スポーツクライミングがオリンピック種目に正式に選ばれてから日本国内での認知度は確実に高まっていて、「ボルダリング」という単語を聞くことも増えたかと思います。
最近は特に趣味でボルダリングを始める人が増えて来ていて、都内にはクライミングジムも増えていますし、友達がやり始めたのを見てちょっと興味が出てきた人や、新しい趣味を作ろうと考えている人も多いのではないでしょうか。
この記事では、ボルダリングの基本的な知識や競技のルールについて解説していきます。ボルダリングを始めてみたいけれど、良くわからない/怖くて踏み出せない人にはぜひ基礎知識を抑えていただき、この世界に飛び込んで来て欲しいです。既にやっている方には、知ることは上達の道の1つだと思いますので、おさらいとして読んでいただければと思います。
太田 裕樹 | |
ヒローズアップ!クライミングクラブのコーチ。ボルダリングの全日本大会である、ジャパンカップにも複数回の出場経験を持つ。 |
目次
屋内でのボルダリングは、スポーツクライミングの種目の1つで、簡単に言うと「4~5mの人口の壁に設定されたコースを登る」スポーツです。コースのことは「課題」とも呼びます。自分のペースで楽しむ事ができ、力もそれほど必要ない事から小さい子どもや女性でも出来るスポーツとして、老若男女に人気を博しています。
ボルダリングのルールはすごくシンプルです。
壁についているカラフルな石(ホールドと呼びます)を使ってコースが作られています。コースによって使っていいホールドが決まっていて、その決められたホールドだけを使って指定されたスタートからゴールのホールドまで行くことがルールです。
指定されたスタートホールドを両手で持ってから登り始めます。ジムにもよりますが、Sと書いてあるテープが張ってある事が多いです。足は好きなホールドにおいていい場合と足を置くホールドも指定されている場合があります。場合によってはスタートのホールドが2個設定されていて、右手・左手などと書いてある場合もあります。
ゴールは指定されたホールドを安定した姿勢で両手で持つことでゴール(クリア)になります。たいていのジムでGと書いてあるテープが張ってあります。
飛びついて両手でちょっと触るだけではゴールしたことにはならず、ちゃんと両手で持って静止できて始めてゴールとなります。両手で持とうとして、触ったはいいけどバランスを崩してすぐ落ちてしまった、というのはNGです。
「このホールドは右手しか使ってはいけない」とか「あのホールドは右足しかかけちゃいけない」といった使い方についてのルールはありません。どの手でどのホールドを持っても良いです。両手で持っても良いですし、コースに指定されているホールドを全て使う必要もなく飛ばして行ってもOK、登る人の自由に出来ます。
ただ、スムーズに登るためにはどちらの手でホールドを持つか考える事が大切で、詳しくは後述しますがゴールまでの登り方を考えることをオブザベーションといいます。
ホールドをどう使ってコースにするかはクライミングジムによって異なります。大きく分けると以下の2つのパターンになります。
ラインセットと呼ばれています。同じ色のホールドだけを使って登るように作られていて、”黄色のホールドだけを使用する”といったコースになります。目で見て非常にわかりやすく、最近はこうしたタイプのコース設定をするジムが増えてきています。
ホールドの横に色々な色・形のテープが張られていて同じ色・形のテープが張ってあるホールドを使ってコースが作られています。
例えば、”水色の四角い形のテープが貼ってあるホールドを使用する”といったコースになります。
行ったことが無い方にはイメージがし辛いかもしれませんが、ホールドの配置は定期的に組み替えられていて、新しいコースが作られています。ホールド替えと言います。
どんなに長くても1年、早いところだと1ヶ月や2週間でホールド替えをするジムがあります。そうして登りに来てくれるお客さんに新鮮な気持ちで登ってもらえるように工夫しているわけです。
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ほんの5・6年くらい前までは、ホールド替えは1年に1度するところが多かったです。その分壁に沢山のホールドが付いていました。それをジムに登りに来るみんなが思い思いにコースを決めて登っていました。
ですが、最近ではコースで使うもののみ壁につけ余分なホールドはつけないジムが増えています。見た目にもスッキリとシンプルで登りやすくなりました。その結果、自分たちで課題を作って遊ぶっていうことが最近どんどん減っているように感じます。時代の流れですが、少しさみしい気がしますね。
大小様々なものがあり、抱えきれないぐらい大きな物から指先をひっかけるのも一苦労という小さなものまで沢山の種類があります。
まずはホールドの持ち方を大きく分けると以下の4つが代表的です。
「がばっと掴めるホールド」ということから、この名が付いています。わかりやすいですね(笑)
表面が丸みを帯びていて、手のひら全体で抑えるようなホールドの事を言います。
指先しかかからないような薄いホールドの事を言います。持ち方を表す場合もあります。
両手でぎゅっとつまむようなホールドのことを言います。持ち方を表す場合もあります。この他にもポケット・ハリボテなど色々な種類があります。
同じ種類のホールドでも傾斜によって持ちやすさが異なるため特定の難易度にならないと出てこないホールドは特にありません。
強いていうならば指先の負担が大きいカチやポケットは少し難易度が上がってから出てくる事が多いです。どのジムでも6級ぐらいからホールドのバリエーションが増えて課題攻略の楽しみが増してきます。
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クライミングジムにもよりますが、だいたいどのジムも10段階くらい設定しています。日本では多くのジムで段級グレードを採用していますが、明確な基準はなく、行くジムによって同じ数字が付いていても難易度が異なるように感じる事があります。
初めてクライミングジムに来た人が、ストレスなく登れるレベルで、はしごを登るような掴みやすいホールドがあったり、足が置きやすい配置になっていたりします。
手の動きのバリエーションが増えたり、足を動かすのに工夫が必要になったりしてきます。まだまだ持ちやすいホールド・起きやすい足が多いです。例えば手を交差するような動きがあったり、両手で持たないといけないところがあったりと、少し変則的な配置になります。
いかにもボルダリングをしているような動きが増えてきます。また、ホールドが横向きになったり、下から持つような形のものがあったりと、持ち方にも工夫が必要になってきます。より攻略の楽しみが増してきます。
まずは優しい課題からチャレンジしてみましょう。完登できたらどんどん難易度を上げてチャレンジしていくか、同じ難易度で色々な課題に挑戦するか、どちらも楽しいのでお好みで。初挑戦で6級ぐらいまで完登する事ができたら素晴らしいです!
傾斜は垂直を基準として考えて、そこからどちら方面に傾くかによって分かれてきます。
奥側に傾斜が緩くなっている(寝ている)壁を指します。だいたい85~6度くらいでしょうか。ジムによって多少異なりますが、テクニカルな登りを要求される傾斜です。
字のごとく垂直になっている、90度の壁を指します。
自分の方に倒れこんで来ている壁のことを指します。だいたい10度刻みで、100度~110度の壁を「薄かぶり」、130度以上になると「どっかぶり」と呼ばれます。
どっかぶりまで来ると結構腕の力が必要になってきます。傾斜が強い分持ちやすいホールドがあったりするので逆に登りやすい、なんていう人もいます。
ジムによってはもっと傾斜が強く、水平に近い角度の壁もあったりします。「これぞクライミング!」という感じで力に自信がある方は是非チャレンジしてみてください。
<登り方に自信がない方はこちらがおすすめ>
クライミングジムによってまちまちではあるのですが壁の高さがだいたい4mくらいになっています。スタートホールドがあるのが1メートルぐらいの場所なのでだいたい3メートル移動するとゴールがあるようなイメージでしょうか。傾斜が強いとその分移動距離が伸びます。
補足ですが、ゴールはたいてい壁の一番高い場所にあるので降りる時はお気をつけください。
普通にクライミングジムで登っている時に、1コースを登るための時間制限はありません。そもそも、そんなに長く壁にはりついている事ができないと思うので気にしなくてOK!
壁の途中でホールドを見失ったり、登り方に迷ってしまった時は疲れ切る前に早めに諦めて、もう一回チャレンジしてみるのも手です。「絶対落ちたくない!」と思って1回で頑張ろうとすると、体力を使い切ってしまってその後何も登れなくなっちゃった!なんていう事も。休憩を上手にとって沢山登りましょう。
登る前にどういう手順・足順で登るのか予想する事が出来るかどうかがそのコースをクリアに大きく関わってきます。非常に大事なポイントです。
この登り前にどうやって登るのか予想することを「オブザベーション」と言います。
言葉そのものの意味は「観察」で、つまり「どのホールドを左右どちらの手で取るか」と動きの想像をすることで、壁の中でスムーズに動けるようになります。スムーズに動けると体力的に余裕が出来て、ゴールがしやすくなりますし、チャレンジ回数も増やすことが出来ます。
<オブザベーションの詳しいやり方はこちら>
ボルダリングをやるイメージは出来たでしょうか。思っていたよりは簡単だったのではないでしょうか。用語はたくさん出てきましたが、ルールは本当にシンプルです。
壁についているカラフルな石(ホールド)を使ってコースが作られていて、各コース(課題)で使うホールドが決められていて、決められたものだけを握って/足をかけて、スタートからゴールのホールドまで行くだけです。
初めての方も、力の弱い方でも始めやすいので、良かったらぜひ、お近くのジムで体験をしてみてください!