ダイエットを実践してからしばらくの期間は「順調に痩せているな」など、減量の手応えを感じる方が多いです。
しかし、ある時期を境にして初期のころのような減量が見られないという方が増えてきます。
近年このような悩みを抱えた方に注目されているのがチートデイです。
チートデイとはどのようなものなのか?また、チートデイを実践すれば本当に減量がスムーズに行われるのか?
<この記事を解説してくれた専門家>
佐藤樹里(管理栄養士)
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管理栄養士。アスドリファクトリー代表。フィットネスジムでの運動・栄養指導経験後、約1年海外移住をし、現地のレストランでシェフと共に働く。現在はスポーツイベント開催、アスリートへの栄養講座、栄養個別サポートを通算1000人以上に行う。 |
<体験談を聞かせてくれた専門家>
フィジーカー 栗原強太
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湘南オープンメンズフィジーク172cm以下の部で5位入賞したフィジーカー。体脂肪率は1桁。複数のジムを掛け持ちして日々トレーニングに励む。 |
目次
まずはチートデイの基本的な情報から。ここではチートデイの主な目的や実践する時期を解説します。
チートデイの主な目的は摂取カロリーに大幅な変化(増量)を加え、ダイエットをスムーズに進行させることです。
簡単に説明すると、ダイエット期間中の1日のみ「好きなものを好きなだけ食べる」というのがチートデイです。
このチートデイはもともとボディビルダーの方が糖質制限ダイエットを行うときに用いる方法といわれています。
チートデイはダイエットを行う上では決してメインとなる減量方法ではありませんが、正しい知識を持ち、正しい方法で実践することで効率的な減量をサポートします。
近年は糖質制限ダイエットと呼ばれる炭水化物の摂取量を減らしたダイエットが人気ですが、過度な糖質制限は基礎代謝の低下を招くともいわれており、結果的に痩せにくい体質になってしまう可能性があります。
チートデイにはこの痩せにくくなった体質を元に戻す効果も期待されているため、主に減量で苦しんでいる方に適したダイエット補助法といえるでしょう。
チートデイを行うのは一般的に「一生懸命減量を頑張っているのに、なかなか体重が落ちないとき」などです。
今まで好きなものを好きなだけ食べ、大幅に体重が増加した人の場合は、ダイエット実践初期はおもしろいように体重が落ちるケースが多いです。
しかし、ある時期を境に減量の効果が薄れていると感じるようになります。これをダイエットの世界では「停滞期」といいますが、この時期はトレーニング量を増やしても体重に大きな変化が見られにくいです。
チートデイはこの体重が落ちにくい時期に取り入れると、落ちた代謝を回復させる効果が得られやすいため、停滞期に実践するのが効率的といわれています。
前述のように停滞期とはダイエット期間中の体重が落ちにくい時期のことを指します。ここではチートデイを取り入れる目安となる停滞期の基本情報を解説します。
停滞期は体に備わっている防御反応、防衛反応による影響といわれています。
一般的に私たち人間は1ヶ月の間に体重の5%以上が減ると、体が「餓死状態なのかもしれない」と判断し、それ以上体重を減らさぬよう消費エネルギーを抑えるといわれています。
これは人の体にはホメオスタシス(恒常性)と呼ばれる、環境が変化しても体を一定の状態に保つ機能が備わっているために起きることだと考えられています。
ちなみに停滞期の期間は個人差がありますが、概ね2週間~1ヶ月ほどであり、落ちた体重に体が慣れてくれば、以前のように痩せやすい体質に戻るといわれています。
チートデイを取り入れるなら停滞期を見極めるポイントを把握しておくことが大切です。
一般的にはダイエット期間中に代謝の低下が見られたときが停滞期のサインといわれています。
では代謝低下を見極めるポイントはどこにあるのか?
これは体温を測ることである程度判断することができます。代謝が低下している時期というのは体温が通常よりも下がっていることが多いです。
そのため、毎朝の計測でいつもよりも約0.2℃ほど体温の低下が見られた場合は停滞期に入っていると考えてもよいでしょう。
ちなみに代謝の低下によって体温が下がる理由は、体内でエネルギーをつくる際に生じる熱の産生が効率的に行われにくくなるためです。
チートデイはこの体温が下がったタイミングで取り入れるとよいでしょう。
ここからはチートデイの具体的なやり方、方法について解説します。
チートデイを実施する時期を見定めるために、まずは体温の測定を忘れないようにしましょう。
前述のようにチートデイは代謝が落ちた時期に実施するのが理想的ですから、代謝低下のサインとなる体温低下の有無を確認する必要があります。
この体温測定で普段よりも0.2℃の体温低下が見られたら、チートデイ実施の準備に移るのがよいでしょう。
チートデイ成功のポイントは複数ありますが、その中でも重要性が高いといわれているのは糖質をしっかり摂取することです。
前述のようにチートデイの主な目的は糖質をしっかりと摂取し、落ちた代謝を元に戻すことです。そのため、単に好きなものを好きなだけ食べるのではなく、代謝アップに必要な糖質を十分に摂取することを意識しておかなければなりません。
チートデイにおいての糖質摂取量については個人差がありますが、概ね体重1kgあたり12g(体重60㎏の場合は720g)の摂取が目安とされています。
ちなみに体重60㎏の方の糖質摂取量目安720gというのは、ご飯約14杯分に相当する量です。
チートデイに糖質を十分に摂取すると、筋肉や肝臓にグリコーゲンと呼ばれる物質が蓄積されます。
グリコーゲンはエネルギー代謝に必要とされている物質であり、血糖値の維持や筋肉収縮時のエネルギー源にもなります。
肝臓のグリコーゲンが枯渇すると、体の代謝を司る甲状腺にエネルギー不足のサインが出るため、代謝低下を招きます。これがダイエットの停滞期を引き起こす原因のひとつです。
正しいチートデイは代謝低下の原因である肝臓のグリコーゲン不足を解消させる効果が期待できるため、糖質を十分に摂取することを優先しましょう。
チートデイを実施するタイミングは体重が落ちにくい時期である停滞期です。
先ほども解説したように停滞期は体に備わっている恒常性維持機能(ホメオスタシス効果)によるものだと考えられています。
ホメオスタシス効果が働いている間は、体が餓死状態だと判断して消費カロリーを抑えるようになります(前述の体温低下もその影響)。
チートデイはこの餓死状態だと判断している体を騙す効果が期待できますので、正しいやり方を実践すればホメオスタシス効果がストップする可能性が高まるという理論です。
チートデイを行う頻度については、現在の体脂肪率によって変わります。
一例までに30代、体脂肪率25%の男性だと3週間~4週間に1回のペースで行うことが推奨されています。
ちなみにチートデイは体脂肪率が30%を超える場合は実施を控えるのが一般的です。
これは体脂肪率30%というのは、体がまだ痩せやすい状態にあるというのが主な理由です。
以下に体脂肪率ごとのチートデイ実施頻度の目安を記載しておきましたので参考にしてください。
体脂肪率 | チートデイ実施頻度 |
30%超え | 基本的には必要なし |
25%以上~30%未満 | 3週間~4週間に1回 |
20%以上~25%未満 | 2週間~3週間に1回 |
15%以上~20%未満 | 1週間~2週間に1回 |
10%以上~15%未満 | 1週間に1回 |
10%未満 | 1週間に1回~2回 |
※チートデイ実施頻度はあくまでも目安
上記の実施頻度はあくまでも目安ですので、チートデイを行うときは体脂肪率以外にも体温の低下など、その他の要素も考慮しながら自身に合った頻度を見つけるようにしてください。
チートデイを行うときは、糖質はもちろんのこと、食事制限などで不足した栄養素をバランスよく補うことが大切です。
そこでここではチートデイを実施するときにおすすめしたい食べ物を栄養素ごとに紹介します。
前述のようにチートデイは肝臓などへのグリコーゲン備蓄を目的に行いますから、十分な糖質を摂取する必要があります。
ちなみにチートデイは普段「食べすぎは害」といわれているような食べ物の摂取も推奨されています。
そのため、炭水化物が豊富に含まれている食事や糖質たっぷりのスイーツの摂取も問題はありません。
以下に糖質を十分に補給できる食べ物をまとめましたのでご覧ください。
食品・食材名 | 糖質含有量 |
そうめん(乾麺)100g | 約70g |
パスタ(乾麺)80g | 約57g |
白米 お茶碗1杯 | 約55g |
どら焼き1個 | 約55g |
リンゴ1個 | 約35g |
あずき缶(加糖)100g | 約46g |
はちみつ 大さじ1杯 | 約17g |
カボチャ120g(1/8個程度) | 約20g |
トウモロコシ1本 | 約20g |
ソフトクリーム100g(1本分) | 約20g |
糖質は非常に多くの食品、食材に含まれているため、おそらく食事メニューで悩むことはほとんどないでしょう。
はちみつは大さじ1杯で約17gの糖質が摂取できますので、普段の食事量が少ない方にもおすすめです。
タンパク質は消化、吸収に必要なエネルギーを産生する効果が非常に高いのが魅力的です。
また、タンパク質の不足は筋肉量の減少を招く可能性が高いため、ダイエット中のタンパク質摂取量が少ない方はチートデイでしっかりと補給しておくようにしましょう。
タンパク質含有量が多い食品や食材は以下のとおりです。
食品・食材名 | タンパク質含有量 |
牛もも肉100g | 約21g |
豚もも肉100g | 約22g |
鶏むね肉(皮なし)100g | 約24g |
鮭100g | 約22g |
カツオ100g | 約25g |
この他、手軽に摂取しやすい卵(タンパク質含有量約12g)や牛乳(タンパク質含有量約3.5g)も良質なタンパク質を摂りたいときにはおすすめです。
ダイエットの大敵とされている脂質ですが、三大栄養素のひとつに分類されているように過度な脂質の不足は健康状態の悪化を招く可能性があります。
適量の脂質摂取はホルモンや細胞膜の構成に役立ちますし、植物油や魚油などに含まれる不飽和脂肪酸には血液中の中性脂肪やコレステロールを低下させる働きもあります。
このことからダイエット期間中でも良質な脂質を適量摂取することは非常に大切です。ただし、脂質はカロリーも高いため、過剰摂取には十分な注意が必要です。
また酸化していない良質な油を優先的に摂ることを意識してください。スナック菓子などに含まれている油は避けるのがベターです。
脂質を多く含む主な食べ物には、以下のようなものがあります。
食品・食材名 | 脂質含有量 |
牛肉(サーロイン)100g | 約47g |
豚バラ肉100g | 約35g |
卵(卵黄)100g | 約33g |
しめさば100g | 約27g |
プロセスチーズ100g | 約26g |
ビタミンやミネラルは食事制限を行うと不足気味になりがちといわれています。
ビタミン、ミネラルには複数の種類がありますが、美しく痩せるために特に摂取しておきたい栄養素は以下のとおりです。
栄養素 | 主な役割・効果 |
ビタミンB1 | 糖質の代謝を助ける |
ビタミンB2 | 脂質の代謝を助ける |
ビタミンB6 | タンパク質の代謝を助ける |
ビタミンB12 | ヘモグロビンの生成を助ける |
ビタミンC | 脂肪燃焼にかかわるカルニチンの合成を助ける |
鉄 | 酸素の運搬やエネルギーを作り出すのに必要 |
亜鉛 | 免疫力向上、抗酸化作用、髪や肌の健康維持など |
カルシウム | 脂肪細胞の成長抑制など |
ビタミンB群は食事から摂取した糖質、脂質、タンパク質の代謝を助けるため、余分な栄養素が脂肪として蓄積されにくいといったメリットがあります。
その他、鉄や亜鉛などのミネラル成分も脂肪燃焼に必要なエネルギー産生や健康的な体を維持しながらのダイエットを行う上では必要不可欠です。
ビタミンやミネラルが豊富に含まれている主な食品、食材は以下のとおりとなります。
食品・食材名 | 特に多く含まれている栄養素 |
豚ヒレ肉100g | ビタミンB1 (含有量:0.98mg) |
豚肉レバー100g | ビタミンB2 (含有量:3.60mg) |
マグロ(赤身)100g | ビタミンB6 (含有量:0.85mg) |
シジミ100g | ビタミンB12 (含有量:62.4㎍) |
ピーマン100g | ビタミンC (含有量:76mg) |
豚肉レバー100g | 鉄 (含有量:13mg) |
牛肉(肩)100g | 亜鉛 (含有量:4.6g) |
ししゃも100g | カルシウム (含有量:350mg) |
一般的にビタミンやミネラルが多く含まれているのは野菜、果物、海藻類、動物性食品などです。
チートデイは停滞期に1日だけ良質な栄養素を多めに摂取するサポート法ですから、決して難しいものではありません。
しかし、チートデイの基本やコツを理解していないと逆効果になる恐れがあることも確かです。
そこでここではチートデイを成功させるために意識しておきたいポイントをまとめましたので解説します。
前述のようにチートデイはダイエット中に起きやすい代謝低下を元に戻す目的で行います。
代謝が落ちるということはエネルギーを消費しにくいということですから、体は脂肪などを溜め込むようになります。
この体脂肪を溜め込む体質を改善するのが、チートデイの本来の役割です。
よって代謝低下の兆候が見られていないのにもかかわらず、チートデイを実施するのはおすすめできません。
代謝が正常な状態なのにチートデイを設けてしまうと、ただのカロリー過多の日になってしまい、体重の増加を招く危険性が高くなるだけです。
停滞期をしっかりと見極めることがチートデイ成功のポイントとなります。
チートデイを設けるのはあくまでも1日のみです。
チートデイは餓死状態と判断した体を騙し、落ちた代謝を元に戻すことができれば成功です。
チートデイで糖質や不足気味の栄養素を十分に摂取できれば、体は餓死状態から抜け出したと判断し、消費エネルギーを元に戻す動きを見せます。
特に1日で十分な量の糖質を摂取することができれば、肝臓などへのグリコーゲン備蓄も行われるため、翌日以降からのスムーズなダイエットへとつながりやすくなります。
逆に2日連続のチートデイなどは体重増加の原因となるカロリーオーバーを生み出すだけですので注意が必要です。
チートデイは体が慣れてきたら間隔を空けたり、伸ばしたりしながら行う方法もあります。
ダイエットの停滞期は多くの人が経験しますが、その中でもいきなり大幅な体重減少を成功させた方に見られやすいです。
これは体が急な体重減少に慣れていないために起きるものだともいわれています。
つまりダイエットによる減量に体が慣れてくれば、停滞期のように脂肪を溜め込む体質になりにくいということも考えられます。
停滞期の原因のひとつは短期間のうちに大幅な体重減少を行うことなどにあります。短期間の体重減少は体が「今は危険な状態だ」と判断しやすいため、余計なエネルギーを消費しないように代謝を低下させる可能性が高いです。
この弊害を防ぐには長い時間をかけて徐々に体重を減らすダイエット法に切り替えるなどの工夫を施すのもよいでしょう。
長期間ダイエットを行っていると体も少しずつ慣れてきますので、代謝低下の変化が起きにくくなる可能性もあります。
チートデイを行うときは中途半端な栄養摂取は控えるようにしましょう。
初めてチートデイを行う方などは普段よりも多い食事量に抵抗を抱くこともありますが、チートデイの目的はあくまでも落ちた代謝を元に戻すことです。
人が生きていくために必要な栄養素を十分に摂取できれば、脂肪燃焼に必要な代謝が元に戻りますので、翌日以降のダイエットの効率性がアップします。
逆に中途半端に運動をしたり、摂取カロリーを抑えた食事をしたりといった行為は、体が「まだ危険な状態だ」と判断する可能性もあります。
このような理由からチートデイを実施するときは体重の増加や摂取カロリー、運動などのことは忘れるようにしてください。
また、自分の好きな食べ物を多く食べることでストレス解消の効果も期待できます。人は慢性的なストレスが続くとコルチゾールというホルモンを分泌します。
このホルモンは血液中の糖を増やし、肥満ホルモンとも呼ばれることがあるインスリンの分泌を促します。
このインスリンの働きによって糖や脂肪が体内に蓄積されてしまうともいわれていますので、ダイエットでは食事制限によるストレスを緩和させることも大事です。
チートデイではこの糖や脂質を溜め込みやすいストレスを軽減させる効果も期待されています。
チートデイは必要な栄養素を多めに摂取する方法ですから、翌日の体重は増えている可能性が高いです。
ただし、これはチートデイにおいては想定内の範囲です。チートデイで意識しておきたいのは体重の増減よりも、代謝機能です。
落ちた代謝がチートデイによって元に戻れば、翌日以降の運動での消費カロリーが大きくなりますので効率的な脂肪燃焼につながります。
よってチートデイ翌日の体重増加は深刻に悩む必要はないということを理解しておきましょう。
では、実際にチートデイを実践している人はどのような食べ物を摂取しているのでしょうか。
フィジーカー 栗原強太
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湘南オープンメンズフィジーク172cm以下の部で5位入賞したフィジーカー。体脂肪率は1桁。複数のジムを掛け持ちして日々トレーニングに励む。 |
チートデイを実施するときに意識しておきたいのが気持ちの切り替えです。
チートデイは自分の好きなものを好きなだけ食べられるため、次の日にダイエットモードのスイッチがONに入りにくいです。
最悪の場合は、チートデイの快感を忘れられずに翌日以降もドカ食いをしてしまう可能性があります。
こうなると停滞期に入る前までに行ってきた努力がすべて水の泡となります。そのため、チートデイを実施するときはON、OFFの気持ちの切り替えが大切です。
気持ちを切り替える具体的な方法については、散歩、趣味、質の良い睡眠などがあります。これらは精神を安定させたいときなどに推奨されることも多いです。
また、1人で気持ちを切り替えるのが難しいという方は翌日にジムの予約を入れておくのもおすすめです。
ジムに行けばインストラクターの方や減量に励む方もいるため、サボろうという気持ちが起きにくくなります。
チートデイはダイエット期間中に1日だけ食事量の増加を試み、落ちた代謝を元に戻す目的で行われるのが一般的です。チートデイは体を騙すことで、脂肪燃焼に必要な体質をつくる効果などが期待されています。
そのため、ダイエット停滞期に上手くチートデイを取り入れることでスムーズな減量につながる可能性が高くなります。もちろんチートデイを実施するときは正しい知識ややり方を理解しておく必要があります。
減量につながる正しいチートデイを実践して、効率性が高い減量を実現しましょう。現在、ダイエットの停滞期に突入している方などはぜひ参考にしてください。