「食事もトレーニングの一環」という言葉は、筋トレをする人なら一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
筋肉に必要な三大栄養素は、タンパク質、脂質、炭水化物。
これらをどんなバランスで食べればいいのか?を知るためには、「PFCバランス」という基準を把握する必要があるんです。
今回は、筋トレをする上で欠かすことができない栄養の知識「PFCバランス」について、管理栄養士がお伝えします!
佐藤樹里(管理栄養士)
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管理栄養士。アスドリファクトリー代表。フィットネスジムでの運動・栄養指導経験後、約1年海外移住をし、現地のレストランでシェフと共に働く。現在はスポーツイベント開催、アスリートへの栄養講座、栄養個別サポートを通算1000人以上に行う。 |
目次
人間が生きていくためには、タンパク質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルの五大栄養素が必要となります。
この中で、人間が体を動かすためのエネルギー(カロリー)となるのがタンパク質、脂質、炭水化物の3つ。
タンパク質(Protein)、脂質(Fat)、炭水化物(Carbohydrate)の頭文字から「PFC」と呼ばれています。
つまり、「PFCバランス」とは1日の摂取カロリーを、この3つの栄養からどんな割合で摂るかのバランスのこと。
仮に、必要な摂取カロリーが2000kcalの人が、PFCバランスをP=20%、F=30%、C=50%で一日の食事を組み立てるとしましょう。
400kcalをP(タンパク質)から、600 kcalをF(脂質)から、1000kcalをC(炭水化物)から摂ることになります。
ボディメイクをしている人は、このPFCバランスの数字を考えて食事の内容を決めていくのがおすすめです。
極端な例ですが、純粋なタンパク質だけで一日の摂取カロリーを摂ればPFCバランスはP=100%、F=0%、C=0%になります。
PFCバランスを考える上で、こういった偏りは良くありません。
タンパク質、脂質、炭水化物それぞれにはたらきがあります。
もしタンパク質だけでカロリーを摂り、体を動かそうとしても、タンパク質のもつはたらきでしか体を動かすことができません。
糖質や脂質が持つ、筋肉にタンパク質を運んだり、代謝したりといったはたらきができなくなってしまいます。
タンパク質の代謝ができないと、筋量が減っていってしまう可能性もあります。
このように三大栄養素のどれかを極端に減らすことは体に数々の不調をもたらします。
例えば、極端な糖質制限を行うダイエットなどは、F(炭水化物)のバランスが悪くなり、危険なためあまりおすすめできません。
<三大栄養素の詳しいはたらきについて知りたい方はこちらがおすすめ>
体の作りがひとりひとり違うように、適切なPFCバランスは人によって違います。
現在の体型や、目指す体型、生活環境によっても変わってきます。
例えば、ボディビルダーの方ですと、減量期と増量期でPFCバランスは全く違います。
時期によって、脂肪の摂取量を低くして10-15%以下に保つ努力をされる場合もありますし、タンパク質の量だけを優先して確保する場合もあります。
<タンパク質の摂りすぎは便秘を引き起こすので注意!気になる方にはこちら>
<タンパク質を補給に有名なプロテイン。活用に一歩踏み出せない人はこちらの記事がおすすめ>
では、何を基準にして、自分にあったPFCバランスを考えていけばいいのでしょうか。
初めてPFCバランスを考える際は、厚生労働省が出している基準を参考にしましょう。
厚生労働省の基準
P:タンパク質=13〜20%
F:脂質=20〜30%
C:炭水化物=60〜65%
この基準は、健康的に生活を送るために計算されているものです。
日本では、この数字を基準に摂取カロリーのバランスをとっていくのがいいとされています。
(参考:エネルギー産生栄養素バランス)
PFCバランスを取り入れる際、どこから手をつけていいのかわからない、という方は、
この基準に当てはめて食事を摂ってみて、少しずつ自分に合った数字に調整をしていくのがおすすめです。
筋トレを習慣にしている方であればP(タンパク質)の比率を多くしていくことで変化があるかもしれません。
自分は脂質を取りすぎると太る、ということに気づいたら、F(脂質)の比率を減らすなどの工夫をしてみるのもいいでしょう。
このようにして、自分にぴったりのバランスを見つけていきます。
また、PFCバランスは三大栄養素のみの数字になりますので、野菜や果物、海藻などからビタミン、ミネラルを摂ることも忘れずに。
PFCバランスを整える際には、1つの食材に含まれている栄養は1種類ではないことに注意してください。
「タンパク質の量を増やそう!」と考えてお肉をたくさん食べても、脂肪がたくさんついたお肉だとタンパク質といっしょに脂質の比率も上がってしまいます。
例えば、カルビやサーロインなどは脂質が多いので注意が必要です。
もし脂質を摂りすぎていたことに気づいたら、次の食事で脂質の量を減らしましょう。一食あたりではなく、一日のトータルの摂取カロリーで考えればいいのです。
何かと敬遠されがちなコンビニ食は、PFCバランスを考える際には強い味方になってくれます。
コンビニ食品は裏の成分表に必ずPFCが記載されています。
食べてもいい食品と、その時点では食べられない食材をすぐに見分けることができるんです。
PFCバランスを考えていると、こんな風に自然と成分表示を見るクセがついてきますよ。
もちろん毎食がコンビニ弁当ですと、添加物を摂りすぎてしまいます。
あくまで1日のPFCバランスの調整に使うだけにしておきましょう。
例えば、「昼に糖質を摂りすぎたから、夜は糖質の少ないものを買おう」といった使い方がおすすめです。
<コンビニ食の詳しい選び方を知りたいかたはこちらもおすすめ!>
PFCバランスを意識しすぎてストレスを抱えてしまう場合があります。
「食べすぎてしまった…」と落ち込んでしまったり、PFCバランスを意識しすぎて何も食べられなくなってしまったり。こんな状態はむしろ逆効果になってしまいます。
初めはちょっとずつ意識するだけでかまいません。
「この定食は糖質が多めだから、ご飯を少なめで頼もう」
「昼に焼肉を食べすぎてしまったから、夜は脂質を減らしてささみを食べよう」
こんなざっくりとした取り入れ方でもかまいません。神経質にならずに、楽しくPFCバランスを考えてみてくださいね。
以上、筋トレ時のカロリー摂取の適量を導き出すためのPFCバランスの計算方法でした!