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マラソン前のカーボローディングは是か否か?【管理栄養士が解説!】

佐藤樹里
当サイトの監修・執筆者

ランニングをしている人であれば、マラソンの大会に出ている人、出たいと思っている人も多いのではないでしょうか。

 

練習メニューは組めても、意外と難しいのが大会前の食事。

いざメニューを考えても、

「どんな食事ならコンディションが整うんだろう」

「ネットで調べても情報が散乱していて分かりにくい」と悩みますよね。

 

そこでこの記事では「カーボローディング」について、管理栄養士の佐藤樹里が説明していきます。

佐藤樹里(管理栄養士)
管理栄養士。アスドリファクトリー代表。フィットネスジムでの運動・栄養指導経験後、約1年海外移住をし、現地のレストランでシェフと共に働く。現在はスポーツイベント開催、アスリートへの栄養講座、栄養個別サポートを通算1000人以上に行う。

カーボローディングを取り入れた食事でエネルギー効率アップ!

走る女性

「カーボローディング」とは、グリコーゲンと呼ばれる運動時に必要な成分を通常より多く体に貯蔵するための栄養摂取法です。

 

グリコーゲンを体内に貯めておくことでランニング中に効果的にエネルギーを体に回すことが出来るようになります。

なぜなら、グリコーゲンには余剰の糖分を貯蔵してくれる作用や、直接ブドウ糖に分解できるという効果があるのです。

 

カーボローディングには1つ注意点があります。

走るために必要なグリコーゲンを作る時には水が必要です。カーボローディングをする時は水も合わせて飲むようにしてください。

カーボローディングに向く人、向かない人

フルマラソンであればカーボローディングはおすすめできます。

ランニングしている時間が3~5時間の方、例えばサブ4・サブ5くらいで走れる方でしたら、貯蔵した糖質のエネルギーで走ることができるので、カーボローディングを行うことで結果に結びつきやすくなるでしょう。

一週間くらい前からカーボローディングを行い、グリコーゲンを蓄えてから競技・レースに臨むことで、結果に繋げることができるのではないでしょうか。

 

ただし、長時間の競技に出る方はカーボローディングだけでは有効とは言えないかもしれません

24時間マラソンのような、長期的なエンデュランス系の競技に出る場合は、「糖質のエネルギーだけでは足りず、油のエネルギーも使って動いている」のだとか。

(グリコーゲンは3~4時間で切れてしまうので、油の方が省エネなのですよね。)

 

フルマラソンレベルであれば糖質のエネルギーで体が動くのですが、24時間マラソンやトライアスロンなどの超長時間動き続ける競技になると、途中でエネルギーが足りなくなってきてしまうため、また別に補給が必要になります。

 

最近では、色々なやり方が出てきています。

ランニングの先生や、学者の方によって複数の方法が出ているため「絶対にこの方法が良い!」という決まりはありません。

ここからいくつかの方法をご紹介します。参考にしていただき、自分に合うやり方を見つけていってください。

カーボローディング中の野菜は緑黄色野菜がおすすめ

サラダと女性

カーボローディング中の野菜は、普段通りに食べた方が良いでしょう。

量は一般的に言われている「一日の摂取量」であれば問題ないと思います。

 

私は、緑黄色野菜を意識して摂るようにしています。野菜に入っている鉄分を摂る目的もあります。

あとは抗酸化系のビタミンも摂るために緑黄色野菜のブロッコリー・パプリカ・ほうれん草・トマトなどを食べることになります。

野菜にも炭水化物は含まれているので、細かく気をつけたい場合はご注意ください。じゃがいも、さつまいもなどの芋類は比較的炭水化物が多いので避けるといいでしょう。厳密に取り組む場合は、栄養士をつけた方が良いと思います。

カーボローディングで摂るべき糖質量の目安はPFCバランスで考える

バランス

大会一週間前から炭水化物の摂取量を少なめにし、三日前から一気に増やしていきます。

糖質(炭水化物)を摂取するのを抑えて、体内の糖質を一度枯渇させてから、一気に摂取することでより多くの糖質が身体に蓄積されるといされています。

 

では、どのくらいの量の糖質を摂ればよいのでしょうか?

摂るべき糖質量を把握するために「PFCバランス」の概念を知る必要があります。

PFCバランスとは

1日の摂取カロリーのうち、3大栄養素からから摂ったカロリーの割合のことです。

三大栄養素のタンパク質、脂質、炭水化物。タンパク質(Protein)、脂質(Fat)、炭水化物(Carbohydrate)の頭文字からPFCバランスと呼ばれています。

 

仮に1日の摂取カロリーが1000kcalだったとして、300kcalをタンパク質から、200kcalを脂質から、600kcalを炭水化物から摂ったとしたら、P:30%、F:20%、C:60%ということになります。

 

<PFCバランスの具体的な計算方法はこちら!>

筋トレ時のカロリー摂取の適量は?PFCバランスの計算方法【管理栄養士監修】

カーボローディングを用いた大会一週間前からの過ごし方

フルーツなどの写真

わかり易いように1日のカロリー摂取量を2000kcalとした場合で考えていきましょう。

大会7日前〜4日前

低炭水化物食にします。

PFCバランスのうち、Cのバランスは通常50~55%くらいです。

この時期は、それより少し落として1日の摂取カロリーのうち40~50%を炭水化物から摂るようにしましょう。

 

800〜1000kcalを炭水化物から摂取することになります。つまり、グラムに換算すると250g、お茶碗一杯のごはんにはおよそ60g含まれているため、お茶碗4杯くらいは食べられますね。

ただ、他の色々な食べ物に炭水化物が入っているので、朝昼晩お茶碗一杯ずつくらい食べて、あとは野菜や調味料、副菜類などを食べれば、だいたい250g/日くらいの摂取量になるのではないかと思います。

 

過去に行われていたやり方だと最初の3~4日間はもう少し炭水化物の摂取量を抑えていたのですが、このやり方でやっていたら体調の悪化を訴える選手が多かったため、50%ほどのやり方が提案されたと言われています。 (参考:2017年出版 NextPublishing Authors Press 山本義徳 『アスリートのための最新栄養学(上)』)

大会3日前〜1日前

摂取カロリーの70%を炭水化物から摂取します。

2000kcalのうち、1400kcalを炭水化物から摂ることになりますお茶碗換算だと6杯くらいですね。

 

一週間前ともなるとトレーニングも並行して行っていることが多く、一度グリコーゲンが枯渇した状態になっていると思われます。

枯渇状態から一気に炭水化物を摂取することによって、グリコーゲンを最大限まで蓄積することができると言われています。

 

ただ、1日お茶碗6杯もごはんを食べるのは中々大変ですよね。そのため、GI値が高い炭水化物を取ることをおすすめします。

GI値を意識して食べましょう

GIとはグリセミック・インデックスの略で、糖質を摂取してからの血糖値の上昇具合を数値で表したものです。GI値が高い=吸収が早いということになります。

最初の一日はグリコーゲンの合成が活発になっているので、出来るだけすぐに吸収できるようなものが望ましいです。例えば、白米やもち、うどんなどを摂るようにすると良いでしょう。

ちなみに、同じ炭水化物でもパンはおすすめしません。炭水化物以外にも油も取ってしまうことになってしまうので、アスリートの方にはおすすめできないのです。

 

最初の1日目は高 GI のもの(白米やうどん、もち)して、2〜3日目は中 GIの食品(そば、さつまいも、大麦、全粒粉パン)、炭水化物なんだけどちょっとだけ食物繊維が入ってるような食べ物、を取ってあげるといいのではないかなと思います。

参考:「GIについて学ぼう」

大会当日

私の場合は、フルマラソンの前は下記のような食事を摂っています。

・試合の3時間前くらいに、おにぎりを1〜2個。

・試合の1時間半〜2時間前にはバナナとみかんを1個ずつ。

 

バナナやみかんで摂取出来る炭水化物は、「果糖」に分類されます。

果糖はおにぎりなどの炭水化物の種類よりも果糖の方が吸収が早いため、すぐにエネルギーになるという効果があります。

バナナに含まれるマグネシウムやカリウムなどのミネラルは、どちらも筋肉の収縮に関わるミネラルなので、足がつるのを予防する目的で摂っています。

 

みかんはビタミンCやクエン酸が含まれています。

ビタミンCが抗酸化作用があり、走ってる時はやはり酸素をたくさん取り込む=体が酸化しやすいので、ランナーの人はビタミンCの摂取を意識すると良いと思います。

 

クエン酸は、カーボローディングの効果を上げるために重要だと言われています。

クエン酸には「糖質をエネルギーに変える酵素」を阻害する効果があります。

走る前はエネルギーに変えずに蓄えたいので、クエン酸を併せて取ることによってエネルギーに変わらないようにし、走っている時に効率的に使えるようにします。

効率的にグリコーゲンを蓄積するためには、毎食後にクエン酸を1~2gづつ飲むのがおすすめです。

当日の食事は食物繊維や油物を避けよう

ごぼう

胃にガスが溜まると体が重たく感じられてしまうので、食物繊維はあまり摂らないようにしています。特にごぼうなどの根菜類はなるべく取らないようにしています。

ほかには、脂っこいものも避けた方が良いでしょう。

例えば「勝ち飯だ!」といってカツ丼を食べる方もお見かけするのですが、油は消化がすごく悪くて胃の負担になってしまうので、なるべく避けた方が良いでしょう。

食べるなら本当にシンプルなもの、うどんなど、にすると良いのかなと思います。

当日は水分を摂るようにしましょう

水分を補給する女性

適宜水分は摂るようにしてください。

走った後に体重が減っていた場合、ほぼ汗で減ったものなので、水分補給が重要になります。”のどが乾く前”に補給するようにしましょう。

 

フルマラソン前に体重計ってフルマラソン後に測ってみて、体重が変わっていない方が良いとされています。

もし体重が減っていたら、その分だけ水分が失われてしまっているということになります。

管理栄養士ランナーが実際にやってしまった失敗

休憩する女性

自分の実体験なのですが、フルマラソン前の最後の練習のタイミングくらいでしょうか…

練習した後にご飯食べに行くことがあるのですが、その時にお酒を飲んじゃったことですね。

 

その時は対策を何もしていなくて、お酒を飲むのを避けたくないとしたら、プロテインを飲んでからお酒飲んで、飲み会のあとにプロテインを飲む、のようにタンパク質を挟んでおけば良かったなと思います。

 

<運動する人にお酒がもたらす影響については、下記の記事からどうぞ!>

筋トレ時のカロリー摂取の適量は?PFCバランスの計算方法【管理栄養士監修】

カーボローディングで努力を結果に結びつけよう!

普通に生活する分には、炭水化物を摂りすぎないように生活するのが良いと思いますが、最初にお伝えした通り、大会などで良い結果を出すためには事前にコンディションを整えることが本当に大事になってきます。

 

今度参加する大会があれば、その際はカーボローディングを取り入れてみてください。

 

−そのほかのフルマラソン1週間前の過ごし方についての記事−

<2017年大阪マラソン優勝の木下選手が大会1週間前の過ごし方を解説!>

パフォーマンスUP!マラソン大会1週間前~当日まで気をつけるべきポイント

<練習5カ月で3時間10分台を達成した市民ランナーが実践した大会1週間前の過ごし方!>

【横浜マラソン実践レポート】マラソン大会1週間前の過ごし方

この記事を書いた人
佐藤樹里
管理栄養士

MYREVOはパーソナルトレーニングジム、ヨガスタジオ、
ストレッチ、ダイエット、ランニングに関する
プロ集団が著者・監修を担当

パーソナルトレーナー

山本耕一郎

パーソナルトレーナー

斎藤裕香

パーソナルトレーナー

松浦晴輝

パーソナルトレーナー

YOKO

フィジーカー

栗原強太

ストレッチトレーナー

福原 壮顕

ヨガインストラクター

斉藤玲奈

管理栄養士

佐藤樹里

プロランニングコーチ

大角重人

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