筋力UPを目指して筋トレに取り組む方の中には、脂肪を落とすために「ランニング」をトレーニングメニューに取り入れている方も多くいます。
これは、「筋トレを行ってからランニングに取り組むことで、脂肪が落ちやすくなる。」と言われているためです。
しかしこの知識だけを武器に、トレーニングメニューにランニングを加えるのは危険です。ランニングは筋肉を消費してしまうと言う一面も併せ持っています。
そのため、無計画にトレーニングメニューにランニングを追加することは、せっかく付けた筋肉を失うことにもなりかねないのです。
そこでこの記事では、トレーニングメニューに「筋トレ」と「ランニング」の両方を取り入れる際のポイントをご紹介します。
筋肉を維持しながら脂肪だけを落とすための、ランニングの活用法を学んでいきましょう!
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フィジーカー 栗原強太
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湘南オープンメンズフィジーク172cm以下の部で5位入賞したフィジーカー。体脂肪率は1桁。複数のジムを掛け持ちして日々トレーニングに励む。 |
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倉本 岳
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参加者3000名を超える都内最大級のランニングチーム「Morning Running Club(通称モニラン会)」の代表。フルマラソンの自己ベストは3時間26分。 |
目次
トレーニングメニューに「筋トレ」と「ランニング」の両方を取り入れる際は、そもそも筋トレとランニングは運動の種類が違うということを理解しておかなければなりません。
名称 | 種類 | 特徴 | 両者の大きな違い |
筋トレ | 無酸素運動 | 筋肉が酸素を使わずにエネルギーを生み出す運動。 |
「グリコーゲン」をメインのエネルギーとして活用する。
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ランニング | 有酸素運動 | 体内の酸素を使ってエネルギーを作り出す運動。 |
「脂肪」をメインのエネルギーとして活用する。
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両者の大きな違いは、運動のエネルギー源です。筋トレは「グリコーゲン」、ランニングは「脂肪」をメインのエネルギーとして活用します。
グリコーゲンとは、筋肉や肝臓内に貯蔵された「糖質」のことを指します。
また、筋トレとランニングでは期待できる体への効果も変わってきます。筋トレは、筋肉量を増やすのに相性が良く、ランニングは心肺機能や持久力を高めるのに相性が良い運動です。
名称 | 種類 | メインのエネルギー源 | 体への効果 |
筋トレ | 無酸素運動 | グリコーゲン(≒糖質) | 筋肉量が増える。 |
ランニング | 有酸素運動 | 脂肪 | 心肺機能・持久力が高まる。 |
人の体は運動をするときに「糖質から脂質の順」にエネルギーを使います。
そのため、糖質をメインのエネルギーに使う筋トレ(=無酸素運動)を先に行い、あとから脂肪をメインのエネルギーとするランニング(=有酸素運動)を行う順番にすることで、体脂肪を効率的に消費できるのです。
また、先ほどランニングは脂肪をエネルギーとして活用するとご紹介しました。しかし厳密には、ランニングにも「糖質から脂質の順」にエネルギーを使うという原理は働きます。
ランニングは、体内で一定量の糖質を消費してから、脳が体のエネルギー不足を補うために脂肪を分解してエネルギーとして活用するという流れで行われます。
その際に、ランニング中にエネルギーとして使える血中の糖質が少ない場合、体は筋肉を分解してエネルギー源として活用するという性質があるのです。
食事から体内に吸収された糖質は、グリコーゲンという形で肝臓や筋肉に蓄積されています。運動時には、肝臓や筋肉に蓄積されたグリコーゲンが分解されて、再び糖質となり血中に溶け出してエネルギーとして活用されます。このように体は糖質の貯蔵と活用を行なっているのです。
筋トレはランニングと比べると筋肉に強い負荷を与えることができます。そのため、ランニングよりも筋トレの方が、トレーニング後の回復を通じて筋肉をより大きく成長させることができます。
体は血中の糖質をある程度消費したのちに、脂肪をエネルギーとして使う。そのため、糖質をメインのエネルギーに使う筋トレを先に行うことで、その後の有酸素運動で脂肪を燃焼しやすくなる。
3つの目的ごとの「筋トレ」と「ランニング」のおすすめの順番は次の通りです。
目的 | オススメの順番 |
「ダイエット・減量」の促進 | 「筋トレ→ランニング」の順番 |
「筋肥大」の促進 | 筋トレのみを行う |
「持久力」の向上 | ・初心者 ランニングのみを行う ・中上級者 「筋トレ→ランニング」の順番 |
ここからは上記の順番になる理由を説明していきます。
ダイエット・減量目的の場合は、筋肉量を維持しながら脂肪を減らすことが大切です。そのため、ここまでご説明したように筋トレを行ってからランニングを行う順番がベストです。
食事から時間が空いて血糖値が下がっている状態で筋トレを行うと、筋肉の分解を過度に促進してしまいます。
それだけでなく、脳で使われる糖質の量も不足するので、トレーニング中に「気分が悪くなる」「注意力が散漫になる」などの症状を引き起こすこともあります。
筋肥大を目的とする場合は、ランニングは行わずに筋トレだけに取り組むのが良いでしょう。
実は、筋トレにランニングを組み合わせることで、筋肥大が阻害されることが懸念されているのです。
例えば、短距離選手(スプリンター)が持久走のトレーニングを同時に行うと、スプリンターとしての能力向上を抑制してしまうという研究事例があります。これは、スプリンターに持久的なトレーニング(有酸素運動)をさせることで、筋肥大が抑えられてしまった結果だと述べられています。(※1 Concurrent exercise training: do opposites distract? Vernon G. Coffey and John A. Hawley)
それだけでなく、有酸素運動中は筋肉の分解も高まるので、筋肉を付けたい方にとっては頻繁に有酸素運動を行うことが筋肉を減らす原因にもなってしまいます。
疲労回復の目的でランニングを行う「アクティブレスト」という考え方があります。
これは、ランニングで血流を促進することで、体内に残存する疲労物質を取り除き、体内の栄養素の循環を高めて新陳代謝を上げる手法です。
持久力向上を目的としてトレーニングを行なっている方は「筋トレ→ランニング」の順番で行うのがオススメです。
フルマラソンなどの競技で求められるレベルの持久力を養いたい方は、ランニング前に下半身を中心に筋トレを行なっておくと良いでしょう。
そうすることで、ランニングのみを行う場合と比べると、ランニングに必要な下半身の筋肉をより短時間で鍛えることができます。
さらには、ランニングの前に筋トレを行うことで、長距離を走ることに必要な心肺機能の強化も期待できます。これは、筋トレで体が疲労した状態からランニングをスタートすることで、心肺に強い負荷をかけることができるためです。
また、持久力向上のために筋トレを行う際は体幹トレーニングを取り入れることもオススメします。
筋トレ前に有酸素運動を軽めに10分
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筋トレを1時間以内
↓
筋トレ後の有酸素運動を30分以内
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パーソナルトレーナー 松浦 晴輝
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早稲田大学在学中にジムトレーナーのアルバイトを始め、トレーニングや食事に関する知識を習得。パーソナルジムで月約130本のパーソナルセッションをこなす。現在はフリーのパーソナルトレーナーとして活動中。 |
上記の松浦さんの例のように、「筋トレ」と「ランニング」に取り組む中で「ご自身の体に合う時間配分」を見つけていくのが良いでしょう。
時間配分をより突き詰めて考えたい方は上記でご紹介した松浦さんの考え方が参考になると思います。下記の記事もぜひ参考にしてください。
なぜなら、筋肉には超回復が重要です。
筋力トレーニング後の24~48時間くらいで起こる現象で、この期間を休息に当てることで、筋肉が修復されて、トレーニング前よりも筋繊維が強くなることをいいます。
筋トレを毎日行うことは、修復途中の筋肉をさらに破壊してしまうことになり、効率的に筋肉がつきません。そのため、筋トレは週に2~3日の頻度で行うのがオススメです。
なぜなら、ランニングは脂肪をエネルギーに変換して燃やすため、取り組んだ分だけ成果に繋がります。持久力向上を目指す方も、走り込むたびに体力が向上していきます。
ですが、ランニングも筋トレほどではないにせよ筋肉を破壊する行為であることには変わりないので、疲労具合を見て休息日を作るようにはしましょう。
これまで、ランニングは筋トレの後に行うのが体脂肪を減らす上ではベストだと紹介してきましたが、必ずしも筋トレの前にランニングをしてはいけない訳ではありません。
しかし、この順番で行うには注意点もあります。それは、ランニングで燃え尽きてしまい、体力が残っていない状態で筋トレしてしまうことです。
筋肉へのトレーニング効果が低減してしまうだけでなく、高負荷トレーニングではケガのリスクが生じます。
主に筋トレに支障の出るようなランニングの仕方は、ペースを考えずに闇雲に走ることです。
筋トレ前のランニングは、息を切らすまで走るのは避けるべき。ウォームアップのつもりで、呼吸が自然にできるくらいのペースを守って行いましょう。
そこで、ここではランニング以外の有酸素運動と筋トレの組み合わせの相性をご紹介します。
有酸素運動としてランニング同様に一般に良く知られているのがウォーキングです。
しかし、ランニングに比べて運動量が多くないため、カロリーの消費量を高めたいダイエットが目的の方はランニングの方が相性は良いでしょう。
ただし、10分も走ってないのに息が切れて、足が動かなくなる人は体力が不足しているか、走り方に問題があります。(※ペースは初心者の場合で、1kmあたり7分前後、早歩きでギリギリ追いつけるペースで走るのが適切です。)
そういった方はランニングよりもウォーキングがおすすめです。
これは、ランニングは筋肉の分解・消費を高めてしまうリスクが大きいためです。筋肉を育てて大きくしたい方は、ウォーキングと組み合わせてみましょう。
ランニングとウォーキング以外に有酸素運動としておすすめなのが水泳です。
1つ目は、体全体を使って行う全身運動なので、カロリー消費が多く、その上、全身をバランスよく鍛えられる点です。
水をかく腕・手に、バタ足による脚力。それを支えるインナーマッスルなど、全身の力を推進力に変えます。
一部分だけを鍛えて、体のバランスが悪くなり、体に悪影響を与えるようなマイナス要素がほとんどありません。
2つ目は、水泳は水中で行う運動であるため、関節に負担が少ないことです。
ランニングやウォーキングのように地面を歩くことで、少なからず膝や足腰に負担がかかります。フォームが悪ければ、膝や腰を傷めることもあるのです。
筋トレを行う方は、普段の食事とは別に、プロテインを活用すると良いでしょう。
筋トレで破壊した筋肉繊維の修復にはタンパク質が使われます。壊したまま修復されなければ筋肉は減っていくので、タンパク質の摂取が欠かせません。
筋トレ後は筋肉の破壊が起きてタンパク質が必要になるタイミングです。そのため、筋トレの30分~1時間後までにプロテインを飲むのが理想です。
また、トレーニング前に特定のアミノさん(BCAAやEAA)を摂取することで、筋肉の疲労や痛み・炎症などを防ぐことなどが期待されます。
いくつかの研究では、睡眠時間の長い人と短い人では、長い人の方が肥満になりにくいと報告されています。(※2 Insufficient sleep undermines dietary efforts to reduce adiposity. Nedeltcheva AV1, Kilkus JM, Imperial J, Schoeller DA, Penev PD.)
スタミナアップについても、ある研究では1日8時間以上の睡眠が持久系スポーツのパフォーマンスを向上させる可能性が示されたという報告がされています。(※3 https://sndj-web.jp/news/000326.php)
トレーニングを行う日は、十分な睡眠時間を確保できるようにスケジュールを組んでみてください!
筋トレとランニングを上手に組み合わせることで、あなたのトレーニングメニューがより進化するはずです!
今回ご紹介した情報を今後のトレーニングに役立ててみてくださいね!