男らしさの象徴ともいえる厚い胸板は大胸筋と呼ばれる筋肉を鍛えることで実現できます。また、大胸筋を鍛えることは男性だけではなく、女性にもさまざまなメリットをもたらします。
しかし大胸筋の筋トレやトレーニングは種類も非常に多いため、筋トレ初心者の方などはメニュー選び、やり方で迷うことも少なくありません。
そこで今回は、このような悩みを抱えた方に向けて、大胸筋の基礎やおすすめのトレーニングメニューを解説します。比較的簡単な筋トレ法もご紹介していますので、女性の方も必見です。
フィジーカー 栗原強太
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湘南オープンメンズフィジーク172cm以下の部で5位入賞したフィジーカー。体脂肪率は1桁。複数のジムを掛け持ちして日々トレーニングに励む。 |
まずは大胸筋の基本から。大胸筋は胸部全体を覆う大きな筋肉であり、「上部/鎖骨部」「中部/胸助部」「下部/腹部」の3つで構成されています。
ここでは各部位の特徴や鍛えるために必要な動作などを解説します。
大胸筋の上部(鎖骨部)は鎖骨の内側半分を構成する筋肉を指します。
「たくましい大胸筋」といわれる方は、一般的に鎖骨から下のラインにかけて美しい盛り上がりがあるのが特徴ですが、これは大胸筋上部の筋肉が発達しているためです。
大胸筋上部は主に両腕を前に伸ばす、斜め上にあげる動作などを行うときに必要な筋肉です。特に私たち人間は、日常生活の中で物をつかむときなどに腕の伸縮動作を頻繁に繰り返しますので大胸筋上部を鍛える意味は大きいといってもよいでしょう。
ちなみに大胸筋上部は筋繊維が斜め上に流れているため、この部位を鍛えるときは傾斜したベンチなどを用いるのが効率的です。
胸骨前面、第2~6助軟骨(胸の谷間あたり)に位置する大胸筋中部(胸助部)。
肩を内側にひねる肩関節内転、まっすぐ上げた腕を内側に持ってくる肩関節水平回転などの動作を行うときに必要な筋肉です。
そのため、大胸筋中部を鍛えるときも同じような方向へ負荷をかけられるトレーニングメニューを取り入れると効率性がアップします。
きれいな大胸筋を作る上で欠かすことができないともいわれている大胸筋下部(腹部)。
大胸筋下部の起始(筋肉の始まる場所)は腹直筋鞘の前葉となっており、胸の中心一帯から二の腕のやや肩側部分を構成する筋肉です。
大胸筋下部は主に肩関節の水平回転(両腕を真横に伸ばした状態から体の中心まで引きつける)、肩関節の内旋(横に伸ばした腕を左回りに回転させる)などの動きをとるときに用いられます。
この部位を鍛えるには大胸筋全般の筋肉と同様、腕を前方に押し出す動きをしていれば自然と負荷をかけることができます。より集中的に下部を鍛えたい場合は、腕を押し出すときにやや足の方向を意識しておくと効率性がアップします。
大胸筋は男女ともに鍛えることを希望する方が多いですが、大胸筋を鍛えることで得られる具体的なメリットはどこにあるのでしょうか?
ここでは男性、女性に分けて大胸筋を鍛えるメリットをご紹介します。
男性が大胸筋のトレーニングを取り入れるメリットは、やはり男が憧れる厚い胸板を手に入れられるという点です。前述のように大胸筋はバランスよく鍛えることできれいに盛り上がった男性らしい胸を作ることができます。
バランスの整ったきれいな胸板はスーツなどが非常に似合うようになり、同性だけではなく、異性からの注目度もアップするでしょう。
また大胸筋は他の筋肉と違って効果が出るまでの期間が比較的早いです。これは大胸筋そのものが成長しやすい、もともと皮下脂肪が少ない、面積が大きいなどの要素が大きく関係しています。
効果が出るまでの期間が早いということは、見た目的にも変化が現れやすいということですから気分的にも継続しやすくなります。
女性が大胸筋のトレーニングを取り入れる最大のメリットは、美しいバストを維持しやすくなるということです。女性のバストは9割が脂肪、1割が乳腺となりますので、大胸筋を鍛えても意味がないと思われるかもしれません。
しかし、女性の体にもバストの下にしっかりと大胸筋が存在しています。女性の大胸筋はバストを支える土台のような役割も担っていますので、ここの筋肉を鍛えることでバストのたるみ防止やバストアップなどの効果を期待できるようになります。
また大胸筋の筋トレに取り組むと胸を張った正しい姿勢に改善されやすいため、呼吸の質がアップするなどのメリットも得られます(※この効果は男性も同様)。呼吸の質がアップすれば内面から女性らしい美しさや健やかさを手にすることも可能です。
大胸筋を鍛えるメリットを把握したら、大胸筋アップを目指せるトレーニングを実践していきましょう。
大胸筋を鍛えるのが初めてという方は、自宅でも手軽に行える自重トレーニングから入っていくのがおすすめです。特に筋力に不安がある方にもおすすめできるトレーニングもありますので女性の方も要チェックです。
大胸筋、上腕三頭筋を鍛える上では最も有名ともいわれているノーマルプッシュアップ。日本では腕立て伏せという呼び名が一般的です。
ノーマルプッシュアップでは主に大胸筋の中部を鍛えることができます。
大胸筋のトレーニング法としては基本的な部類に入りますので、初心者の方も積極的に取り入れるようにしましょう。ノーマルプッシュアップのやり方や手順は以下のとおりです。
<参考動画>
ノーマルプッシュアップで効率的に大胸筋を鍛えるには、腕を下げるときはゆっくり、そして起き上がるときは素早くを意識しておきましょう。
体をゆっくりと下げることで胸筋に負荷がかかっていることをしっかりと実感できます。大胸筋の筋トレが初めての方は回数よりも正しいフォームで行うことを優先してください(ムリに指定回数をこなす必要はありません)。
<プッシュアップが苦手な方はこちらもおすすめ!>
腹直筋下部を効率的に鍛えられるディップス。あまりなじみがない筋トレメニューでもありますが、ディップスは簡単に説明するとスクワットの上半身バージョンの筋トレです。
腹直筋下部に効率的に負荷をかけられる筋トレメニューは少ないため、ディップスを覚えておくと大胸筋全体をバランスよく鍛えられます。
ディップスを行うときはディップスバーと呼ばれる専用器具を用いるのが理想的ですが、用意できない場合は自宅にある椅子などでも代用可能です。
ただし椅子ではトレーニング中に動いてしまう可能性もあるため、ケースによって重りをプラスするなどの工夫を施してみましょう。
ディップスの効果をより高めるには背中をまっすぐにした状態でやや前傾の姿勢をとる、動作全般をゆったりめにすることを意識してください。
一般的な腕立て伏せと違って前後の動きを取り入れたヒンズープッシュアップは、大胸筋全般の筋肉を効率よく鍛えることができます。
もちろん腕立て伏せの一種ですので、大胸筋と同時に上腕三頭筋も鍛えたい方にはおすすめです。
<参考動画>
ヒンズープッシュアップは体を大きく動かすことで大胸筋全般を鍛えていきますので、トレーニング実践中はこのことをしっかりと意識しておきましょう。
またヒンズープッシュアップでは前後に体を動かしますが、左右には動きませんので注意が必要です。通常の腕立て伏せよりも疲労度が大きいため、ある程度体力や筋力が付いたタイミングで実践してみましょう。
<上腕三頭筋を鍛えたい方はこちらもおすすめ!>
女性向けの大胸筋トレーニングで最も定番なのがバストアップポーズ(合掌ポーズ)です。
バストアップポーズは数ある大胸筋トレーニングの中でも簡単、かつ手軽に取り入れることができますので、筋トレ初心者の方にもおすすめです。
やり方自体は非常に簡単ですが、正しいフォームで実践することで大胸筋上部や中部に効率的な負荷をかけることができます。
<参考動画>
バストアップポーズを行うときは猫背にならないように注意しましょう。猫背の状態になると大胸筋にしっかりと負荷をかけられなくなりますので、背中は常にまっすぐを意識しておくことが大切です。
膝立ちプッシュアップは、膝をついた腕立て伏せとなります。
膝をついている分、体にかかる負荷が軽くなっているため、体力や筋力に不安がある女性にも適したトレーニング法です。膝立ちプッシュアップでは主に大胸筋下部を鍛えることができます。
<参考動画>
膝立ちプッシュアップを行うときは一般的なプッシュアップと同様、正しい姿勢で回数をこなすことが重要です。
膝立ちプッシュアップで徐々に体力や筋力がついてきたら、ノーマルプッシュアップへの移行も検討してみましょう。
次はダンベルを使った大胸筋トレーニングをチェックしていきましょう。ダンベルトレーニングのメリットは自重トレーニングよりも効率的に負荷をかけられることです。
ただし、筋トレ初心者や運動不足の方がいきなりダンベルを用いると負担が大きいため、自重トレーニングで体を慣らしてから取り入れることをおすすめします。
ダンベルを使った大胸筋トレではポピュラーなメニューであるダンベルプレス。主に大胸筋中部を効率的に鍛えることができます。
またやり方もダンベルを使った筋トレの中では簡単な部類に入りますので、初心者の方にもおすすめです。
<参考動画>
先ほどもご紹介したようにダンベルプレスは比較的簡単な動作となっています。しかし、初心者の方の場合は大胸筋ではなく、腕の力でダンベルを持ち上げようとするところがあるので注意が必要です。
ダンベルプレスを行うときは腕ではなく、胸の筋肉をしっかりと使うことを意識しておきましょう。具体的にはダンベルを直線に動かすのではなく、楕円(円を若干押しつぶすような形)を描くようなイメージで行うと大胸筋に負荷をかけやすいです。
鳥が翼を広げて飛んでいるようなイメージで行うデクライン・ダンベルフライ。
腕を広げる動作を取り入れることで、主に大胸筋下部に効率的な負荷をかけることができます。
<参考動画>
デクライン・ダンベルフライで最も重要なポイントは、ダンベルをしっかりと胸の横まで下げることです。
またデクラインベンチは約30℃~45℃の角度に設定しておくのがベストです。負荷を大きくしたい場合は角度をつけ、反対に軽くしたいときは緩やかな角度にしてください。
ダンベル・スクイズプレスは2つのダンベルを密着させる動作を取り入れたトレーニング法です。
ダンベル・スクイズプレスでは主に大胸筋の中部に効果的な負荷をかけることが可能です。
<参考動画>
ダンベル・スクイズプレスで大胸筋に正しい負荷をかけるコツは、常にダンベルはくっつけた状態を意識しておくことです。
回数を重ねていくと疲労やスタミナ切れによりダンベルが離れていってしまう方も多いです。しかし、このような状態は大胸筋にかけた負荷が他の部位に分散し、効果が半減してしまうため、注意しておきましょう。
ダンベルプルオーバーは大胸筋を縦に縮めることで上半身痩せやバストアップなどの効果を期待できます。
特に大胸筋下部を効率的に鍛えたいといった方にはおすすめのトレーニングです。
<参考動画>
ダンベルプルオーバーを行うときの注意点ですが、肘の角度は必ず曲げた状態にしておきましょう。これは肘の角度がまっすぐの状態になっていると、大胸筋への負荷が半減するためです。
ちなみに当記事ではダンベルプルオーバーを女性向けのトレーニングとしてご紹介していますが、ダンベルを使った大胸筋トレーニングは負荷が大きいため、男性にもおすすめできます(実際にダンベルプルオーバーを実践している男性は多いです)。
インクラインダンベルプレスはベンチに角度をつけて行うダンベルプレスです。頭を斜め上にして行うベンチプレスのため、主に大胸筋上部に効率的な負荷をかけることができます。
<参考動画>
インクラインダンベルプレスは通常ベンチを使って行うものですが、用意できない場合はバランスボールで代用することもできます。インクラインダンベルプレスの主なコツは、ダンベルをムリに上げ下げしないことです。
これはムリをしすぎると肩に余計な力が入ったり、大胸筋への負荷が弱まったりする可能性があるからです。筋トレ初心者の方は大胸筋に適度な負荷がかかっていると感じるポイントで止めるように意識しておきましょう。
なおインクラインダンベルプレスも女性向けのトレーニングとしてご紹介していますが、大胸筋にかかる負荷は大きいため、男性にもおすすめできます。
続いては専用マシンやジムに置かれていることが多い器具を用いたトレーニング法を解説します。
ジムでのトレーニングは自重トレーニングや自宅での筋トレよりも安全、かつ高負荷をかけられるのが大きなメリットです。
なおここでも後半に女性向けのトレーニングを2つご紹介していますが、ジムでの筋トレは全般的に負荷が強いものが多いため、女性だけではなく男性も参考にしてください。
高重量のバーベルを使った大胸筋トレーニングは正しいフォームで行えば強烈な効果を得ることができます。また、バーベルを使ったベンチプレスは大胸筋全般の筋肉に刺激を与えられるのも魅力的です。
<参考動画>
バーベルベンチプレスは数ある筋トレの中でトップクラスの負荷がかかるともいわれていますので、とにかくケガだけには注意しておきましょう。
最初はバーのみを使ってストレッチ運動を行うとケガの予防にもつながりやすいです。
ジムのマシントレーニングで大胸筋の基本種目ともいわれているのがチェストプレスです。
チェストプレスは大胸筋の力を利用して、押す動作を取り入れたトレーニング方法であり、比較的難易度が低いことでも知られています。
シートの高さを低くすれば大胸筋上部、高くすることで大胸筋下部を効率的に鍛えることができます。チェストプレス用のマシンは多くのジムに設置されているため、近所のスポーツジムなどでも実践できる可能性が高いです。
ジムの大胸筋トレーニングの中では初心者向けともいわれていますので、積極的に取り入れていきましょう。
チェストプレスを行うときは常に肩の位置を確認しておきましょう。
回数を重ね疲れが溜まってくると自然と肩が上がってしまう方が多いです。肩が正しい位置より上になると、大胸筋に効率的な負荷をかけるのが難しくなってしまうため、注意が必要です。
左右にあるバーを胸の方向に向かって閉じていくバタフライマシン。
胸の筋肉を左右に引き伸ばす動作を伴うため、大胸筋中部を効率的に鍛えることができます。
バタフライマシンを使ったトレーニングでも肩が上がりすぎないように注意しましょう。
また、バーを握ることに気を取られて背中が丸まってしまう方もいますので、上半身はまっすぐの姿勢を意識しておくことが大切です。
ケーブルフライはバタフライマシンと比較するとやや扱いにくい種目となりますが、バストを寄せる作用がある大胸筋中部を鍛えることができるため、女性にも推奨されているトレーニング法です。
ケーブルフライは高重量で負荷をかける種目ではないため、軽めの重量に設定して行うのが理想的です。
ジムでのトレーニングが初めての女性などにはバーベル感覚で筋トレを行うことができるスミスマシンベンチプレスがおすすめです。
スミスマシンベンチプレスは一般的なベンチプレスとやり方はほぼ同じですが、こちらはバーの軌道が固定されているため、ケガの心配をすることなく強い負荷をかけたトレーニングが可能となります。ベンチプレスと同様、大胸筋全般を鍛えられるのも大きなメリットです。
スミスマシンでのベンチプレスは安全性も高いため、ベンチプレスの基本フォームを習得したい方にも適しています。ただし軌道が安定しているとはいってもムリな重量を扱うのは危険なため、あくまでも自身に合った重さでチャレンジするようにしてください。
一般的な方であれば筋トレやトレーニングなどは自宅で行うことが圧倒的に多いです。そこでここでは自宅で効率的に大胸筋を鍛えられるおすすめ定番グッズや器具をご紹介します。
前述のようにダンベルを使った大胸筋の筋トレは種類も非常に豊富ですので、自分専用のものを1個所有しておいたほうが効率的なトレーニングが可能になります。
ダンベルの中でも特におすすめしたいのが可変式のタイプです。可変式ダンベルは1台で何通りもの重量に変更できるダンベルのことを指します。従来の固定式のダンベルは異なる重さに変更したいときに、別のダンベルを購入する必要があります。
しかし、可変式タイプはダイヤルやボタンで数字を指定することで希望の重量に変更できるため、1台で筋肉の成長に合わせたトレーニングが可能になります。
一般的なダンベルよりも価格は高くなりますが、長期に渡って自宅トレーニングを行う方は1台所有しておくと効率性アップなどの効果が期待できるでしょう。
また、大胸筋はチューブを使っても鍛えることができます。チューブを使った筋トレ(チューブフライ、チューブチェストプレスなど)はダンベルやバーベルよりも強度が軽く、バストアップ効果も期待できるため、筋トレ初心者や女性の方にもおすすめできます。
「筋トレといえばプロテイン」ともいわれるほど、筋肥大を目指す多くの方から支持されているプロテイン。
プロテインはタンパク質を効率的に摂取できるアイテムです。筋肉はタンパク質を栄養源にして構成されているため、不足すると効率的な筋肥大を促すことができません。
また、ここ数年でプロテインと同様に注目を集めつつあるのがHMBです。正式名称「βヒドロキシβメチル酪酸」のHMBは筋肉の合成を促し、かつ分解抑制の効果も期待できる物質です。
HMBは必須アミノ酸の一種であるロイシンから体内で合成されますが、その生成量はごくわずかです。そのため、筋肉を効率的につけるにはHMBを摂取することが推奨されています。
プロテインとHMBは摂取したただけで筋肉量を増やせるものではありませんが、しっかりとトレーニングを行っている方であれば大きな効果を見込める可能性は非常に高いです。よって継続的、長期的に筋トレを行っている方にはおすすめのアイテムといえます。
<プロテインやHMBが気になる方はこちらもおすすめ!>
今回は上半身に位置する大胸筋の筋トレ方法などを解説しました。大胸筋はバランスよく鍛えることで厚く、きれいな胸板を実現することができますし、女性であればバストアップなどの効果も期待できます。
一般的に大胸筋は変化が現れるまでの期間が早いともいわれていますので、筋トレ初心者の方でも継続しやすいのがメリットです。
ただし間違ったフォームなどで行ってしまうと、筋肥大を促進させるのは難しくなります。そのため、大胸筋の筋トレを始める前にしっかりと正しいトレーニング方法などを学んでおくことを推奨します。