ランニングが終わった後に身体の節々に筋肉痛を感じたことのある方は多いと思います。
実は筋肉痛だと思っていた部分がケガをしていたというケースも少なくありません。
この記事では、ランニングで筋肉痛が起こる原因と筋肉痛にならないための予防法を徹底解説します。
目次
「普段から鍛えてないから筋肉痛になる」と思っている方は多いですが、実は「フォームが悪い」ことや「筋肉量が少ない」ことで筋肉痛は発生します。
まずは、ランニングで筋肉痛になる原因について詳しく解説します。
ランニング後に筋肉痛になる理由の1つは、筋肉力不足であると考えられます。
ランニングでは着地をするたびに大きな衝撃を受けます。
このときに大腿四頭筋(太もも前)や前脛骨筋(スネの前)、中臀筋(お尻の横)の筋肉が力を発揮するのですが、これらの筋肉は運動習慣のない人にとっては日常的に使われる筋肉ではありません。
年齢にともない筋力が落ちている人や、運動習慣のない人にとっては、ランニングをするだけでも筋肉痛が現れることがあります。
ランニング後に筋肉痛を発生させる原因として、悪い姿勢が続いていることが考えられます。
フォームや姿勢が悪いと本来使わない筋肉に刺激が加わるので、筋肉痛を発生させやすくなります。
特に、ハムストリングス(太もも裏)は、脚を大きく蹴り出し、推進力を上げる役割を担っています。
ハムストリングス(太もも裏)の柔軟性の低下により股関節の可動域が低下すると、本来、ハムストリングスがおこなう股関節伸展の動作を腰の動きで代償することがあります。
腰は可動性よりも安定性が重視される部位なので、代償動作(=この場合は股関節の動きを補うために腰が使われること)によって過伸展が続くことにより、筋肉痛だけではなく「伸展型腰痛」を発症するリスクも高くなります。
走動作では特定の部位だけではなく、さまざまな筋肉が相互に力を発揮して身体を動かします。
ここからは、ランニングで筋肉痛になりやすい部位と、その部位がどのようなシーンで力を発揮しているのか解説します。
一般的にふくらはぎと呼ばれている部位は腓腹筋とヒラメ筋で構成されています。
ふくらはぎは、地面に足が着地をして、再び蹴り出すときに最も力を発揮します。
ランニング後にふくらはぎの筋肉痛を感じる場合は、足首の柔軟性を上げることが大切です。
足関節の可動域が狭くなると、ふくらはぎの筋肉の力だけに頼ってしまうので、過負荷になる恐れがあります。
また、ふくらはぎとアキレス腱は密接な関係にあるので、アキレス腱断裂などの大きな怪我につながる可能性もゼロではありません。
まずは、足関節の柔軟性をあげてふくらはぎだけに負荷を与えないようにしましょう。
太ももの表側は大腿四頭筋と呼ばれる筋肉です。
大腿四頭筋はその名の通り、四つの筋肉が集まった総称です。
大腿四頭筋は、地面に着地をするときの衝撃で身体のバランスが崩れないように力を発揮しています。
大腿四頭筋が過度に使われてしまうと、筋肉の付着部分である膝の下や股関節の付け根部分に痛みが生じてきます。
骨盤が後傾して猫背気味の人は大腿四頭筋が過度に使われてしまうので、胸を張りながらランニングすることを心がけましょう。
大腿四頭筋のストレッチはもちろんのこと、ハムストリングスの筋力を上げることも大切です。
太もも裏側はハムストリングスと呼ばれる筋肉です。
ハムストリングスは脚を後ろに蹴り出すときに力を発揮します。
身体を前に運ぶときに使われる筋肉なので。ランニングにおいて負担もかかりやすくなっています。
特に、負荷を上げるために坂道ダッシュばかり繰り返すと、ハムストリングスや膝に負担がかかりやすくなります。
ランニングはコースによって使われる筋肉が変わるので、平坦な道や下り坂のコースも取り入れるようにしましょう。
また、ハムストリングスの柔軟性が低下すると、股関節の伸展を腰で代償することになるので、腰痛の原因にもなります。
ランニング前はハムストリングスのストレッチを心がけましょう。
おしりは大臀筋や中臀筋と呼ばれる筋肉が中心です。
中臀筋はおしりの横、大臀筋はおしりの表側と覚えておきましょう。
おしりの筋肉は地面に脚が着地をしたときから再び蹴り出すときに働きます。
中臀筋は、地面に脚が着地したときに体幹がブレないように身体を支える役割を担っています。
中臀筋の筋力低下をカバーするためには大腿四頭筋の中でも内側広筋を鍛えましょう。
また、大臀筋は脚が地面に着地をしてから再び蹴り出すときに働きます。
ハムストリングスに力が入っていないと、大臀筋の力に頼りがちになるので、胸を張り骨盤を前傾させた姿勢を意識してランニングをしてください。
腰回りには、腸腰筋や脊柱起立筋、腹直筋などの筋肉があります。
これらの筋肉はランニング中の激しい動きの中でも正しい姿勢を保つ役割があります。
腸腰筋や腹直筋など、身体の前面に位置する筋肉だけが筋肉痛になっている場合は全体的に姿勢が猫背気味になっていることが考えられます。
ランニングのときには顎を引いて胸を張り、遠くを見ながら走るように意識しましょう。
また、裏側に位置する大臀筋やハムストリングスの筋力低下や柔軟性の低下も考えられるので、ランニング前にスクワットなどのエクササイズをすると、ランニング中に大臀筋やハムストリングスの力を発揮しやすくなります。
ランニングによって痛くなるのは筋肉だけではありません。
筋肉の付着部である骨や身体を動かす関節に痛みが現れることもあります。
ここからは、筋肉系以外に痛めやすい部位と痛みの原因について解説します。
ランニング後に「腰が痛くなった」と訴える方は多いです。
ハムストリングスや臀筋群(お尻の筋肉)などの骨盤に付着している筋肉の柔軟性が低下すると、骨盤が筋肉に引っ張られて後ろに傾いてしまいます。
骨盤が後傾すると、ハムストリングスや大臀筋は力を発揮しづらくなります。
股関節の伸展動作(=伸ばし広げる動作のこと)が確保できないとわかったときに、人間の身体は股関節の代わりに腰椎で伸展動作を補おうとします。
しかし、腰椎(=背骨の腰の部分)は可動性に優れている部位ではありません。無理に腰を反ってしまうことで伸展型腰痛を発症させるリスクが高くなります。
「腰に手を当てる」動作をした際に、手を置いた位置は大腿直筋が付着している部分です。
太もも前側の最も上にある筋肉で、膝関節の伸展(伸ばす広げる動作)や、歩行動作などの働きをサポートする。
ランニング後に股関節の付け根が痛くなるのは、大腿直筋をはじめとする股関節屈曲筋(=股関節を屈曲させる筋肉)の柔軟性が低下していることが考えられます。
股関節屈曲筋の柔軟性が低下すると付着部が痛くなるだけではなく、骨盤が前傾しやすくなり過度に腰を反る姿勢になります。
O脚の人は膝の外側に張力がかかるので膝の外側に痛みが発生しやすく、X脚の人は膝の内側に張力がかるので膝の内側が痛くなります。
アライメント | 症状 |
X脚 | 内側側副靭帯損傷・鵞足炎 |
O脚 | 外側側副靭帯損傷・腸脛靭帯炎 |
また、膝蓋骨(膝のお皿)から2〜3cm下の部分が痛くなる場合は、前の章でご紹介した股関節屈曲筋である大腿直筋の柔軟性が低下している可能性があります。
これは骨の成長と筋肉の柔軟性が追いつかない成長期に見られる兆候ですが、柔軟性の低下により大人でも痛みが発生する可能性もあるのです。
体重過多や衝撃緩衝性に乏しいシューズを履いていると、足首に対してダイレクトに衝撃が加わるので、足首を痛めやすくなります。
また、足関節を底屈・背屈(足首を曲げ伸ばし)させる筋肉の柔軟性が低下していることによって足首に痛みを生じるケースも考えられます。
ふくらはぎや脛の前側の筋肉が働くことで足首は底背屈運動(上下の動き)がおこなえますが、足関節の筋肉の柔軟性が低下すると動きが制限されてしまいます。
足関節の痛みはもちろんのこと、代償動作として膝や足指に痛みが発生しやすくなるので注意が必要です。
また、踵(かかと)が痛い場合はふくらはぎの筋肉が硬くてアキレス腱が引っ張られているので、十分なストレッチが必要です。
足底筋膜とは、足のアーチを保持している部分です。ランニングのように、何度も繰り返し足部に加わる衝撃を吸収する役割があります。
しかし、ランニングやジャンプ動作によって体重刺激が過度に加わると、足底筋膜は腱の変性や微小断裂を起こしやすくなります。
このような状態が続くと、足の裏に痛みが発生するのです。これが足底筋膜炎と呼ばれる症状です。(※1)
足底筋膜炎の原因は走り過ぎだけではなく、コンクリートなどの硬い路面を走り続けている場合や、衝撃緩衝性に乏しいシューズを履いていることも考えられます。
自分に足底筋膜炎の疑いがあると感じたら、痛みを我慢しながらランニングを継続することはやめましょう。
すぐに病院へ行き、専門医の指示に従いましょう。
ランニング後の筋肉痛を改善するためには、それぞれの筋肉の柔軟性を上げることが大切です。
筋肉量をあげることも大切ですが、柔軟性がなければ関節可動域が広がらないので筋力を十分に発揮もできないのです。
ランニングにおいてよく使われる大腿四頭筋や腸腰筋、大臀筋、ハムストリングス、ふくらはぎの筋肉のストレッチは入念におこないましょう。
特にお風呂上がりは、血行が良く筋肉の柔軟性が上がりやすいのでストレッチにおすすめのタイミングです。
また、「今すぐに筋肉痛を和らげたい!」と思っている方はアイシングを実施しましょう。
アイシングは局所の炎症や神経の伝達速度を低下させることで痛みの緩和に効果があります。
やり方は、ビニール袋に氷を入れて約15〜20分間患部に当てましょう。感覚が無くなってしまうほど冷やすと凍傷になる恐れがあるので様子を見ながら実践しましょう。
トレーニング効果を最大限に発揮するためには、筋肉痛が起こっているときにトレーニングを継続するべきではありません。
筋肉痛が起こっているということは、筋繊維が修復段階であると考えられます。
この段階では筋力や関節可動域が低下しているので、筋力アップを図ろうとすると怪我のリスクも高くなるので注意しましょう。
筋肉痛を感じている場合は、インナーマッスルを鍛える体幹トレーニングや、上半身の筋力トレーニングがおすすめです。
筋肉痛とは、筋力トレーニングや運動によって破壊された筋繊維が修復をする過程に起こる炎症です。
このときに細胞から痛みのある物質が放出されると言われています。
筋肉痛が生じやすいのは、筋肉が引き伸ばされながら力を発揮する(伸張性収縮)ときです。
ランニングにおいては、地面に着地するときに伸張性収縮が起こりやすくなっています。
ランニング後に大腿四頭筋が筋肉痛になりやすいのは、伸張性収縮が関係しています。
また、筋肉痛が遅れてやってくるのは、筋肉修復中に起こる炎症が広がるまでに時間がかかるからです。
遅発性筋肉痛と呼ばれており、運動後から約3日後以降に筋肉痛の症状が現れます。(※2)
筋力アップをすることでランニングのタイムも上がると思っている方も多いようですが、実は筋力とランニングのタイムは関係がありません。
筋肉には速筋線維と遅筋線維にわかれており、500m程度の短距離であれば速筋線維が優位に働きます。しかし、10kmや20kmなどの長距離になると遅筋線維が優位になるので、ウエイトトレーニングで鍛えられるようなアウターマッスルは関係ありません。
つまり、ランニングのタイムを上げたい場合はアウターマッスルよりもインナーマッスルを中心に鍛えるべきなのです。
また、何度も筋肉痛に襲われる場合はアウターマッスルばかり使っている状態だと考えらえるので、インナーマッスルが優位に働くようにジョギングを取り入れてみましょう。
ランニングでの筋肉痛は筋力不足だけではなく、フォームが悪いことから働くはずではない筋肉に対して過剰な負荷がかかってしまっている可能性があります。
また、筋肉の柔軟性が低下していると関節可動域が低くなり、別の筋肉や関節で動きを補う代償動作も発生するので慢性的な怪我につながります。
まずは、ストレッチで筋肉の柔軟性と関節可動域を広げて、運動に適した身体作りを始めましょう。
<参考文献>
※1 ザムスト(ZAMST)足底腱膜炎/Plantar fascitis
https://www.zamst.jp/tetsujin/foot/plantar-fascitis/
※2 リハビリ(回復期リハビリテーション)の鶴巻温泉病院 第6回 憧れの筋肉痛 「遅発性筋肉痛」
http://www.sankikai.or.jp/tsurumaki/disease/karada/karada6.html