この記事は、挑戦を避け中途半端な人生をおくっていた石田が、自分を変えるため、5kmも走ったことのない状態から、半年間でフルマラソンサブ4(4時間未満での完走)を目指すドキュメンタリー記事である。
挑戦者 石田 悠貴(Yuki Ishida) | |
本企画の主人公。中学生時代は部活に打ち込んでいたが、最近では目標に向けて努力することを怠っていた。知人に誘われ観戦した東京マラソンでランナー達の姿に感化され、フルマラソンへの挑戦を決意する。 |
中学生時代の自分は部活に必死に打ち込んでいた。仲間達とくたくたになるまで練習し、試合でその成果を感じる達成感に満ちていた。しかしそれも今では過去の話。
高校、大学では目標に向けがむしゃらに努力するということはなく、だらだらと日々を過ごしていた。友人達がスポーツ、勉強などで努力の末に結果を出すという経験を経ていくのを横目で見ながら、自分はあんなに必死になれないとどこか醒めた目で見ていた。
そんなある日、友人の藤田君に呼び出された。彼は留学から帰ってきた後にインターンや就活で努力を重ねている。
藤田 敦也 (Atsuya Fujita)
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石田の大学時代の友人。インターンや就活に加え、フィットネスインストラクターやモデル業を精力的こなしている。 |
彼と夜のカフェで近況や今後の目標を話し合っていた。
彼がきらきらした目で話している様子を見てうらやましいと思うと同時に、僕は彼のように一生懸命にはなれない、自分を追い込めないと感じていた。
すると突然、藤田君が僕に言った。
僕ははっとした。
今まで挑戦を避け続け、何も達成してこなかった現在の自分に危機感を覚えた。今の自分のままでは中途半端に一生を終えてしまう。
僕は藤田君の言葉に動かされ、何も成し遂げてこなかった自分を変えるべく、新しい挑戦をすることを決意した。
新しい挑戦には何がふさわしいのか考えた。
「挑戦」というからには自分にとって困難なことが良い。何がいいだろうと悩んでいると、きついからと走ることを避けてきたのを思い出した。
中学生時代の部活ではよくグラウンドを10周走らされていた。しかし高校以降は部活でも走る練習はあまりなく、自然とランニングから遠ざかっていた。
今の自分にとってふさわしいチャレンジはこれだ!と感じた。5km以上走ったことが無かった僕は、5kmのランニングを習慣にすることに挑戦すると決めた。
僕が最初のランニング場所に選んだのは皇居。1周5kmと距離が測りやすく、景観を楽しみながら走れる。
毎日多くのランナーが訪れ、ランナーの聖地とも呼ばれている。
さわやかな青空の下、ランニングをスタート。
おそらく高校以降の本格的なランニング。走り始めるとさわやかな風が心地良い。
徐々に身体が目覚めていく感覚を覚える。久しぶりに走ってみると、思いの外楽しい。
始める前は不安だったけど、この調子なら5kmも簡単に走れてしまうんじゃないか?
ところが、1kmを越えたあたりから雲行きが怪しくなってきた。身体はだんだん重くなり、足が思うように進まない。
後ろのランナー達にどんどん追い越される。ゴールまでが果てし長く感じられた。
皇居を1周した直後は疲れでしばらく動けなかった。
久しぶりのランニングだったとはいえ、ここまで辛いとは思わなかった。早くも壁にぶつかった気分。意気込んで始めてみたけれど、もうやめてしまいたい・・・。
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たった1回の皇居ランで挫折してしまった。自分がいやになる。
気持ちが沈んでいた時、東京マラソンの観戦に行こうと誘われた。
ランニングでへこたれていた僕はあまり乗り気ではなかったが、今まで生でマラソン大会を見たことがなかったので、良い機会だと思い行ってみることに。
マラソン大会の当日。
待ち合わせ場所の新宿駅に行くと、多くのランナーの姿が見えた。駅構内がランナー達でごった返す様子を見て、東京マラソンという大会の盛り上がりを感じた。
雨の日にもかかわらず沿道にはたくさんの人が応援に駆けつけていた。マラソン大会ってこんなに人気があるんだな。知らなかった・・・。
東京マラソンがスタート。
記録を狙いハイペースで走る人、仲間と一緒にペースを合わせて走る人、コスプレをして楽しく走る人など、それぞれの形でゴールを目指すランナー達。
約4万人が走る光景に圧倒される。東京マラソン、すごいエネルギー!
雨風が強く立っているだけでも寒い。ランナー達の体調も気になる。無理せず自分のペースでゴールを目指してほしい。
今大会の注目選手、大迫傑選手の写真を撮影しようと試みる。
コースを電車で先回りして待ち構えようとする。しかし驚いたことに、大迫選手が電車よりも速いスピードで走って行く・・・!
結局写真は1枚も撮れず。大迫選手は途中棄権となってしまったけど、その実力をまざまざと見せつけられる結果に。日本マラソン界のスター、恐るべし。
大迫選手を追いかけた後はゴール手前の41km地点で観戦することに。
ランナー達が力を振り絞りながら懸命にゴールへ駆けていく。その姿を見て、心を動かされる。
一つのことに打ち込む人の姿はこんなにもかっこいいのか。僕は自分がマラソンへ惹かれているのを感じた。
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東京マラソンを観戦した後に、誘ってくれた人の知人で大会に参加していた易さんと出会う。彼は悪天候の中で2時間代に迫るタイムを記録したランナーだ。
易 成(Inari)
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フルマラソンを3時間1分で走る市民ランナー。3ヶ月のランニングで10キロの減量に成功した過去を持つ。 |
今回の観戦でマラソンへの興味が強まったのもあり、易さんにマラソンについてのお話を聞くことに。
その中で易さんがかつて太っていたということがわかる。引き締まった身体をしている今の姿からは想像もできない。現在に至るまでにどれほどの努力をしてきたのか・・。
易さんがマラソンの魅力について、ゴールした時の達成感と語る。
練習や大会では辛い場面があるけれども、今までの自分を超え、目標をクリアした瞬間の喜びは何物にも代えられないという。
この言葉を聞き、自分も易さんのように限界に挑戦し、何かを成し遂げたいという思いに駆られる。今の自分が挑戦するべきことはマラソンだという結論に至る。僕は易さんにマラソンを教えてほしいとお願いする。
<易さんが3.5ヶ月で10kg痩せた軌跡はこちらから!>
易さんは少し考えた後に口を開いた。
易さんの言葉を受け、背筋が伸びるような気持ちになる。決してマラソンを軽んじていたわけではない。
だが、行動で本気度をはかられることになるとは思ってもみなかった。
易さんが続けざまに説明する。
半年後の大会で3時間台でのゴール?それってどれだけ難しいことなんだ?僕にそんなことができるのだろうか。
返答に詰まっていると、易さんが僕に告げる。
突然易さんから課題が言い渡される。
今まで生きてきた中で、5kmを走ったのは高校の体育の授業のみだ。そんな僕にとってこの課題はかなりきつい。
正直、最初からこんなにきついことをやらされるとは思ってもみなかった。皇居ランでの苦い思い出が蘇る。ネガティブな気持ちがあふれてきて、言い訳を探し始める。
そんな僕の様子を感じ取ったのか、易さんが僕をまっすぐに見つめて言った。
ぴしゃりと頬を打たれたような気がした。今までの自分を変えるためにマラソンに挑戦しようとしていたのに、いつのまにか今までと同じように逃げようとしてしまっていた。
ここでも逃げてしまったら、もう後はない。僕は自分を変える最後のチャンスが、このマラソンだと確信した。
易さんに約束し、覚悟を決めた。
5km以上走ったことがない人間が、半年間でフルマラソンのサブ4での完走を目指す。
厳しい挑戦になるだろう。くじけそうになることもあるだろう。だけど、自分を変える大きなチャンスなのは間違いない。
僕は半年後の北海道マラソンを目指し、走り出すことを決意した。
<石田が決意を固めたそのとき、藤田、易はどう思っていたのか?藤田・易視点で書かれたもう1つの物語はこちらから!>
<次回のマラソンチャレンジ(第2話)はこちら!>
波乱の幕開けとなったマラソンチャレンジ。果たして石田は課題をクリアし、易に認めてもらうことはできるのだろうか!?