胸の代表的な筋肉である「大胸筋」は男性らしさの象徴であると言われます。
男性であれば厚い胸板を手に入れたいと思う方も多いのではないでしょうか。
この記事では大胸筋を鍛えるためのトレーニング方法を、ケガの防止に関する論文の内容を参照しながらご紹介いたします。
山本 耕一郎(パーソナルトレーナー)
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アメリカンフットボール全国制覇の経験と、3か月で25kgの減量を実践した経験を活かし、数多くのクライアントのダイエットを成功させる。早稲田大学出身。 |
目次
大胸筋は胸の厚みを作るため、体のシルエットを整える上で影響力の強い筋肉です。
また発揮できる筋力が強い筋肉で、3つの部位に分けることが出来ます。
1大胸筋「上部/鎖骨部」:鎖骨の内側半分
2大胸筋「中部/胸肋部」:胸骨前面、第2~6肋軟骨(胸の谷間のあたり)
3大胸筋「下部/腹部」:腹直筋鞘の前葉(乳首の下あたり)
上腕骨の大結節稜(腕の骨の上側で前のほう)
※上部、中部、下部ともすべてこちらが付着部です
1全ての部位で肩関節の水平内転(腕を真っすぐ挙げたまま腕を内側に持ってくる動作)
2下部をメインとして肩関節の内転(腕を下げたまま内側に持ってくる動作)
3全ての部位で肩関節内旋(肩を内側に捻る動作)
4上部をメインとして肩関節の屈曲(腕を前に挙げる動作)
5全ての部位で呼吸の補助
※筋肉のしくみ・はたらきパーフェクト事典(著・荒川)よりp38を改変
大胸筋は総じて腕を前に押し出す動作で力を発揮します。
そのことを覚えておくと「このトレーニングは胸に効くかも」という仮説をたてることができ、トレーニングの効果が出なく困った時などに立ち返ることができます。
また、筋トレをやって間もない方やこれからという方は、大胸筋には上部・中部・下部があることがわかったのではないでしょうか?
それがわかると「厚い胸板をつくりたい」と思った時に、それぞれを鍛える必要があることがわかるかと思います。
ここからは大胸筋の3つの部位を鍛えるトレーニングを解説していきます。
ベンチプレスとはBIG3(=3大筋トレ)のうちのひとつで、ベンチ台に横になり上を向き、肩幅よりも少し広くバーベルを握り、胸まで下げた後に一気に押す動きです。
<BIG3の1つデッドリフトについてはこちらの記事がおすすめ>
親指をしっかり握りこみ(サムアラウンドグリップともいいます)バーを握ります。
肩甲骨の位置が非常に重要になります。意識すべきは2点です。
・肩甲骨を引き下げる動き(下制):肩甲骨が上に上がらないように、目一杯に肩を下げたままベンチ台によこたわります。
・肩甲骨を体の中心に近づける動き(内転):肩甲骨を内側に寄せます。
上記2つを行うのは腕の関節(上腕骨)に負担をかけないようにするためです。
ベンチプレスの動作を行うとき、つらくなってバーベルが上がらなくなった時も含めて、この2点を意識しましょう。
つらくなって肩をすくんだりしても、ベンチプレス挙上回数は増えません。
それどころか負荷がかかり肩を痛めるリスクが増えます。気を付けましょう!
手幅は肩幅の1.5~1.6倍にしましょう(=肩の肩峰から逆の肩峰までの距離×1.6以内)。
手幅が広すぎると肩に余計な負荷が乗ってしまうため痛めやすくなってしまいます。(水平外転が起きてしまうとも言います。)
また、腕の角度は45度~60度以内が一番筋力を発揮しやすいとされています。
足の意識は地面を押せる位置に持っていきましょう。
私はお尻の真下において前腿が突っ張った状態で一番力を発揮しやすいです。
ラックから挙げる位置は肩関節の真上に持っていきます。
この時、頭側や足側にバーが傾かないように気をつけましょう。
バーをおろす位置は腕が地面と平行になる位置に持っていきましょう。
およそみぞおちから乳首くらいにおろすと、腕が真っすぐになってくるかと思います。
バーを挙げた位置からコントロールしながら下げましょう。
2~3秒で下げて1秒で挙げるのを推奨します。
理由は下げる局面を意識し効果的に筋肥大を促すためです。
この下げる局面の時、筋肉は伸ばされながら筋力を発揮します。これを「エキセントリック収縮」といい筋肉を大きくする効果が高くなります。
基本的に「胸の筋肉をつける」ということを主目的とするなら8~12回3セットを目安に、「もうあがらない」となったもう一回くらいを目安にやってみてください。
10回3セット余裕で挙げられたら徐々に重さを重くしていきましょう。
<効率的なトレーニングのスケジュールを組む方法はこちらがおすすめ>
胸にぶつけてその反動でベンチプレスを行ってしまうことがあります。
胸の筋肉を発達させる目的でやっているので、効果が半減しないように特段の目的がない限りは胸でバウンドさせないようにしましょう。
お尻を浮かせてしまうと正しい位置に効かすことが出来なくなってしまうので気を付けましょう。
ただ単に重たいおもりを挙げるということであれば、バウンドやお尻を浮かせたくなったりしてしまいたくなりますが、筋トレの効果は減少してしまいます。
脚をベンチ台に挙げる、体育座りのようにして足をおりたたみながらベンチプレスをする。
これを「ストリクトフォーム」といいます。
ストリクトフォームとは「負荷を効かせたい部位に効かせるために、反動や補助を使わないフォーム」のことです。ベンチプレスの場合は、足を使わないことによって足からの力をもらわずに挙げるフォームになります。
ベンチプレスのストリクトフォームの効果は2つです。
筋力トレーニングは、「重たい負荷で筋肥大を促す」「軽い負荷で代謝物を発生させて筋肥大を促す」、2つの負荷があるため、必ずしも足をつけたベーシックフォームが正しいとも、ストリクトフォームが正しいとも言えずそれぞれに目的があります。
その目的に応じてそのフォームを変えていけると筋トレライフが充実し筋肉も喜んでくれることでしょう。
こちらは上腕三頭筋を鍛えることを主の目的としたトレーニングになるため、大胸筋を使う率は減ります。「ナローベンチプレス」とはベンチプレスよりも手幅を狭くし行うベンチプレスです。
大胸筋の発達を目的とするならばこのナローベンチプレスを行わなくて良いでしょう。
ただ同じベンチプレス台で行う種目として目的の気切り分けが出来るように解説をしました。
<上腕三頭筋のすぐ近く!上腕二頭筋を鍛える方法はこちら>
インクラインベンチプレスとは、上体の角度を調節して使えるベンチのことで、座椅子のようなイメージで上体を起すことが出来ます。
こちらを使って角度を上側に付けて行う、大胸筋上部(鎖骨部)をターゲットとして行うベンチプレスとなります。
<再掲>
・肩甲骨を引き下げる動き(下制):肩甲骨が上に上がらないように、目一杯に肩を下げたままベンチ台によこたわります。
・肩甲骨を体の中心に近づける動き(内転):肩甲骨を内側に寄せます。
・下げる場所は鎖骨の下から乳首の上あたりを意識しましょう。
(大胸筋の上部の作用である上腕屈曲の動作を強調しつつも、肩の前の筋肉である三角筋の前部を使いすぎないフォームとなります。)
これらを意識して大胸筋上部を効果的に鍛えることが出来ます。
「ジムに行く時間がないけども大胸筋上部を鍛えたい」という場合にはプッシュアップ(腕立て伏せ)を応用しましょう。
このディクラインプッシュアップは、自重(自分の体重を不可として行うトレーニング)だからと言って侮ることなかれ!やってみると自重でも負荷をしっかりと乗せることができます。
回数は「あぁもうできない!」というところからプラス1回までやることを目指してみてください!
ここまで、ベンチプレスを使って大胸筋上部を鍛える方法をお伝えしました。ここからは、ベンチプレスを使って大胸筋下部、胸肋部を鍛えるメニューを解説していきます。
<大胸筋に加えて広背筋のトレーニングもおすすめです>
ディクラインベンチプレスは頭側に角度のついたベンチプレスのひとつで、体に対してバーを足側に押していくような感覚になります。
これらを意識して大胸筋下部、胸肋部を鍛えていきましょう!
角度をつけられる環境がない場合は、ベンチプレスの上に足を置きお尻を高く上げたヒップリフトの姿勢をとり自分で角度をつけて行いましょう。
<サプリメントでトレーニングの効率をUP!おすすめの記事はこちら>
Elbow joint fatigue and bench-press training.
という論文を基にベンチプレス全般に言える注意点を考えていきましょう。
この論文では、ケガなどをしていない20歳前後の右利きの男性18人が、ベンチプレスを反復不可能になるまで行った結果、上腕、肘関節、背骨、肩のうちどこに1番負荷が(≒関節トルク)がかかるかを調べた実験がまとめられています。
National Cheng-Kung Universityの当研究グループは実験結果として、「疲労条件下においては肘への負荷が1番増える」ということを確認しています。
被験者がどのくらいトレーニング歴でベンチプレスを行っていたかは不明ですが、この研究から言えるのは、
「疲労すると肘の負担が増えるので、肘が痛くならないように過度な追い込みには気を付ける」
「ベンチプレスをするたびに肘の痛みを感じる場合は、原因のひとつとして追い込みすぎが考えられる」
ということだと私は解釈します。
「どのくらいベンチプレスに慣れた被験者だったのか」ということが論文からは判断ができなかったため、「大胸筋が疲労しても、フォームをゆがめずにベンチプレスが出来る被験者だったのか」「すぐフォームが崩れる被験者だったのか」などの疑問が残るため「参考」として扱ってみてください。
<怪我をしないために上手に筋肉痛と付き合う方法はこちら>
ここまで大胸筋を鍛えるためのベンチプレスの方法について詳しく解説をしましたが、ベンチプレスはレベルが高いので敬遠してしまうという方もいらっしゃると思います。
そこでここからはベンチプレス以外を使った大胸筋の鍛え方をご紹介します。フリーウエイトのトレーニングメニュー、マシーンを使ったトレーニングメニューそれぞれを解説いたします。
バーベルベンチプレスと違いそれぞれの腕でコントロールをしなければならないためより関節回りのインナーを使わなければなりません。
バーベルベンチプレスとの違いを大きくまとめると、
ということが挙げられるでしょう。
<ダンベルにも種類があるって知っていますか?詳しくはこちら>
ダンベルフライは胸に強烈なストレッチをかけることのできるメニューです。
大胸筋がストレッチされたポジションで一番負荷がかかるため筋肥大の効果を見込むことが出来ます。また、腕が長い人は相対的に重量を扱いにくい傾向があります。
てこの原理を考えるとわかりますが、「腕の長い人はダンベルフライで重量を扱いにくい」ということをご理解いただければよいと思います。
これを同じ要領でディクライン、インクラインというように行っていきます。
「ディクライン=大胸筋下部」「インクライン=大胸筋上部」がターゲットになっていきます。
プルオーバーは大胸筋のトレーニングの停滞期に非常に効果的なトレーニングになります。
なぜなら大胸筋を鍛える種目の中で唯一、縦方向(=長軸方向)に刺激を与えられるからです。
プルオーバーで大胸筋の成長の停滞を打破しよりたくましい大胸筋を手に入れましょう!
<大会に出るような人はどのようなトレーニングをしているの!?フィジークに興味のある方はこちら>
チェストプレスはマシーンを使って行うトレーニングです。
設備があるジムに行かれた際は行ってみましょう。
<注意点>
バーを押すときに肩甲骨を開かないようにしましょう。
腕ばかり疲れてしまうというときは胸がつかえてない可能性が高いです。そのような時は下記の点に注意をして修正できる点がないか考えてみましょう。
軌道が確保されていて初心者でも取り組みやすいのでやってみましょう。
身体を両手だけで支え、バランスを取りながら上下に反復する運動。下方向に押す力を養う代表的なトレーニング種目です。
大胸筋のほかには主に、三角筋、上腕三頭筋なども使われます。
マシーンが置いてある際には是非チャレンジをしていただきたい種目です。必要に応じて補助のアタッチメントをつけたり、腰に重りをぶら下げて負荷を調節しましょう。肩回りの筋肉の柔軟性向上にも効果的です。
<応用-バリエーション>
器具がないときは日常にある道具を使って応用することも可能です。
同じ種類の椅子や机を使い肘を伸ばして上体を伸ばし動作を行います。
固定されていなかったり強度の低いものを使用される際はケガに気を付けながら細心の注意を払って取り組みましょう。
バタフライもジムによっては設備の関係上ないかもしれません。
こちらはダンベルフライと動きが似ていますがマシーンで負荷がかかり続けているため負荷が抜けにくいという特徴があります。
そのため大胸筋の動きである、肩関節水平内転(=腕を伸ばし肩関節を内側に寄せる動作)の動作を正確に、大胸筋に負荷をのせたまま行うことが出来ます。
大胸筋の柔軟性が必要で、より大胸筋へのストレッチが大きくなります各々の目的に応じて負荷を増やしていきましょう。
チェストスクイーズは座ったまま場所を問わず出来るメニューです。プレートの他のものでも応用が利きます。
大胸筋が縮んですごく効いているような感覚があると思います。場所を問わないため取り組みやすいと思いますので是非取り組んでみましょう。
<最近やる気がでない!ジム通いに飽きてきた際の対処法はこちら>
※大胸筋をベンチプレスで鍛える上で、山本耕一郎が考える3つのアドバイス※
ベンチプレスを行うと、最初は重量がさくさくとあがってくことに快感を感じることでしょう。
ただ「効率よく重たい物体を挙げる力」と「大胸筋の大きさ」は必ずしもイコールではないので気をつけましょう。
どういうことかというと、効率の良い動きとは大胸筋のみならず他の筋肉も動員してしまうので、大胸筋だけに頼らないということもありえるのです。
また大胸筋が3つの部分から成ることも踏まえてベンチプレスの際は下記の3点に気をつけましょう
それではベンチプレスの動作と基本形を理解したところで早速ジムに行ってみましょう!
行ってらっしゃい!
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