介します。
ハムストリングは太ももの後ろの筋肉で、故障の多い部位でもあります。ほぐしたり、運動後に伸ばすことでケガを防ぐ効果があります。
ハムストリングをほぐすポイントは動的にほぐすことです。ダイナミックな動きで曲げたり伸ばしたりを動きながらできる(ラジオ体操やリズムダンス、体全体を使った曲げ伸ばしなど)でほぐします。
ハムストリングの筋肉が固いと上手く力を伝えられれず、関節に必要以上の負荷をかけてしまい軟骨の減りが早くなったり、関節の故障の原因になります。また、肉離れなどの問題を引き起こすのも主にハムストリングの筋肉が凝り固まることが原因です。
これらのデメリットを生じさせないためには、ハムストリングの柔軟性を向上させることです。固くなった筋肉を改善して、ケガの予防やパフォーマンスの向上を狙いましょう。
ここからは、正しいストレッチ方法(ダイナミックストレッチのやり方)を取り上げていきます。
ハムストリングの柔軟性を高めるためには運動前後のストレッチが効果的とされています。特に伸ばしたりほぐす動きで柔軟性を高めることができます。
また、股関節や膝関節の曲げ伸ばしのストレッチは、太ももの筋肉のどの部位にも有意差なく柔軟性を高めることができます。それでは、有効なストレッチの正しい方法と手順について解説します。
<参考動画 トゥータッチのやり方>
MYREVOストレッチトレーナーの福原壮顕がハムストリングスのストレッチ「トゥータッチ」を解説します。
<参考動画 ヒールキックのやり方>
MYREVOストレッチトレーナーの福原壮顕がハムストリングスのストレッチ「ヒールキック」を解説します。
<参考動画 サイドステップのやり方>
MYREVOストレッチトレーナーの福原壮顕がハムストリングスのストレッチ「サイドステップ」を解説します。
このストレッチは上記でご紹介した3つのストレッチと違い静的ストレッチです。運動後に行うようにしましょう。
次に、ハムストリングは痛みや故障など何かとトラブルの多い箇所です。そこで、ハムストリングのトラブルやその対処法などについて紹介します。
オーバーワークや無理な柔軟、間違ったストレッチ方法で、起こるのがハムストリングのトラブルです。身近なケースでは、体操部に入ったばかりの女学生が、前屈などの静的ストレッチを運動前に無理に行い、ハムストリングが断裂。結果として、足が動かなくなってしまったケースなどあります。このような痛ましい事件もストレッチで起こってしまいます。
予防方法としては、前屈などの静的(止まったままの)ストレッチを無理にしないようにすることです。また、スプリントなど強度の高い運動前、ハムストリングをほぐさずに激しい運動をすると、筋肉痛や肉離れの原因になります。
それでは筋肉痛や肉離れなどについて順に説明していきましょう。
ハムストリングは他の筋肉と同様に、いきなり鍛えたりストレッチをすると筋肉痛になることがあります。筋肉は損傷を受けて、それを超回復することで筋力や体積を増加させます。その過程で起こる炎症が筋肉痛です。
かなり軽いものなら、適度なウォーキングやダイナミック・ストレッチを用いて血行をよくして回復を早めます。少し痛みがあるなら、風呂には入らず、湿布などを貼って安静にします。冷やすと炎症の治りが早くなります。動けないほど痛いときは無理に動かず安静に寝ていましょう。2~3日で回復しなければ病院へ行きましょう。
<超回復の解説はこちら!>
肉離れとは、筋繊維の一部が断裂して、体重を上手く支えられなくなる症状です。立ったり歩こうとするのが自分ではできず、体重をかけようとすると痛みが生じます。それも軽い痛みから激痛までありえます。
特にハムストリングの中でも、ランニング時に大腿二頭筋の肉離れが発生するケースが多いです。それは陸上競技に限らず、球技の試合で突然起こることもあります。緊張や不安などで筋肉のコンディションが悪く、ハムストリングが固まって上手く動かない時などです。
痛みを感じたら無理に動かさず、氷などで冷やして安静にします。その後、形成外科などに見てもらいます。ハムストリングは特に故障の多い部位なので、素人判断で勝手に診断を下さないようにしてください。痛みがひどくなったり、運動に支障が出るなどします。
肉離れのときは、外側からバンドエードで応急処置や接合したりして治すことができないので、外科で見てもらう以外に方法がありません。自己流の対処(テーピングなど)はもってのほかです。
稼働域の判定や触診、圧迫による痛みなどから症状(肉離れの程度)を判定します。軽い症状なら湿布を出されて終わりですが、重症になるとリハビリが必要なこともあります。リハビリといっても筋肉を元戻すための運動や筋肉量の回復が中心です。
期間は症状によって異なりますが、痛みがなくなる頃が回復のサインです。軽度だと1ヶ月以内。重症だと1ヵ月半から2ヶ月以上かかるものまであります。
治し方は、湿布以外に鎮痛薬の内服薬をもらったり、塗り薬が処方されることもあります。
外科で見てもらっても肉離れではないと判断された場合、テーピングによって傷めた筋肉を補強してサポートすることができます。その際、テーピングは太もも周りから膝関節までの元が基本です。
まず、テーピングには下地とテープの二種類があります。肌を保護するためには先に下地を肌に使用します。
伸ばしたり曲げたりする動きをテーピングが補強するので、痛みが和らいだり、低下した運動パフォーマンスを高めることができるでしょう。
今回の記事では、体の体重を支えたり曲げ伸ばしで使われる筋肉であるハムストリングについてその特徴や鍛え方、トラブルへの対処やケアの仕方など説明しています。普段の生活ではハムストリングを特別に鍛えることが困難であるケースが多く、ハムストリングのトレーニング用の動作を行うなどする必要があります。
また、怪我をしやすい部位でもあるので、ダイナミック(動的)・ストレッチで伸ばしてほぐし、ケガや肉離れの予防をしましょう。もし、筋肉痛や肉離れが起きてしまったときは、自分だけで判断せず、外科医に診断・治療してもらいましょう。