筋トレをする前後に炭水化物を摂取することはとても大切です。
減量や、ボディメイクのために、炭水化物の摂取を制限しすぎると、骨格筋という骨格を動かすための筋肉へエネルギーがうまく供給されない可能性があります。
筋トレの際のエネルギー不足は、筋分解が促されるリスクがあり、筋トレの負荷を上げにくくなるためおすすめはできません。
そこで今回は、筋トレにおける炭水化物の正しい知識。炭水化物を上手に摂取して、筋トレの効果を高めるための方法をお伝えします。
佐藤樹里(管理栄養士)
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管理栄養士。アスドリファクトリー代表。フィットネスジムでの運動・栄養指導経験後、約1年海外移住をし、現地のレストランでシェフと共に働く。現在はスポーツイベント開催、アスリートへの栄養講座、栄養個別サポートを通算1000人以上に行う。 |
目次
炭水化物はそもそも糖質と食物繊維を合わせた栄養素の名前です。
食品成分表示で「炭水化物●g」などと書かれている場合、これは糖質と食物繊維の合計の質量なのです。
主な違いは、糖質は体内で吸収されエネルギー源となりますが、食物繊維は体内で吸収されずエネルギー源とはならない点です。
そこで、今回は特に筋トレをする際のエネルギー源として重要な「糖質」をメインにして解説していきます。
筋トレをするときに使われるエネルギー源は、主に糖質です。
筋トレの際の糖質の役割は、骨格を動かす筋肉である骨格筋にエネルギーを送ることにあります。
糖質は体内でグリコーゲンと呼ばれる物質に変化します。そこからさらに、筋グリコーゲンと呼ばれる物質となり筋肉にたまります。
筋トレをする際、この筋グリコーゲンがエネルギーとして使われ筋肉が動きます。
つまり、筋グリコーゲンがないとエネルギーを発することができなく、筋トレのパフォーマンスが低下してしまうのです。
だからこそ炭水化物を摂取し、筋グリコーゲンの枯渇を防ぐことが大切です。
炭水化物が筋肉にもたらす効果は主に2つあります。
体内に炭水化物(=糖質)が枯渇した状態で筋トレを行うと、筋トレに必要なエネルギーを捻出するために、体内ではタンパク質の分解が起こります。
ここで言うタンパク質とは筋肉のことです。
せっかく筋肉を増やそうと筋トレに励んでも、体内でタンパク質の分解を起こしては筋トレの効率が悪くなってしまいます。
炭水化物の摂取はそういった状態になるのを防ぎ、筋トレにおける筋肉の合成をサポートしてくれるのです。
炭水化物(=糖質)は、筋グリコーゲンとして筋トレの際のエネルギーとして活用されます。
そのため、体に十分な量の筋グリコーゲンが蓄えられた状態で筋トレを行えば、しっかりとパワーを発揮できます。
筋トレの効率を上げるためにも、筋トレ前に炭水化物を摂取して栄養補給をしましょう。
筋トレに励む方の中には、ボディメイクの一貫として減量のために炭水化物を控える方もいらっしゃると思います。
確かに、糖質は体内でエネルギーとして使われず余ってしまった場合、中性脂肪として体に蓄えられると言う性質を持っています。
この点において、体を絞る上で糖質を制限することはメリットがあります。
しかしその一方で、過度な糖質制限は体内のインスリンの働きを弱め、筋肉が合成されにくい状態にしてしまいます。
インスリンとは体内で、筋肉に栄養素を運ぶ役割を担い、糖質を摂取することで出るホルモンです。
そのため、ダイエットなどに用いられる糖質制限は、筋トレをする人は控えることをオススメします。
最高のパフォーマンスをするためにもぜひ炭水化物(糖質)は摂取しましょう!
<炭水化物を抜くことについてより詳しく知りたい方はこちらの記事がおすすめです!>
そもそも炭水化物とは何のことを指すのでしょうか。
食材としては米、パン、小麦、そして芋類が挙げられます。他にもサラダと名前に入っているポテトサラダやマカロニサラダも炭水化物です。
炭水化物の摂取量については、1日の総摂取カロリーの50~60%を炭水化物で摂取することが必要です。具体的な数値をみてみましょう。
例えば成人男性の場合。
厚生労働省が定める1日のエネルギー必要量は2650kcal。この50~60%となると、炭水化物で1325~1590kcalを摂取する必要があることが分かります。
糖質量にすると約330g~400gです。筋トレなど運動する人はこれ以上の量を摂取することが望まれます。
次に成人女性の場合。
1日のエネルギー必要量は2000kcalで、炭水化物で1000~1200kcalの摂取量になります。糖質量にすると約250~300gが必要量だと言われています。
しかし、以上の数値は身長や体重を考慮していないため、個人差が生じます。あくまでも目安としてこれらの数値を参考にしてください。
それでは、実際に1000kcalを炭水化物(糖質)で摂取するとなると、どれくらいの食事の量になるのでしょうか。
例えば、お茶碗1杯(150g)で55g程度の糖質を摂取することができます。
つまり1日で考えると、男性はお米6杯分、女性はお米4杯分に相当します。
PFCバランスとは、筋トレをする際に適切な摂取カロリーを計算する方法です。
筋肉に必要なタンパク質、脂質、そして炭水化物の適切な摂取割合を求めることができます。
これらは三大栄養素と呼ばれ、タンパク質(Protein)、脂質(Fat)、炭水化物(Carbohydrate)の頭文字をとって、PFCバランスと呼ばれています。
PFCのバランスは目指す体型や、ボディメイクをしている人であれば、増量期、減量期などで変わってきますが、一般的には下記の基準値を参考にすると良いでしょう。
筋トレをしている人であれば、タンパク質(P)の割合を多くするなど、上記の基準割合をアレンジしながら、自分の体質に合うバランスを見つけてみてください。
<PFCバランスの詳細はこちらの記事がおすすめ!>
ここからは、筋トレをする上で、炭水化物を摂るおすすめのタイミングをご紹介します。
筋トレ前も、筋トレ中も、筋トレ後も炭水化物の摂取は必要です。
それぞれで炭水化物を摂取する目的や効果の違いを見ていきましょう。
炭水化物を筋トレ前に摂るとしたら、消化時間を考慮して筋トレの1〜2時間前がベストタイミングです。
栄養補給のために、大福や白米といった吸収の早い炭水化物を軽く食べておくと良いでしょう。
また、筋トレ前にあまり食事をしたくないと言う方は、スポーツドリンクで炭水化物を摂取するのでもOKです。
ご存知の方も多いと思いますが、スポーツドリンクの主な成分は砂糖、つまり糖質です。
糖質を摂取するだけでなく、ビタミンやミネラルも同時に摂取することができ効率的と言えるでしょう。
<ビタミンと筋トレの関係を詳しく知りたい方におすすめ!>
筋トレ中は、粉末状の糖質を水に混ぜて飲むと摂取がしやすいです。
マルトデキストリンやクラスターデキストリンなどの粉末状の糖質を活用しましょう。
特に、クラスターデキストリンは江崎グリコがトレーニング中に摂取するための糖質として、アスリート向けに開発したものです。
その他の糖質と比べて、消化の負担が少ない、甘くなく飲みやすい、エネルギーとして素早く吸収される、などの特徴があるため、筋トレ中にオススメです。
また、筋トレ中にスポーツドリンクで糖質を補給するのも有効です。
その際は、ハイポトニックのスポーツドリンクを選ぶことをおすすめします。
そもそも、スポーツドリンクには浸透圧の違いにより、アイソトニック、ハイポトニックの2種類があります。浸透圧が体液と同じくらいのものをアイソトニック、浸透圧が体液より低いものをハイポトニックと呼びます。
アイソトニックは筋トレ前、ハイポトニックは筋トレ中か筋トレ後に適しているので、上手に活用しましょう。
筋トレ後の炭水化物は、タンパク質と一緒に摂ることがポイントです。
糖質とタンパク質を一緒に取ることで、タンパク質の吸収が良くなるためです。
また、筋トレ後のタンパク質は一食あたり20グラムを目安に摂ることをおすすめします。
20グラム以上タンパク質をとっても吸収されないというデータも報告されていまし、あまりタンパク質を取りすぎてしまうと先ほどご紹介したPFCバランスが崩れてしまいます。
タンパク質の消化や吸収には肝臓・腎臓を使うため、体になるべく負担をかけない方法で、タンパク質20グラムが摂取できるとより良いです。プロテインなどのサプリメントも活用してみましょう。
そもそも炭水化物(糖質)は、代謝をするために必要な栄養素です。
糖質をエネルギーに変える際は、ビタミンB1と同時に摂取することで、さらに効果が高まります。ビタミンB1は豚肉やうなぎ、玄米などに含まれます。
手軽に作れる料理としては豚の生姜焼きとお米などがオススメです。
筋トレをしているときに炭水化物を摂取することをネガティブに思っていた方も多いかと思います。
しかし、過度な炭水化物の制限をしては、エネルギー不足に陥ってしまいます。
炭水化物の役割や摂取タイミング、量を理解しより効果的に筋トレを行なっていきましょう!