デッドリフトは体幹や下半身を全体的に鍛えられるので、筋肥大のためによく活用されています。しかし、デッドリフトは腰を痛める危険な種目としても有名です。
「デッドリフトで腰痛になってしまった…」という人は多いです。腰痛って本当につらいですよね…。腰痛になると筋トレや日常生活に悪影響が出てしまいます。
できることなら、腰を痛めずにデッドリフトを続けたいですよね。
そこで今回は、デッドリフトで腰を痛めた場合の原因や対処法、デッドリフトにおける正しい腰の使い方を詳しく解説していきます。
目次
デッドリフトで腰痛が発生する場合は、いくつかの症状が出てきます。痛みの程度や原因によって軽症と重症に分けられます。
場合によってはそのまま筋トレを続けると危険なこともあるので、まずはデッドリフトで生じる可能性のある腰の症状や原因を確認しておきましょう。
デッドリフトでは複数の大筋群が非常に強い負荷で鍛えられるため、筋繊維が受けるダメージもそれなりに大きくなります。
デッドリフトの腰痛は、主に筋肉の損傷が原因で、そのほとんどは軽症です。
筋トレ後に腰が痛くなったときでも、他の部分と同じ程度の痛みであれば特に心配する必要はありません。高負荷の筋トレをすればどんな部分でも筋肉痛が発生するからです。
軽症の腰痛の場合は、数日ほど安静にすれば筋肉が回復して痛みは解消されます。
腰が痛くなると不安になりますが、数日で回復する範囲の腰痛であれば問題ありません。
ただし、腰の痛みがあまりひどい場合は重症化している可能性があるので注意が必要です。
例えば、歩くのがつらくなるほど腰が痛くなったり、数日経過しても痛みが続いたりする場合です。
デッドリフトで注意すべきなのは重症化した腰痛です。
例えば、ぎっくり腰(急性腰痛症)など日常生活に支障をきたす激しい痛みです。
ぎっくり腰になると歩くことさえ難しくなるので、可能な限り避けたいですよね。
デッドリフトが腰痛をもたらす最大の要因は、「中腰で重い物を持ち上げる」という動作にあります。ぎっくり腰の原因と全く同じなので、デッドリフトでぎっくり腰を発症することは意外とあるのです。
重症の腰痛はぎっくり腰の他にも、筋肉の断裂や肉離れが原因のこともあります。
いずれの場合も長期間の休養が必要になるので、筋トレ中に違和感や激痛を感じたときは、医師の診察を受けましょう。
デッドリフトで起こり得る最悪のケースは、「椎間板ヘルニア」になってしまうことです。
椎間板ヘルニアは、腰椎を支える椎間板(軟骨)の一部がはみ出て神経を圧迫してしまう疾患です。
椎間板ヘルニアでは、ぎっくり腰のようなひどい腰痛が長期間にわたって続きます。
一度発症すると再発率も高いので、筋トレをする人にとってはとてもつらいものです。
こういった重症化する可能性のある腰痛は、主にデッドリフトの負荷が強すぎることや、間違ったフォームで筋トレを続けていることが原因です。
そのため、通常の筋肉痛とは違う激しい痛みや痺れを感じたら要注意です。
デッドリフトは腰にかなり負担が掛かるトレーニングです。腰を痛めるリスクは他の種目より高いため、実施の際は注意が必要です。
「でも、デッドリフトで本当に腰を痛めるの?」と疑問に思った方もいらっしゃるかもしれません。
そこで、デッドリフトで痛める可能性のある筋肉や、実際に痛めてしまったという症例を確認しておきましょう。
デッドリフトで腰痛になった場合、その原因のほとんどは筋肉へのダメージです。デッドリフトでは、次の3つの筋肉を特に痛めやすいです。
脊柱起立筋は背筋群の中で最も大きく、体幹部を伸展させる役割のある筋肉です。デッドリフトのメインターゲットは脊柱起立筋です。
脊柱起立筋は中腰の状態から体を起こすときに力を発揮するため、デッドリフトで特に刺激されやすい部分です。
トレーニングの負荷があまり強すぎるとこの筋肉を痛め、ぎっくり腰になってしまうので要注意!
ハムストリングスは太ももの裏側にある筋肉です。大腿二頭筋・半腱様筋・半膜様筋という3つの筋肉から構成されており、非常に大きな筋肉です。
ハムストリングスは膝関節を屈曲させる役割を担っており、歩行動作に欠かせない筋肉です。
デッドリフトは膝関節を駆使してウエイトを動かすので、ハムストリングスにも大きな刺激が加わります。
大殿筋はお尻にある筋肉で、人体でとても大きな筋肉です。
大臀筋は股関節の伸展動作に関わっており、日常生活のほとんどの動作に関係しています。デッドリフトでも強く刺激されやすい筋肉です。
大臀筋の痛みには注意が必要です。
痛む場所が頻繁に変わったり痺れるような痛み(座骨神経痛)を感じたりする場合は、椎間板ヘルニアを発症している可能性があります。
それでは、実際にデッドリフトで腰を痛めてしまったという症例を、SNSの投稿からご紹介します。
このように、デッドリフトで腰痛を発症してしまった例は、SNSなどの投稿によって数多く報告されています。
やはり、デッドリフトは腰を痛めるリスクの高い種目だと言えるでしょう。
「腰痛持ちだけど、デッドリフトしても良いの?」という悩みを抱えている人は多いはず。
実は、デッドリフトは正しくやれば腰痛持ちでも大丈夫な種目です。
腰痛には様々な原因がありますが、比較的多いのは悪い姿勢や筋力の低下です。
つまり、デッドリフトで脊柱起立筋など腰まわりの筋肉を鍛えれば、腰痛を改善できる可能性があるのです。
ただし、すでに椎間板ヘルニアなど腰の重大疾患を抱えている場合は、デッドリフトを行ってはいけません。
椎間板ヘルニアから回復した後でも、再発の可能性があるのでデッドリフトは避けましょう。
デッドリフトは腰痛の原因になりやすいですが、だからといってデッドリフトが悪い種目だということではありません。
なぜデッドリフトで腰痛になる人が多いのかというと、この種目は「正しいフォームで行うのが難しい」からです。
したがって、すでに腰痛を抱えている人は自分で解決しようとするのではなく、トレーナーの指導を受けながらデッドリフトを行うようにしましょう。
椎間板ヘルニアのような重大疾患がない場合は、基本的には腰痛があってもデッドリフトを行って構いません。
ただし、腰痛の悪化を防ぐためにデッドリフトのやり方、特に正しい腰の使い方を知っておく必要があります。
まずは、デッドリフトの正しいフォームや姿勢を確認しておきましょう。
<参考動画>
以上のフォームがデッドリフトの基本です。とても多くのことを意識しないといけないですね…。
やはり、フォームの複雑さがデッドリフトでケガをしやすい要因なのでしょう。
「そもそもフォームが簡単にできるなら腰を痛めないよ」と思った方も多いはず。
確かに、デッドリフトがフォームどおりに行いやすい種目なら、こんなに多くの人が腰を痛めることはありませんよね…。
そこで、次の3つのポイントを強く意識するようにすると、デッドリフトの安全性を高めることができます。特に、腰の使い方が重要です。
デッドリフトを安全に行うために、「背中を丸めない」ことが最も大切です。
そのために、肩甲骨をしっかり寄せて胸を張るようにしましょう。普段からベンチプレスを行っている人は意識しやすいかもしれませんね。
背中を伸ばして中腰になろうとすると、自然と「出っ尻」になるはずです。
まずは、お尻を後ろに突き出すイメージで背筋を伸ばすようにすると、背中を丸めずに行うフォームが身につきやすいです。
デッドリフトを安全に行うために、バーベルの軌道にも意識を向けましょう。
デッドリフトではバーをできるだけ体に近づけることが大切です。特に、地面に近いところでバーが離れないよう注意が必要です。
体から離れるほど重心が前に偏ってバランスが崩れます。
バランスを取り戻すためには腰に力を入れなければならないので、腰への大きな負担になります。
バーベルの重さに耐えて背筋を伸ばすために、腹圧を高めることを意識しましょう。
腹筋にぐっと力を込めると腹圧が高まります。
さらに、パワーベルトのようなトレーニングギアを活用すると、腹圧を安定して高めることができるのでオススメです。
デッドリフトを安全に行うためには、とにかく姿勢の作り方が重要です。
でも、そこを意識しながらバーベルを動かすのはかなり大変。
そこで、腰をサポートできるトレーニングギアやグッズを活用して、デッドリフトの安全性を高めましょう。
腰に不安のある人がデッドリフトを行う場合は、必ず「リフティングベルト」を使用するようにしましょう。
リフティングベルトは腰に巻くベルトで、ハードな筋トレをするときの必需品です。
リフティングベルトは腹圧を高めて、腰の負担を大きく減らしてくれます。腹圧を高めると体幹部の安定性が増して、通常より大きな力を発揮することができます。
ただし、リフティングベルトは正しく巻かないと効果を発揮できません。
できるだけキツく巻くために、お腹を目一杯にへこませてから巻き付けるのがポイントです。
リフティングベルトを巻くとかなり苦しくなります。
そのため、セット間のインターバルでは一度ベルトを緩めましょう。次のセットを始めるときにまた巻き直します。
リストストラップはバーベルを保持するためにバーに巻き付けるものです。
腰の保護には直接関係がないように思えますが、リストストラップは腰に意識を集中させるために役立ちます。
デッドリフトで扱うウエイトはかなり重いです。これを手の握力だけで支えるのは大変で、手に余計な力を集中させないといけません。
そうなると、バーベルの軌道や姿勢に意識を集中させづらくなります。
リストストラップをバーベルに巻きつきておくと、デッドリフトのフォームを安定させやすくなり、腰への負荷を低減させることができます。
他の多くの種目でも活用できるので、ぜひ取り入れることをオススメします。
デッドリフトのような高負荷の筋トレを、素手や軍手で行うのは非常に危険です。
バーベルを持つ手が汗で滑って足下に落としたり、手にマメが痛んだりして筋トレに集中できないからです。
手元に自然に力を込めてバーベルを保持できなければ、腰回りに意識を集中させづらくなります。
トレーニンググローブはバーベルが滑りにくくなるように設計されているため、バーベルを扱いやすくなります。
その結果、脊柱起立筋やハムストリングスなどに、ダイレクトな負荷をかけられるようになります。
トレーニンググローブを活用すると、デッドリフトの効果を高めながらも腰を保護しやすくなるのです。
デッドリフトで痛めやすいのは腰だけではありません。
デッドリフトは膝関節を曲げ伸ばす運動を繰り返すため、膝も痛めやすいのです。特に、両足のスタンスが狭めの時は、膝の屈曲が大きくなってリスクが高まります。
そこで、デッドリフトをやるときは「ニースリーブ」があると安全です。
ニースリーブは、膝関節を保護するために締め付けて、膝の屈曲伸展を補助するサポーターです。
ニースリーブは、スクワットのような膝の動作が多い種目で特に有効です。そのため、下半身を鍛えるときは常用するようにすると良いでしょう。
筋トレは激しい運動を繰り返すものなので、腰や腰などをどうしても痛めやすくなります。
ケガをすると日常生活での動作時につらいことが増えます。いろいろなグッズを上手に使って安全に鍛え、ケガを未然に防ぎましょう!
「もうデッドリフトで腰を痛めてしまった…」という方もいらっしゃるはず。
なんとかしてつらい痛みを和らげたいですよね…。
マッサージや針治療なども有効ですが、自宅で手軽にできる方法はないのでしょうか?
痛めた腰をケアするために、次の3つの方法を取り入れてみることをオススメします。
体の痛みを和らげるためには、やっぱりストレッチですよね。
筋トレ後のストレッチだけではなく、腰痛持ちの方は日常的に腰まわりのストレッチを行うようにしましょう。
ストレッチにも様々な種類のものがありますが、体をゆっくり伸ばしていく「静的ストレッチ」が基本です。
無理をせず自分のペースで気持ちいいように伸ばし、できるだけ毎日続けましょう。
椎間板ヘルニアのような筋肉のダメージが原因でない場合も、ストレッチは痛みの軽減に有効です。ただし、ストレッチで痛みがひどくなった場合は中止しましょう。
また、筋トレ時に激しい痛みを感じたときはストレッチしてはいけません。
この場合は筋断裂や肉離れの可能性があり、ストレッチで悪化するからです。すぐ医師の診断を受けて筋肉を安静にしましょう。
ストレッチもできないほど腰が痛いときは、まず痛み自体を緩和させることが先決。
体を動かせないほど痛みがひどくても、湿布を貼るとなんとか動けるようになることもあります。
ただし、湿布は痛みを軽減させるものであり、完治させるものではありません。
湿布を貼って痛みを軽減したうえで、可能な範囲でストレッチを行うようにすると、少しずつ腰の状態が改善していくでしょう。
お風呂に入ると体が温まって気持ちいいですよね。
腰が痛いときもお風呂で温めると痛みも和らぎます。39~40度くらいの適切な温度でじっくり温めましょう。
風呂で温めた後にストレッチをすると、筋肉を伸ばしやすいのでとても効果的です。毎日続けていくと、ひどい腰痛も少しずつ改善していきます。
ただし、筋断裂や肉離れなど急性の痛みのときは温めてはいけません。
筋トレ時に激痛を感じたときはまず患部を冷やして、医療機関を受診してください。
実は、デッドリフト以外にも腰を痛めるリスクの高い種目があります。
腰の状態が回復するまでこれらの種目は避けましょう。
安全性をできるだけ高めたい場合は、常に他の種目で代用するのも有効です。
「シットアップ」は腹筋運動のことで、仰向けに寝た状態から腰を曲げて体を持ち上げる運動です。
体育の授業や部活動などでやったことがある人も多いはず。
シットアップは自重トレの定番でしたが、近年では腰痛の原因になるとして問題視されています。
腰に不安がある人はシットアップを絶対に行わないようにしてください。
シットアップの問題点は、上体が完全に起きるまで体を起こすという運動方法にあります。これでは腰にかかる負担が大きすぎて、長期間続けると腰を痛めます。
さらに、シットアップで体を起こすときに、腰を左右にねじる動作を組み合わせることもありますが、こちらはさらに危険です。
椎間板ヘルニアになる可能性もあるので、腰痛の有無に関わらず絶対に止めましょう。
そもそも、シットアップは労力や腰への負担の割に、効果の低い種目。腰痛の有無に関係なく、シットアップは行わないようにすべきです。
腹筋を鍛えたい場合は、シットアップではなく「クランチ」を行いましょう。
<参考動画>
こちらは腰に余計な負担をかけることなく、安全に腹筋を鍛えることができます。
下半身の筋トレ種目では「スクワット」も有名ですが、こちらにも腰を痛めるリスクがあります。
スクワットの中にはバーベルを担いで膝を曲げ伸ばし、脊柱起立筋や大腿四頭筋を鍛える種目があります。
<参考動画>
スクワットはデッドリフトと同じで、フォームに注意が必要な種目です。
腰が丸まっていても反っていても腰痛の原因になるからです。
さらに、正しく行わないと腰だけでなく膝を痛めるリスクもあります。
スクワットは正しいフォームで行えば安全に行えますが、腰痛持ちの人はどうしても腰へのダメージが気になるはず。
そこで、安全性を重視する場合は「レッグプレス」などのマシントレーニングを行うようにしましょう。
基本的に、マシントレーニングはウエイトの軌道や姿勢が固定されるので、バーベル等のフリーウエイトより安全です。
だからといって乱暴にやっても良いということではないので、レッグプレスも正しいフォームで行うようにしましょう。
「シーテッドローイング」は座ってローイングを行うマシントレーニングで、ロープーリーとも呼ばれます。
主に広背筋や大円筋を鍛えられる種目ですが、間違ったフォームで行うと腰を痛めることがあります。
この種目はウエイトを後ろ側に引っ張って背筋全般を鍛えるため、上体はまっすぐ起こしたまま行います。
ところが、体を大きく後ろに倒してウエイトを引いてしまうこともあります。
この動作は腰に大きな負担が掛かるので止めてください。
もし体を倒さないとウエイトを引けないなら、ウエイトが重すぎます。フォームを崩さず動作できる重量を選びましょう。
シーテッドローイングやワンハンドロウなど広背筋を鍛える種目は、背中の筋肉全体を活用します。
そのため、腰痛持ちの人は正しいフォームで行っていても、動作中に少なからず腰に痛みを感じます。
広背筋を安全に鍛えたい場合は「チンニング(懸垂)」を行うようにしましょう。
懸垂は自重トレーニングであるため軽視されがちですが、実はかなり強い負荷をかけられる種目なのです。
今回は、デッドリフト実施時に腰への負担を和らげる方法を見てきました。
筋トレを楽しむ人にとって腰痛は天敵。デッドリフトは腰を痛めるリスクが特に高いですが、筋肥大効果が高い魅力的な種目でもあります。
デッドリフトは正しいフォームで行うことが大切で、特に腰の使い方には注意が必要です。腰は曲げず反らさず、腹圧を高めることを意識しましょう。
また、デッドリフトの他にも腰へのリスクが高い種目があります。これらは他の安全な種目に代替可能なので、安全に鍛えていきましょう!